銀色
「やったぁ!」
「やりました!」
「凄いよ!やったぁ!」
俺の言葉を皮切りに、堰を切ったように3人は大喜びする。
「よく耐えてくれたぞクロロ!『男』を魅せたな!」
俺はそういってクロロに歩み寄る。
「うん!ありがとう!」
そのまま俺たちは勢いよくハイタッチ。
「クロロ、あんたってやっぱり男の子なのね。普段の姿からは想像できなかったわ。」
「かっこよかったですよ、クロロさん。」
「あはは、ありがとう。」
女の子2人もクロロを褒める。クロロはそれにはにかむ。
「それにしても、アカツキさん!あれは凄かったね!僕驚いちゃったよ!まさか『ディスペル』を使えるなんて!」
クロロが俺にキラキラとした目を向けてくる。
「そういえば、九尾も言ってたが『ディスペル』って何なんだ?」
俺はクロロに質問してみる。
「魔法の解除のことだよ!かけられている補助魔法や発動された魔法を無効にしちゃうんだ!その存在は昔から言われ続けていたけど、使えた人は今までいないんだよ!」
クロロは熱っぽく説明する。ああ、あの『鐘』のことか。
「九尾のマネじゃないけど、アカツキって本当に規格外ね。」
「あれを見た時は、そんな場合じゃないのに、思わず呆けちゃいましたよ。」
女の子2人も口々に賞賛してくれる。
……あれって、そんなに凄いことなんだ。『魔術』では割とメジャーなんだがな。
「宿での作戦会議の時に、あの思わせぶりな引っ張り方は、それのことだったのね。」
ミリアがふとこんな声を漏らす。ああ、あれか。俺はそう考えながら宿での作戦会議の続きを思い出す。
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「それで、結局遅い時間に出るのは何でなの?」
俺が話しを一旦まとめると、すぐにミリアが質問してきた。
「ん?ああ、もしかしたら、その変異種が『ある事』をしてくると思ってな。紀憂ならいいんだが、念のためだ。この時間ぐらいに出れば、ちょうどいい時間になる。その時間ならば、『ある事』をやられても対応できるからな。」
俺はところどころ濁しながら言う。
「それで、そのあることってなんですか?」
レイラがすぐに質問をしてくる。しかし、俺はこれに答えるのにためらってしまう。
「……余計な心配はしない方がいいから、まだ説明はしないよ。それを心配してしまうと、何もなかった時でも動きを制限してしまうからな。」
「ふーん、そんなものなのかな?」
最後にクロロが一応納得したような反応を見せた。
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「いやはは、あの時は済まなかったな、引っ張っちゃって。」
俺は後頭部を掻き、笑ってごまかしながら謝る。
「まぁいいわよ。アカツキも考えあっての事なんでしょ。」
ミリアがひらひらと手を振って俺を受け入れてくれる。
「まさか、あいつも夜が得意だとは思わなかったな。この釘がなければ絶対やられてた。」
俺は手に持っている、箱に入った30本の聖釘を見る。
「『ディスペル』だなんて奥の手があったなんて凄いですね。しかも、九尾はあの自らにかけた魔法はかなり強力だと言ってましたよね?それすらも打ち破るほどですよ。」
レイラがしきりに感心して見せる。
「あれほどの規模のはそうそう使えないよ。日付がまたぐ瞬間じゃないとな。だから、ちょうどいいだろう9時を狙ったんだ。」
「なるほど、今なら 納得できるね。」
「あの時から先の先を見てたわけね。」
俺の説明に、クロロとミリアが感心して見せる。俺はそろそろ照れくさくなってきたので、
「よし、じゃあそろそろ素材を回収して帰るか。」
といって皆を促す。
「あ、そうそう。そいつの血にはあまり触らないようにな。洒落にならない毒が入ってるから。」
俺は自分の言葉にさらに説明をつけたす。実際、あいつの血に触れている周りの草が急速に枯れていってる。
「よっ!」
俺は掛け声とともに、聖光属性上級魔法『ウルトラポイズンヒール』を全員にかける。これは、毒になった瞬間すぐに回復するという、持続魔法だ。中級に『ポイズンヒール』という同じ効果の魔法があるが、この『ウルトラポイズンヒール』は効力が段違いだ。
俺たちは、その魔法に守られながら解体を進める。
「この血も、ビンかなんかに入れて回収したいな。猛毒草よりよっぽどたちの悪い猛毒だし、唯一無二の奴だから超高く売れるぞ。物を溶かす感じの毒でもないから、ビンに入れれば持ち歩けるし。」
俺はふと思いついたことを皆に提案する。
「あ、私、ビン持ってます。」
レイラがポーチをごそごそとあさり、中から大きなビンを2つ取り出した。
「あたしもあるわよ。」
「僕も。」
2人も同じものを2つずつ持っていた。合計大きなビン6個分の猛毒が集められる。
「では、私が集めますね。」
レイラはそういうと、慎重に血を集め始めた。
「これだけ大きいからそのビンは全部いっぱいになるだろう。」
俺はそういいながら、解体された素材をストレージで回収した。
俺だけビンを持ってなくて、寂しかったのは秘密。
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その後、俺たちは素材も回収し終わり、村に戻った。ギルドのドアを開けたその瞬間、
『ワアァァァ!』
という歓声と共に、万雷の拍手が鳴り響いた。
「な、なんだ?」
俺は思わず中をキョロキョロと見回すと、調査団の人やギルドの職員さんらが笑顔で拍手をしてくれている。
拍手が鳴り終わったあと、調査団の団長さんが俺たちに歩み寄ってくる。
「君たち!すごいじゃないか!記録結晶であの激戦をずっと見ていたよ!よくぞ俺たちの敵を捕ってくれた!」
そういうと団長さんは俺たち4人に握手して回る。ああ、なるほど、これはそういうことね。
「えーと、そんなわけで皆さんもご存知かと思われますが、あの変異種を倒してきました!」
俺は場の空気を読んで自らそれを宣言する。すると、再び歓声と拍手が沸き起こる。
「君を推薦したのは間違いじゃなかったようだね。」
ギルドの偉い人が俺たちに歩み寄ってくる。
「さぁ、奥に行こう。素材の取引だ。」
そういうと、偉い人は俺たちを先導して奥に進んだ。
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案内された部屋の中で、俺たちは九尾の素材を出す。そして、九尾の血を集めたビンも。
「これだけあれば一生遊んで生活できるわね……。」
ミリアがそれらを見て思わず簡単の声を漏らす。
「唯一無二の猛毒がこれだけたくさんあるし、魔族のように強くて人語を話して賢い変異種の素材全身だからね。これは相当な額になるよ。」
クロロも満足げに頷いている。
「……。」
しかし、レイラだけ何か悩んでるようだった。
「レイラ、なんか表情が優れないけどどうかしたか?」
俺はレイラが心配になったので声をかける。
「あ、いえ、なんでもないです。」
レイラはそう言うが、やはりその表情は優れない。その視線を追ってみると、
「ああ、あの猛毒の血が欲しいのか。」
あのビンがあった。
「はい……ですが、皆さんはこれを売りたいようですし……相当貴重なものですので、私が貰っていいのかな……と思いまして。」
ははん、なるほど。そういうことか。全く、お人好しだな。
「別にいいんじゃないか?俺だってこの前サラマンダーの成体の素材貰ってるし。」
「そうよ、遠慮なんて水臭いじゃない。」
「レイラさんも大活躍だったんだから、大丈夫だよ。」
2人も話を聞いていたようで、レイラを後押ししてくれる。
「あ、ありがとうございます!」
レイラは嬉しそうに深々と頭を下げると、ビンを2つ持ってカバンに入れた。
「2つでいいのか?」
俺はレイラがまだ遠慮していると思って声をかける。
「いえ、矢尻に塗るだけですので、これでも十分ですよ。」
レイラは振り返ると、満面の笑みで、嬉しそうに返事してくれた。
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こっちの鑑定士さんは普通の人だが、それでも反応は大きかった。まぁ、さっきクロロが言ったみたいに滅茶苦茶貴重だもんな。猛毒の血については、そこらで買った生肉で実験してみせると、その生肉は一瞬で腐食され尽くした。たった一滴で1kgもある肉がだ。お、おそろしい。『殺生石』になられてたらこの辺一帯がどうなっていたかもわからん。
結果は、白金貨40枚。人間の宿敵でもある魔族の研究にも役立つということで、これは国が買ってくれるそうだ。白金貨40枚……日本円で4000万円。俺たち4人は顎を落として驚いた。さすが国家予算、はんぱねえ。
「あ、そうそう、それとな。」
いきなり偉い人が何かを思い出したように話す。
「クロロ君。」
「は、はいっ!」
いきなり名前を呼ばれたクロロは、大きな声でどもりながら返事をする。耳がピーンと逆立って、正直面白かった。
「君、記録結晶で例の戦いを見せてもらったが、素晴らしい戦闘能力を持っているな。」
「あ、ありがとうございます!」
偉い人の言葉にクロロは深々と頭を下げる。
「そこでだ、君はBランクと聞いて、私は不当だと思った。君に、特別にこれを上げよう。」
「これは……あっ!」
クロロに渡されたのは、『銀色』のギルドカードだった。
「と、ということは?」
「ああ、君は、今日からAランクだ”!」
「ありがとうございますっ!」
クロロはさっきよりさらに深く頭を下げる。そのあと、うっとりと銀色のカードを眺め始めた。
「本当はSランクにしようと思ったのだがね、先日にダークフェンリル相手に5対1とはいえ苦戦していたと聞いたからAランクどまりになってしまった。正直、あの最後の猛烈な防御はSランク相当だがね。」
偉い人は、そう言うと満足げに頷いた。
最近1話に3000文字越すことが多くなってきました。
自分の中のボキャブラリーが増えていると解釈すると嬉しいです。




