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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
3章 男の意地(ナイトオブ・コーデシュバリー)
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銀色

「やったぁ!」

「やりました!」

「凄いよ!やったぁ!」

 俺の言葉を皮切りに、堰を切ったように3人は大喜びする。

「よく耐えてくれたぞクロロ!『男』を魅せたな!」

 俺はそういってクロロに歩み寄る。

「うん!ありがとう!」

 そのまま俺たちは勢いよくハイタッチ。

「クロロ、あんたってやっぱり男の子なのね。普段の姿からは想像できなかったわ。」

「かっこよかったですよ、クロロさん。」

「あはは、ありがとう。」

 女の子2人もクロロを褒める。クロロはそれにはにかむ。

「それにしても、アカツキさん!あれは凄かったね!僕驚いちゃったよ!まさか『ディスペル』を使えるなんて!」

 クロロが俺にキラキラとした目を向けてくる。

「そういえば、九尾も言ってたが『ディスペル』って何なんだ?」

 俺はクロロに質問してみる。

「魔法の解除のことだよ!かけられている補助魔法や発動された魔法を無効にしちゃうんだ!その存在は昔から言われ続けていたけど、使えた人は今までいないんだよ!」

 クロロは熱っぽく説明する。ああ、あの『鐘』のことか。

「九尾のマネじゃないけど、アカツキって本当に規格外ね。」

「あれを見た時は、そんな場合じゃないのに、思わず呆けちゃいましたよ。」

 女の子2人も口々に賞賛してくれる。

 ……あれって、そんなに凄いことなんだ。『魔術』では割とメジャーなんだがな。

「宿での作戦会議の時に、あの思わせぶりな引っ張り方は、それのことだったのね。」

 ミリアがふとこんな声を漏らす。ああ、あれか。俺はそう考えながら宿での作戦会議の続きを思い出す。

             __________________

「それで、結局遅い時間に出るのは何でなの?」

 俺が話しを一旦まとめると、すぐにミリアが質問してきた。

「ん?ああ、もしかしたら、その変異種が『ある事』をしてくると思ってな。紀憂ならいいんだが、念のためだ。この時間ぐらいに出れば、ちょうどいい時間になる。その時間ならば、『ある事』をやられても対応できるからな。」

 俺はところどころ濁しながら言う。

「それで、そのあることってなんですか?」

 レイラがすぐに質問をしてくる。しかし、俺はこれに答えるのにためらってしまう。

「……余計な心配はしない方がいいから、まだ説明はしないよ。それを心配してしまうと、何もなかった時でも動きを制限してしまうからな。」

「ふーん、そんなものなのかな?」

 最後にクロロが一応納得したような反応を見せた。

             __________________

「いやはは、あの時は済まなかったな、引っ張っちゃって。」

 俺は後頭部を掻き、笑ってごまかしながら謝る。

「まぁいいわよ。アカツキも考えあっての事なんでしょ。」

 ミリアがひらひらと手を振って俺を受け入れてくれる。

「まさか、あいつも夜が得意だとは思わなかったな。この釘がなければ絶対やられてた。」

 俺は手に持っている、箱に入った30本の聖釘を見る。

「『ディスペル』だなんて奥の手があったなんて凄いですね。しかも、九尾はあの自らにかけた魔法はかなり強力だと言ってましたよね?それすらも打ち破るほどですよ。」

 レイラがしきりに感心して見せる。

「あれほどの規模のはそうそう使えないよ。日付がまたぐ瞬間じゃないとな。だから、ちょうどいいだろう9時を狙ったんだ。」

「なるほど、今なら 納得できるね。」

「あの時から先の先を見てたわけね。」

 俺の説明に、クロロとミリアが感心して見せる。俺はそろそろ照れくさくなってきたので、

「よし、じゃあそろそろ素材を回収して帰るか。」

 といって皆を促す。

「あ、そうそう。そいつの血にはあまり触らないようにな。洒落にならない毒が入ってるから。」

 俺は自分の言葉にさらに説明をつけたす。実際、あいつの血に触れている周りの草が急速に枯れていってる。

「よっ!」

 俺は掛け声とともに、聖光属性上級魔法『ウルトラポイズンヒール』を全員にかける。これは、毒になった瞬間すぐに回復するという、持続魔法だ。中級に『ポイズンヒール』という同じ効果の魔法があるが、この『ウルトラポイズンヒール』は効力が段違いだ。

 俺たちは、その魔法に守られながら解体を進める。

「この血も、ビンかなんかに入れて回収したいな。猛毒草よりよっぽどたちの悪い猛毒だし、唯一無二の奴だから超高く売れるぞ。物を溶かす感じの毒でもないから、ビンに入れれば持ち歩けるし。」

 俺はふと思いついたことを皆に提案する。

「あ、私、ビン持ってます。」

 レイラがポーチをごそごそとあさり、中から大きなビンを2つ取り出した。

「あたしもあるわよ。」

「僕も。」

 2人も同じものを2つずつ持っていた。合計大きなビン6個分の猛毒が集められる。

「では、私が集めますね。」

 レイラはそういうと、慎重に血を集め始めた。

「これだけ大きいからそのビンは全部いっぱいになるだろう。」

 俺はそういいながら、解体された素材をストレージで回収した。

 俺だけビンを持ってなくて、寂しかったのは秘密。

             __________________

 その後、俺たちは素材も回収し終わり、村に戻った。ギルドのドアを開けたその瞬間、

『ワアァァァ!』

 という歓声と共に、万雷の拍手が鳴り響いた。

「な、なんだ?」

 俺は思わず中をキョロキョロと見回すと、調査団の人やギルドの職員さんらが笑顔で拍手をしてくれている。

 拍手が鳴り終わったあと、調査団の団長さんが俺たちに歩み寄ってくる。

「君たち!すごいじゃないか!記録結晶であの激戦をずっと見ていたよ!よくぞ俺たちの敵を捕ってくれた!」

 そういうと団長さんは俺たち4人に握手して回る。ああ、なるほど、これはそういうことね。

「えーと、そんなわけで皆さんもご存知かと思われますが、あの変異種を倒してきました!」

 俺は場の空気を読んで自らそれを宣言する。すると、再び歓声と拍手が沸き起こる。

「君を推薦したのは間違いじゃなかったようだね。」

 ギルドの偉い人が俺たちに歩み寄ってくる。

「さぁ、奥に行こう。素材の取引だ。」

 そういうと、偉い人は俺たちを先導して奥に進んだ。

             __________________

 案内された部屋の中で、俺たちは九尾の素材を出す。そして、九尾の血を集めたビンも。

「これだけあれば一生遊んで生活できるわね……。」

 ミリアがそれらを見て思わず簡単の声を漏らす。

「唯一無二の猛毒がこれだけたくさんあるし、魔族のように強くて人語を話して賢い変異種の素材全身だからね。これは相当な額になるよ。」

 クロロも満足げに頷いている。

「……。」

 しかし、レイラだけ何か悩んでるようだった。

「レイラ、なんか表情が優れないけどどうかしたか?」

 俺はレイラが心配になったので声をかける。

「あ、いえ、なんでもないです。」

 レイラはそう言うが、やはりその表情は優れない。その視線を追ってみると、

「ああ、あの猛毒の血が欲しいのか。」

 あのビンがあった。

「はい……ですが、皆さんはこれを売りたいようですし……相当貴重なものですので、私が貰っていいのかな……と思いまして。」

 ははん、なるほど。そういうことか。全く、お人好しだな。

「別にいいんじゃないか?俺だってこの前サラマンダーの成体の素材貰ってるし。」

「そうよ、遠慮なんて水臭いじゃない。」

「レイラさんも大活躍だったんだから、大丈夫だよ。」

 2人も話を聞いていたようで、レイラを後押ししてくれる。

「あ、ありがとうございます!」

 レイラは嬉しそうに深々と頭を下げると、ビンを2つ持ってカバンに入れた。

「2つでいいのか?」

 俺はレイラがまだ遠慮していると思って声をかける。

「いえ、矢尻に塗るだけですので、これでも十分ですよ。」

 レイラは振り返ると、満面の笑みで、嬉しそうに返事してくれた。

             __________________

 こっちの鑑定士さんは普通の人だが、それでも反応は大きかった。まぁ、さっきクロロが言ったみたいに滅茶苦茶貴重だもんな。猛毒の血については、そこらで買った生肉で実験してみせると、その生肉は一瞬で腐食され尽くした。たった一滴で1kgもある肉がだ。お、おそろしい。『殺生石』になられてたらこの辺一帯がどうなっていたかもわからん。

 結果は、白金貨40枚。人間の宿敵でもある魔族の研究にも役立つということで、これは国が買ってくれるそうだ。白金貨40枚……日本円で4000万円。俺たち4人は顎を落として驚いた。さすが国家予算、はんぱねえ。

「あ、そうそう、それとな。」

 いきなり偉い人が何かを思い出したように話す。

「クロロ君。」

「は、はいっ!」

 いきなり名前を呼ばれたクロロは、大きな声でどもりながら返事をする。耳がピーンと逆立って、正直面白かった。

「君、記録結晶で例の戦いを見せてもらったが、素晴らしい戦闘能力を持っているな。」

「あ、ありがとうございます!」

 偉い人の言葉にクロロは深々と頭を下げる。

「そこでだ、君はBランクと聞いて、私は不当だと思った。君に、特別にこれを上げよう。」

「これは……あっ!」

 クロロに渡されたのは、『銀色』のギルドカードだった。

「と、ということは?」

「ああ、君は、今日からAランクだ”!」

「ありがとうございますっ!」

 クロロはさっきよりさらに深く頭を下げる。そのあと、うっとりと銀色のカードを眺め始めた。

「本当はSランクにしようと思ったのだがね、先日にダークフェンリル相手に5対1とはいえ苦戦していたと聞いたからAランクどまりになってしまった。正直、あの最後の猛烈な防御はSランク相当だがね。」

 偉い人は、そう言うと満足げに頷いた。

最近1話に3000文字越すことが多くなってきました。

自分の中のボキャブラリーが増えていると解釈すると嬉しいです。

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