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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
3章 男の意地(ナイトオブ・コーデシュバリー)
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裏の話 二つ名

これを読む前に、『裏の話 その頃』を読み返してください。

ここに持ってくる重要な伏線を書き忘れていたため、『裏の話 その頃』を改稿しました。

「やぁ!」

 現代日本の人通りの少ない裏路地にて、その場に似つかわしくない少女が掛け声をあげた。

 その少女の特徴は、一般的なセーラー服に、黒髪のショートカットだ。

 少女の手に握られているのは、分厚くて大きい『本』。開かれているページには『桃太郎』という題名とその内容が書かれている。少女の後ろで滞空するのは3つの『光』。

(『桃太郎』では、桃太郎は鬼退治に行く際に、犬、猿、雉を仲間にしていった。)

 少女は手に持っている『本を見ながら』頭の中で日本の有名な童話の内容を反芻する。

「ガアアア!」

 少女に対峙するのは、実際に現代日本では空想の世界でしか見れないもの。しかし、だれもが知っているもの。赤い肌に角、虎柄のパンツに大きな体格。どこからどう見ても、見紛うことなき『赤鬼』だ。それは、コスプレでも何でもない、『本物』の赤鬼。

「くらえ!」

 少女は桃太郎に関する解釈を脳内で反芻し終えると、手を鬼に向かって突き出した。

「ゴオオ!」

 3つの光の球が鬼に襲い掛かり、鬼はなすすべもなくやられ、苦悶の声をあげる。鬼が立っている場所は、少女から見れば『鬼門』だ。そして、さっきまで少女の後ろに滞空していた3つの光に位置はそれぞれ西南西、西、西北西に位置していた。

「ガ……ゴ……。」

 鬼はついに倒れ、そのまま息絶えた。

「ふう、一件落着。」

 少女はそういって気の抜けた声をだすと、すでに光を放っていない『3つの折紙』を回収した。

 少女の名前は神野茜。神野暁のただ1人の妹。奇しくも、茜は異世界にいる兄と、全く同じ方法で鬼退治をした。

「これでこのあたりで起こっている犯人不明の惨殺事件は終わったね。」

 依頼の内容を口に出して確認する。そして、茜は兄の開発した魔術であるストレージで分厚い本をしまう。

 この本は『術話集』と呼ばれる、魔術師の言うところの『術話』が大量に収まった本だ。魔術師は、この術話集の内容を見て、それを強くイメージすることで、魔術を発動する。この時の3日ほど前に神野剛毅が出した電気のように、それぞれが特別得意とする魔術はこうして補わなくても出来るが、そのほかはこうして術話集で補う。

「私も、早くお父さんみたいに『二つ名』が欲しいな。」

 少女は呟きながらその場を後にする。

 魔術師には、ある程度強くなってくると『二つ名』が与えられる。それぞれが特別に得意とする魔術にちなんでつけられる。

 暁と茜の父であり、現当主の剛毅には、『雷霆らいてい』の名が与えられている。これは、当然剛毅の得意とする電気や雷に関する魔術にちなんでつけられた。ギリシア神話の最高神『ゼウス』が操る『雷霆ケラウノス』の利用を、剛毅は得意とする。現当主にふさわしいものだ。ちなみにこれは『雷帝』と呼べるようになっている。余談だが、息子と娘である暁と茜は、剛毅が怒ると怖いことから『雷おやじ』の意味が籠っていると父親の二つ名を解釈している。

「術話集が無くても、私も1つくらい魔術が使えるようになりたいな。」

 そう呟きながら、茜は路地裏を抜ける。

「まぁ、お兄ちゃんみたいな例外も存在するけどね。」

 茜は呟きながら帰宅の途につく。

             __________________

 暁は、魔術を使う際に、『術話集を利用しなくても出来る』。この特徴は、彼の二つ名にも表れている。

「だからこそ、儂はあいつを選んだのだからな。」

 神界で、暁を異世界に送った神様は呟く。


「暁は、本当に特殊な特徴を持っておる。」

主人公のチートさがにじみ出てきますね。

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