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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
5章 渓谷に落ちる雷霆(ライトニング・マギア)
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エピローグ5 隠された過去

 エフルテに帰り、ギルドに立ち寄って依頼の清算をしに行く。

「シルフの成体も倒されたんですか……凄いですね。」

 奥の品物鑑定の部屋にて、受付の人が俺たちが受けた依頼と、持ってきた品物を見て目を丸くしている。シルフの幼体9匹と成体4匹の素材、それもほぼ全身だ。俺のストレージの効果を聞いて(オリジナル無属性魔法だと説明した)感心したように何度も頷いていた。

 結果的に幼体の爪2本と成体の爪1本を依頼品として渡して、白金貨20枚(幼体ので5枚、成体ので15枚)を貰った。正直、金銭感覚がマヒしてきたのか、大した喜びを感じなかった。

 素材の方については、成体の鱗を一人の鎧が作れる分だけ売り払わず、他は売った。結果、白金貨80枚を貰った。さすがに、依頼されたものじゃない分、大分安くなってしまったが、それでも超大金だ。何ってここのエフルテ支部ギルドマスターが面会を求めてくるぐらいには。

 面会の内容は本人確認と身分証明、それと今までの経歴と質問された。結果的に腑に落ちないような顔をしていたが、矛盾は感じなかったのか、素直に渡してくれた。

 その後、質問されたことが、渓谷で何があったか、だ。渓谷でウェントスが現れ、その日に俺たちが大量のシルフの素材を持って帰ってきたことに共通点を見つけたようだ。

 俺たちはあらかじめ決めていた嘘で乗り切った。

「渓谷には行ってきましたし、シルフをこれだけ狩ったのも本当ですが、頂上の事についてはそんなことになっていたなんて気が付きませんでした。途中で風がとても強くなり、今までにない嫌な予感がしたんで渓谷から離れてしばらく様子を見ていました。」

「むぅ……なるほどな。実は、頂上で規格外な大きさのシルフが観測されたのだ。」

「え?頂上で規格外な大きさのシルフが観測された!?そうでしたか……良かった、あの予感は当たっていたんですね。頂上の門は一目見てみたかったんですが、行かなくてよかったですよ。」

「そうか……分かった。今一つ腑に落ちんが矛盾点は見つからん。これで面会は終わりだ。時間を取ってすまなかったな。」

「いえいえ。」

 と白々しいやり取りがあった。一部本当の事を交えるのがポイントだ。また、相手が上の立場の人間なので、敬語で終始下手に出るのがミソだ。

「毎度のことながら、よくそんな嘘っぱちがすらすらと思いつくわね。」

 とミリアに言われたりもした。

             __________________

 宿でゆっくりし、晩飯の時間になったので俺たちはギルドに食いに行くことにした。『魔族殺し』の特典をフル活用させてもらう。

 ギルド内の食堂には、ニコラスさんのパーティーを含め、大体15人ほどがぼろぼろの装備で料理を食べていた。後に聞いた話では、この15人は全員、あの調査隊に居たそうだ。

「あれ、ニコラスさん、どうしたんですか?そんなぼろぼろの装備で。」

 俺は何も知らないふりをしてニコラスさんたちに声をかけて歩み寄る。

「おう、アカツキたちか。……無事どころかピンピンしてやがる。心配したのがムダみたいだ。」

 ニコラスさんは憎まれ口を叩くが、顔がほころんでいる。

「あんたらもここ座りな。」

「グリザベルたちとご一緒しませんか?」

 エレオス姉妹もぼろぼろだが、声をかけてくれる。……昨日は帽子に隠れて気づかなかったが、2人は狼人族ウルフのようだ。髪の毛と同じ銀色の狼耳が頭についている。色と相まって似合っているな。

「おや、お前らか!無事だったようだな!」

 トイレにでも行ってたのだろう、いなかったグリスさん(昨日のは脅しを含めて呼び捨てしていただけだ)が歩いてきながら声をかけてくる。

「ちょっと嫌な予感を感じましてね、風が強くなった段階で渓谷から離れたんですよ。」

 俺はにこやかにそういいながら、勧められた席に座る。レイラたちも各々座る。

 その後、俺たちは質問攻めにあったがさっきと同じく嘘八百で誤魔化した。

 逆に、こちらからどうしてぼろぼろなのかを質問した。

 まとめると、風龍が観測されると、ギルドから絶対命令という、絶対に従わなければいけない命令がでたらしい。これはS級非常事態(C~Sまでのランク分けがあり、非常事態の度合いを表す。Cは警戒、Bは戦闘準備、Aは魔物の小規模な襲撃、Sは超常事態や魔族の襲撃、大規模な魔物の群れの襲撃となる。)でないと発令されない、Sランク冒険者にすら強制力を持ったものだ。基本的に、ランクが上がるほど強制力は下がるらしいが、こういった非常事態には命令が下される。その分、従ったら報酬はかなりいいそうだ。

 それで、この街の周辺にいたSランク冒険者の中でも選りすぐりの20人が調査団として結成され、渓谷に来たらしい。これだけ装備がぼろぼろなのは、シルフの成体2匹と同時に出くわしたのが2回あったかららしい。それを聞くと、この場にいない5人が気になるが、全員生存していて、5人は別のところで食事をとっているそうだ。良かった、俺らのせいで怪我人が出たかと思った。

「そんなわけだ。この通り装備がぼろぼろだから、明日のことだけど明後日に伸ばしてくれないか?」

 ニコラスさんが俺の目を真っ直ぐに見てそんなお願いをしてくる。

「構いませんよ。俺たちも明日はちょいと用事が出来たんで。」

「済まないな。」

 俺が了承すると、ニコラスさんは頭を下げる。

 そんなやり取りを終え、俺たちは歓談を楽しみながら食事をした。

             __________________

 食事を終え、ニコラスさんたちと別れ、俺たちは宿へと戻った。シルフの成体を狩った、という情報が出回っているのだろう。帰り道に、俺たちを尾行してくる奴が何人かいたが、そいつらはあまりにも下手くそだったので構う気もしなかった。よって暗黒属性初級魔法『ダーク』で夜闇や陰に紛れたりして撒いた。

 その後、俺たちは身支度や会議を終え、それぞれの部屋でもう寝ることになった。

(あの昼飯の時のレイラとミリア……あれは、何かあったんだな。)

 俺はベッドに寝っころがりながら、そんなことを考えていた。

(今考えると、スーネアの街出身と言っていたのに、何故スーネアで『宿を取っていた』んだ?)

 寝返りを一つうち、横向きから仰向けになる。

(まあ、そのうち話してくれるだろう。話したくないならそれでいいんだよな。俺だって異世界から来たことを隠していたんだし。それをあいつらは受け入れてくれたんだ。俺も気長に待とう。)

 俺はそう結論をつけると、そのまま眠気へと身を委ねた。

 魔力の使い過ぎで疲れた身体につられ、すぐに意識は曖昧になった。

1日に3話も投稿出来ました。我ながら頑張ったかと思います。

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