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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
4章 合わせ鏡の混乱(ミラー・ミラージュ・ライアゲーム)
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「いやぁ~、充実したね!」

「そうですね!勉強になりました!」

「目から鱗だったわね!」

 夕方ごろ、俺たちは訓練の体験を終え、城の外に出て、宿に向かって歩いていた。3人は充実した時間が過ごせたようで、満足げにお互いの成果を語り合っている。3人『は』。

「お前らはいいよな、そんな時間が過ごせてよ……。」

 俺はじめじめしたオーラを放ちながら3人を羨む。

「ど、どうしたんですか?」

 レイラが心配して聞いてくる。

「俺も訓練で腕を磨こうと思ったのに、逆に教える羽目になった。」

 暗い声で簡単に説明する。

「う、うわぁ……それはきついわね……。」

 ミリアの同情の声。

「しかも全員だぞ。1人2人じゃない。その場にいた50人全員だ。」

 俺はそう返しながら、日本にいたころ、テレビで見た大きな部活の顧問ってこんなに凄いことをやっていたのかと思い出す。

「ま、まぁ、ごはんでも食べて気分転換しようよ。」

 クロロは困り顔で汗を垂らしながら俺を慰めてくれた。

             __________________

 飯を挟んである程度気分を切り替えられた。3人に悪い気分にさせたことを謝ったのち、皆で俺の部屋に集まって翌日の予定を話し合った。

「とりあえず、明日の姫様のお誕生日パレードは見ていくわね。」

 ミリアが決定事項を確認する。

「相当豪華って聞くから楽しみだね。」

 嬉しそうに耳をひょこひょこさせながらクロロが頷く。

「どんな方なんでしょうね、お姫様って。」

 レイラが目を期待に輝かせてそう言う。

「王族の人間か。あの試験の後のいざこざ以外あったことないから楽しみだな。」

 俺もそう呟く。といっても日本では皇族の人間の護衛もしたし、話したこともあるがな。内容は紅白歌合戦の結果についてだが。

「ああ、あの人ね。」

 ミリアが思い出したように手を打つ。人目がないのをいいことに、国王を『あの人』呼ばわりだ。

「あのお方は、普段は賢くて、民衆思いで、立派な王様らしいですよ。……きっと、あの時は混乱していただけです。」

 レイラは、前半は希望を込めてフォローするように、後半は嫌なことを思い出して、それを否定するように言う。

「まぁ、確かにイグニスが出てきたら皆そうなるよね……。」

 クロロは苦笑いしながらそう言った。実際、その事を知ったクロロ自身も、始めは混乱してた。今は慣れたが。

 結局、パレードを見た後に適当にクエスト受けて、といった大体はいつもの流れに落ち着いた。その後、俺たちは各々の部屋で眠りについた。

             __________________

「陛下、本日のことについて、変わったことがあるので報告いたします。」

「ほう、なんだ?」

 ここはパーカシス王国の首都にある、『ドラミ城』の王の寝室だ。そこでは、暁たちが寝たころに、着替える前の王と、大臣らしき人物が話しをしている。

「はっ。本日、城の観光に来た4人の冒険者パーティーについてです。」

 慇懃に頷きながら、大臣は答える。

「よし、続けてくれ。」

 王は椅子に腰を掛けながら促す。

「4人の内、3人がSランク、1人がAランクという、とてもランクの高いパーティーでした。全員が訓練の体験をしたのですが、それぞれが、各部隊のかなり上位の記録を出しました。その後、それぞれの部隊の隊長や副隊長からそれぞれ個人的に指導を受け、そこでさらに格段に力を伸ばした、とのことです。魔法使いの者については、圧倒的に強く、むしろ魔法使い部隊の者が教えてもらえるよう懇願したそうです。」

 大臣はとんでもない内容を書類を読み上げるように伝える。

「す、凄いなそれは……騎士にも、もっと訓練するよう伝えないとな。ところで、その4人は騎士に所属することに興味は示したかね?」

 王は、ちょっと引き気味な反応をしたあと、大臣に質問する。

「全く興味を示さなかったようです。4人が揃って冒険者の方が気楽でいい、と言っていたそうです。」

「ちょっ!」

 大臣の返答に王はコミカルに椅子からガタンッ、と落ちる。

「ま、全く観光をできるようにした意味がないじゃないか……。」

 王は声を震わせながらも、よれよれと椅子に座り直しながら話す。

「全く、その通りですな……。」

 大臣は遠くを見るような目になり、ため息を吐く。

「お、そうそう、妹のカサンドラの動向はどうなんだ?」

 一通りの流れを終えると、王は大臣に別の質問をする。

「はっ。今のところ、ヴィリア様の動向に大きな変化はございません。」

 大臣も、目を真剣にして、気を引き締めて答える。

「そうか、ご苦労だったな。明日は娘であるヴィリアの誕生日パレードじゃからな。暗殺を目論まれると、いつもより成功率が高くなってしまう。」

 憂いを帯びた声で話すと、王は天井を仰ぐ。そして、王は言葉を紡ぐ。

「ヴィリア様は陛下の一人娘であられますからな。次期女王でもあるあの方を殺せば、カサンドラ様の息子が王になります。……心中、ご察しします。」

 大臣も悲痛な声で王に話しかける。

「全く、俺は可愛い娘と、後継者争いや王権とは無縁な、平和な暮らしがしたかったよ。」

 王は、そこでもう1つ深いため息を吐いた。

漢字検定と英語力検定が迫ってます。やらなきゃと思いつつも投稿してしまいます。

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