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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
3章 男の意地(ナイトオブ・コーデシュバリー)
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エピローグ3 新たな仲間

 クロロの喜ばしい昇格のお知らせの後、調査団の人と俺たちで宴会を開くことになった。その宴会の中心は当然俺たち。途中で記録結晶の内容、つまり俺たちの戦いを映像で流したりして(超恥ずかしかった)、それなりの盛り上がりを見せた。

「それにしても、あの時保護した女性がその変異種だったとはな……。」

 団長さんは悔しそうにそういうと、酒を煽る。

「俺も、Sランクに上がって油断してたんだな。……よし、首都に帰ったらみっちり修行してやる!」

 そして1人で勝手に気合を入れる。

「それにしても、まさかアカツキが『ディスペル』を使えると思わなかったぞ。どうやって使ってるんだ?」

 さらに俺に絡んでくる。隣に団長さんの友人であり、調査団の副団長さんである魔法使いの人も興味津々だ。

「あー、あれは多分、他の人には使えないと思います。他の人には理解できないですし。」

 魔術だし。

「ほう、自分以外には理解できないくらい複雑なのか。また大きく出たな。」

 団長さんの目が細められる。副団長さんなんか露骨にイラッと来た表情をしている。

「ちょ、そういう意味じゃないですって。知識や知能じゃなくて『考え方』の違いですよ。俺は育った環境が特殊で、人とは違う考え方を無意識にしてるんです。」

 俺は上手いこと釈明を試みる。

「なるほどな。そんなこともあるだろうな。」

 俺の釈明に納得したのか、団長さんは表情を柔らかくして酒を煽った。

             __________________

 宴会が終わり、俺たち4人で宿に着く。一通りの支度を済ませると、いつも通りに女の子2人の部屋に集まる。

「まず、今日の報酬の分配だな。普通に4等分でいいか?一人1枚少なくなるけど。」

 今回の報酬は、依頼クリア報酬を含めて白金貨43枚だ。依頼クリア報酬はもっと少ないはずだったけど、相手が予想外に強かったということでかなりおまけしてくれた。

「私は血を貰ったので、1枚少なくていいですよ。」

 レイラがホクホク顔でそう言う。

「本人が言うんなら問題ないわね。」

「は、白金貨11枚……。」

 ミリアはもう慣れたようだが、クロロはびびっている。

「ほいじゃ決定。」

 俺はストレージで白金貨が入っている袋を出し、白金貨を11枚ずつ取り出す。レイラは10枚だったな。

「ほい、ミリア。」

「あんがと。」

「はい、レイラ。」

「ありがとうございます。」

「ほい、クロロ。」

「あ、ありがとう……。」

 クロロだけ反応が浮いている。

「そういえばクロロ、お前はこのあとなんか予定あるのか?」

 俺はふと気になったことを尋ねる。

「うーん、またフリーランスかな……。」

 クロロが悩む素振りを見せながらそう答える。

「なぁクロロ、1つ提案がある。」

「な、なんだい?」

 俺はクロロに真剣な表情で語りかける。

「クロロ、俺たちのパーティーに加わって一緒に世界各地を旅しないか?」

「え?」

 俺は、クロロをすっかり気に入ってしまった。正直、どうせフリーランスなら俺たちのパーティーに加わって欲しい。

「あら、いいじゃないの。どう、クロロ?」

「折角仲良くなったんですし、一緒にどうですか?」

 2人も賛成してくれるようだ。俺たちは一様にクロロを期待の眼差しで見つめる。

「皆が許してくれるなら……僕も、そのメンバーに加わりたい。どうか、これからもよろしくお願いします。」

 クロロは至極真面目な表情で頭を下げる。そして、頭を上げると、顔を赤らめてはにかんだように笑った。

「くくっ。」

「ふふふっ。」

「あははっ。」

「ははっ。」

『はははははっ。』

 俺たちはお互いの顔を見つめると、なんとなく笑ってしまった。

「あ、そうだ。実はまだメンバーがいるんだよね。」

 俺はふっと思い出してストレージで『焔帝の杖』を取り出す。

「え?」

「ああ、あれですか。

「すっかり忘れてたわね。」

「最後のメンバー、イグニスだ。」

『初めましてだな、クロロ。』

「うわっ!杖が喋った!?」

 クロロは驚きで思い切りのけぞった。

「この杖には俺と契約した眷属の意思が入ってるんだ。イグニスと俺は契約したんだよ。」

『よろしく頼む。』

 俺が説明し終わると、イグニスが挨拶をする。

「へぇ~、アカツキさんはそんなことまでやっちゃうんだ。それで、どの魔物と契約したの?漂ってくるオーラからかなり強い魔物だよね?」

 クロロが興味津々に訪ねてくる。

「火龍だぞ。」

「え?」

「だから火龍。」

「……火龍ってあの?南の火山に住むと言われている伝説の?サラマンダーたちの主と言われている?基本4属性を司ると言われている4つの神の如き龍の1つの?」

「お、クロロ、全部正解だ。詳しいな。」

『いかにも、我こそが火龍だ。イグニスと呼んでくれ。』

 クロロはあまりのことに驚いて目を丸くしている。

「クロロ、アカツキについては驚くだけ無駄よ。」

「そうです、もう私たちも慣れてきました。」

 両サイドから女の子2人がクロロの肩を掴んで語りかける。

「……ということは、先日の火山が噴火して、大きなサラマンダーらしきものが飛び出してきて、それが水やら風やらが起こった挙句に落ちていったのってもしかして?」

『うむ。アカツキが火山の山頂に登ってきて色々あって我と戦うことになり、私が負けたのだ。そして、その礼に我はアカツキの眷属として契約した。』

 火龍が懐かしむように話す。たかだか数日前のことだけど。

「……2人の言ってることがわかった気がした。……よろしくお願いします、イグニス……様?」

『火龍だと思って遠慮することではない。イグニスでいい。』

「じゃあ、改めてよろしく、イグニス。」

『うむ。では我はもう寝る。』

 一通りやり取りが終わると見るや、イグニスは寝息を立てて寝てしまった。

「今回は場所が狭かったし、森の中だから使う機会がなかったけど、召喚できたりもするし、これを媒体にして火属性魔法を使うととんでもないぞ。」

「……処理が追いつかない。」

 クロロは頭を抱え始めた。

「大丈夫、そのうち慣れるから。」

「頑張ってください、クロロさん。」

 2人の同情的な言葉が飛び交った。


 ……あの2人に俺ってそう思われてたんだ。

             __________________

 あのあと、考え込みすぎて疲れたクロロが寝に行ったので、俺たちもそこでお開きにした。俺は、今ベッドの上で考えことをしている。

(また、あっちの世界との共通点だ。)

 やっぱり、この世界はあっちの世界と魔術的な意味で共通点が多い。ここ最近だと、『聖釘』と『白面金毛九尾の狐』だ。

(本当に、どうなっているんだろうな?)

 俺は1つ、寝返りを打った。

(それにしても、やっぱり今日は疲れた。魔術同士の繋がりを利用した3つ同時使用、その直後に強力な妖怪退治のシーンをそのまま流用した魔術だもんな。頭を追いつかせるのは大変だ。)

 俺は1つ大きなあくびをして、さらに寝返りを打つ。

(久しぶりに、『あれ』を使わざるを得なかったぜ。)

 俺は最後に心で悪態をつくと、そのまま眠気の身をゆだねた。

3章(本編)が終了です。このあとは本編の伏線にもなる『裏の話』シリーズです。

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