1次試験
ライナーさんは手に持っている木製の剣を振りかぶって襲い掛かってくる。その動きがとても速い。俺は体を回転させていなし、杖をライナーさんに向ける。身体が軽いな、重力が少ないって素晴らしい。
(幸い武装の色は全身青だし、手に持っているのは木だ。杖を選んでよかった。)
俺が杖に意志を送ると、杖から炎が噴き出しライナーさんに襲い掛かる。
「なっ!」
「嘘っ!」
ライナーさんとお姉さんの驚きの声が聞こえる。なんでだ?いたって普通の手だと思うが?
「凄いじゃないか!」
炎を回避したライナーさんは再び襲い掛かってくる。よし、今度は体のフットワークや疲労だけじゃなくて腕力も試してみよう。
さっきと同じようにライナーさんの攻撃を回転でいなす。しかし、今回はそれだけじゃない。回転した勢いと腕力で、ライナーさんを俺の後ろに思いっきり押し込む。
「のわぁ!」
ライナーさんは巨体なのに思いっきり吹っ飛んで壁にぶつかる。ライナーさんは速い。しかし、今のは速さが命取りだ。俺は、この世界では腕力も強くなる。それに回転の勢いと、なによりもライナーさん自身の走ってきた勢いであそこまで吹っ飛んだ。
(何はともあれライナーさんに隙が出来たぞ!チャンス!)
俺は杖をライナーさんに向けると、さっきより火力が増した炎を出す。
杖は、四元素説で『火の象徴』の道具、いわば『象徴武器』だ。よって、杖から火、ましてや今みたいに炎が出せる。そこに、さらに加える。五行思想の中では、ライナーさんの青色は『木の象徴』だ。木はよく燃えるため火を強くする。相生と呼ばれる現象だ。つまりだ、”ライナーさんの鎧は木で、炎が良く燃える”のだ!
「ぎゃああああ!」
ライナーさんに炎がつくと、それはさらに火力を増した。もはや火柱のように。ライナーさんの武器である木製の剣も燃え上がってしまった。ライナーさんは悲鳴を上げ悶える。
そろそろかな。俺は自分の中でさっきの理論を考えないようにする。すると、炎は一瞬にして消え去る。それとともにライナーさんの悲鳴も消える。
「こ、降参だ……。」
ライナーさんから弱弱しい声が聞こえた。
「は、はい!これで1次試験は終了です!」
お姉さんが試験の終わりを告げる。
「はい、ありがとうございました。」
俺はライナーさんに礼をすると、ライナーさんに駆け寄る。
「どこか酷い火傷とかしてませんか?」
俺はライナーさんの容体を見る。
「あ、ああ、大丈夫だ。」
ライナーさんはそういうと懐から緑色の液体が入った瓶をとりだし、栓をあけ、中身を飲む。すると、ライナーさんの傷はみるみるうちに回復していった。
(凄いな。これがポーションか。)
俺はそれを見て安心と感心をしながら立ち上がり、振り返る。
「次は何をやれば?」
お姉さんにそう質問しながら。
「あ、はい、次もあちらの部屋で30分ほどお待ちください。次の試験の準備をいたします。」
なるほど。そんな感じね。
「はい、分かりました。」
俺は部屋に向かっていった。
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残された受付嬢とライナーは相談する。
「す、すごかったな、彼は。あの規模の魔法を使えるなんて。」
「ええ、何故か魔法使いなのに身体能力もありますし、なによりも……。」
「無詠唱魔法、だな。」
「はい。あれはSランクの魔法使いでもそうそう扱えるものではないですよ……。」
「しかもあの規模だ。とんでもない。」
「はい、して、点数はどのように?」
「当然、なんの文句もなく満点だ。」
「はい、分かりました。」
受付嬢は手元の紙に点数を書き込む。
「はい、それでは次の準備がございますので。」
「ああ、分かってる。じゃ、お疲れさん。」
「お疲れ様でした。」
ライナーは部屋から出て行った。受付嬢は次の試験官を呼びに行きながら疑問を頭で呟く。
(ライナーさんってたしかAランクよね。)
あの少年は、いったい何者だろう?と受付嬢は首をかしげる。
やっと戦闘です。
魔術で初出のやつは、でるたびにこんな感じで説明します。




