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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
1章 異世界への旅立ち(ラプソディー・オーバーチュア)
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1次試験

 ライナーさんは手に持っている木製の剣を振りかぶって襲い掛かってくる。その動きがとても速い。俺は体を回転させていなし、杖をライナーさんに向ける。身体が軽いな、重力が少ないって素晴らしい。

(幸い武装の色は全身青だし、手に持っているのは木だ。杖を選んでよかった。)

 俺が杖に意志を送ると、杖から炎が噴き出しライナーさんに襲い掛かる。

「なっ!」

「嘘っ!」

 ライナーさんとお姉さんの驚きの声が聞こえる。なんでだ?いたって普通の手だと思うが?

「凄いじゃないか!」

 炎を回避したライナーさんは再び襲い掛かってくる。よし、今度は体のフットワークや疲労だけじゃなくて腕力も試してみよう。

 さっきと同じようにライナーさんの攻撃を回転でいなす。しかし、今回はそれだけじゃない。回転した勢いと腕力で、ライナーさんを俺の後ろに思いっきり押し込む。

「のわぁ!」

 ライナーさんは巨体なのに思いっきり吹っ飛んで壁にぶつかる。ライナーさんは速い。しかし、今のは速さが命取りだ。俺は、この世界では腕力も強くなる。それに回転の勢いと、なによりもライナーさん自身の走ってきた勢いであそこまで吹っ飛んだ。

(何はともあれライナーさんに隙が出来たぞ!チャンス!)

 俺は杖をライナーさんに向けると、さっきより火力が増した炎を出す。

 杖は、四元素説で『火の象徴』の道具、いわば『象徴武器シンボリックウェポン』だ。よって、杖から火、ましてや今みたいに炎が出せる。そこに、さらに加える。五行思想の中では、ライナーさんの青色は『木の象徴』だ。木はよく燃えるため火を強くする。相生と呼ばれる現象だ。つまりだ、”ライナーさんの鎧は木で、炎が良く燃える”のだ!

「ぎゃああああ!」

 ライナーさんに炎がつくと、それはさらに火力を増した。もはや火柱のように。ライナーさんの武器である木製の剣も燃え上がってしまった。ライナーさんは悲鳴を上げ悶える。

 そろそろかな。俺は自分の中でさっきの理論を考えないようにする。すると、炎は一瞬にして消え去る。それとともにライナーさんの悲鳴も消える。

「こ、降参だ……。」

 ライナーさんから弱弱しい声が聞こえた。

「は、はい!これで1次試験は終了です!」

 お姉さんが試験の終わりを告げる。

「はい、ありがとうございました。」

 俺はライナーさんに礼をすると、ライナーさんに駆け寄る。

「どこか酷い火傷とかしてませんか?」

 俺はライナーさんの容体を見る。

「あ、ああ、大丈夫だ。」

 ライナーさんはそういうと懐から緑色の液体が入った瓶をとりだし、栓をあけ、中身を飲む。すると、ライナーさんの傷はみるみるうちに回復していった。

(凄いな。これがポーションか。)

 俺はそれを見て安心と感心をしながら立ち上がり、振り返る。

「次は何をやれば?」

 お姉さんにそう質問しながら。

「あ、はい、次もあちらの部屋で30分ほどお待ちください。次の試験の準備をいたします。」

 なるほど。そんな感じね。

「はい、分かりました。」

 俺は部屋に向かっていった。

             __________________

 残された受付嬢とライナーは相談する。

「す、すごかったな、彼は。あの規模の魔法を使えるなんて。」

「ええ、何故か魔法使いなのに身体能力もありますし、なによりも……。」

「無詠唱魔法、だな。」

「はい。あれはSランクの魔法使いでもそうそう扱えるものではないですよ……。」

「しかもあの規模だ。とんでもない。」

「はい、して、点数はどのように?」

「当然、なんの文句もなく満点だ。」

「はい、分かりました。」

 受付嬢は手元の紙に点数を書き込む。

「はい、それでは次の準備がございますので。」

「ああ、分かってる。じゃ、お疲れさん。」

「お疲れ様でした。」

 ライナーは部屋から出て行った。受付嬢は次の試験官を呼びに行きながら疑問を頭で呟く。

(ライナーさんってたしかAランクよね。)

 あの少年は、いったい何者だろう?と受付嬢は首をかしげる。

やっと戦闘です。

魔術で初出のやつは、でるたびにこんな感じで説明します。

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