結果
「アカツキジンノ様ですね?」
「はい、そうです。」
「では、おかけください。」
俺が中に入ると、ギルドの職員さんが俺の事を確認した後に席を勧める。
「では、さっそく。……未だに信じられませんが、かの伝説の火龍を激戦の末破り、契約までしてのけたと。様々な属性の上級呪文を無詠唱、かつ同時に使用し、それを組み合わせる機転も見せた。さらには未知の魔法、つまり自分で開発したと思われる魔法をいくつも使用、しかもかなりレベルの高いものを。しかも発動までのタイムラグも短い。……しかも道中ではサラマンダーの成体を2匹同時に相手しても赤子の手をひねるように一瞬で倒した。……あなた本当に人間ですか?」
「自覚はあります。」
この職員さん、かなり失礼。この人はギルドのお偉いさん、会社で言うと専務くらいの人だ。昨日のデスマーチにもいた。
「こんなことしてのけるのは初めてですよ……正直、評価が出来ません。」
そういって頭を抱える。
「ですが、そんなこと言ってもしょうがありません。」
そういって紙を俺に渡してくる。俺はそれを受け取る。
「おめでとうございます。貴方は正真正銘、この世で3人目の『SSランク』です。」
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2人目に並んでいたライナーが部屋に通される。
(まぁ、正直サラマンダーの成体も仕留めたから悪い結果にはなるまい。)
ライナーはそう考えて鷹揚に腰かける。
「お見事です。サラマンダーの成体を仕留めましたね。圧倒的なスピードと機転、それに力を使いこなしましたね。貴方は……。」
職員はライナーに紙を差し出す。
「文句なしのSランクです。」
「ありがとう。」
ライナーは口先だけでお礼を言いながら席を立つ。
(どんなに褒められても、アカツキには勝てないよなぁ。)
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ルドルフが席に座る。
「サラマンダーの成体を仕留めましたか。お見事です。上位魔法の同時発動も見せ、また発動までのタイムラグもとても短いです。」
ギルドの職員が何事かを言っているが、ルドルフの耳には入らない。
(アカツキ殿と比べるのはバカらしいのは分かっておるが……悔しいのう。)
「貴方は、文句なしのSランクです。」
「すまんの。」
吐き捨てるようにお礼をいうと、ルドルフは勢いよく立ちそのまま部屋を去る。
(もっと精進せねばな。)
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レイラが着席を促され、あわてて席に座る。
(うう、緊張するなあ……。Aランク、いけてるといいなぁ。)
「サラマンダーの幼体を何匹も倒し、最後の方には後ろで凄いことが行われている中、サラマンダーの成体2匹相手に善戦、援護もあったと言えど、大きな怪我も無く2匹に大きな傷を負わすことができましたね。類まれな射撃制度と威力、判断力も素晴らしかったです。」
「あ、ありがとうございます!」
レイラは癖で一礼。
「貴方は、正真正銘の……。」
紙をレイラに渡す。
(Aいって!Aいって!)
祈りながら紙を受け取る。
「Sランクです。」
「へ?……えええっ!?」
レイラの絶叫は職員の耳を痛めさせた。
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ミリアは職員に勧められ、椅子に腰を下ろす。
(ま、決まってるわよねぇ。)
サラマンダーの幼体を何体も軽く屠ったんだ、確実にAランク。
「サラマンダーの幼体と互角以上に戦い、成体相手にも2匹同時にも関わらず、結構な傷を負わせましたか。二刀流とは珍しい。剣の性質をよく分かっていて、狙う場所も正確。なおかつ判断力もよい。相手の攻撃をひらひらかわしてからの2つの剣から繰り広げられる壮絶な攻撃は見事の一言に尽きますね。しかも、成体と戦っているときには後ろではもっと危険で、不安にも駆られたでしょう。その中で良くここまで出来ましたね。」
(そう言われると……照れるわねえ。)
まんざらでもない、と心の中でさらに付け足す。
「さて、そんな貴方ですが……。」
紙を渡されるので受け取る。
(さぁ、今日からAランクとして頑張るわよ!)
意気込んで紙を表にする。
「Sランクです。」
「Sランクぅ!?」
こっちの職員も耳を痛めた。
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全員の結果発表が終わり、5人でギルドの個室に集まっていた。本来、利用は禁止だが、ライナーさんが職員を昨日のお詫びを払え、と交渉してみせ、俺たちは騒がしい酒場でなく個室にいる。
「さて、お主らは結果はどうだったかの?儂は当然Sランクじゃ。」
ルドルフさんはさっさと言い終えるとミルクに口をつける。実は酒が苦手らしい。
「俺も当然Sランクだ。」
ライナーさんも続くと、ビールを煽る。
「レイラはどうだった?」
俺はレイラに振ってみる。
「私も……Sランクでした。」
「ほう。」
「ふむ。」
レイラの発言に大人2人は反応する。
「あたしもSランクだったわ。未だに信じられない……。」
ミリアもSだったようだな。
「当然だ。幼体は軽く葬るし、成体相手にも超善戦したんだろ?」
「しかも背後では伝説の龍と化け物が激戦を繰り広げてる最中での。」
「だれが化け物ですか!?」
大人2人は女の子2人を励ます。俺はそれに突っ込む。
「で、アカツキはどうだったの?」
「私たちがSということは……アカツキさんもSでしょうか?」
女の子2人はさっと切り替え、俺に質問する。俺は……言いにくいなあ。まぁいいや。
「SSランク……この世で3人目だと。」
「「「「SSランクっ!?」」」」
4人は声を揃えて驚く。
『アカツキは我を倒したのだ。SSランクでも温いわ。』
杖から火龍がそう呟く。
「SSランクっていったらウドウィン王国の王国騎士団長様とブラース帝国の軍団長様ですよ!どっちも魔族の超大群を1人で撃退したという!」
「過去の英雄でも1人しかいないわよ!魔王を倒した勇者ぐらいよ!」
「アカツキ……あの試験の時から思ってたが……。」
「お主、本当に人間かの……?」
「4人とも酷いなぁ!それと正真正銘人間です!」
4人の反応に俺は思い切り突っ込む。それと、『この世で』は『今生きてる人』って意味か。史上だと思ってた。
「これからどうしようかな……。」
俺はふっと呟く。一通り目先のあれこれは終わってしまった。
「なんか、私もやることが見つかりませんね……。」
「目標みたいなんが欲しいわよねー。」
俺たち3人は大きなイベントが終わってすっかり腑抜けモードになった。
「お、なら別の国に行ってみたりとか、旅をすればいいんじゃないか?」
「ほう、ライナー、なかなかいい案じゃの。どうかね?3人で気ままに旅でもしてきたら。」
大人2人がそんなことを言う。
「へぇ……楽しそうですね。」
俺は、その案に興味がある。旅か、いいかもな。
「ギルドは全部の国で共通だし……いいかもなぁ……。」
「立ち寄った町や村で泊まって、そこでその日稼ぎの依頼を受ける……いいかもしれませんねぇ。」
あ、2人も目をうっとりさせている。
「ふむ。ま、これは1つの案じゃ。じっくり考えるがよい。とりあえず、今日はこれぐらいでお開きにせんか?」
ルドルフさんがそういうと、それぞれで返事をしながら荷物をまとめる(俺はストレージ)。
この日は、これでお開きになった。
ちょっと終わり方が中途半端ですね。




