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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
2章 焔帝と英雄(ドラゴンスレイヤー・ベイオルフ)
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混乱

「えーと……サラマンダーの皆さんは俺の言葉が分かりますか?」

 ひと段落した後、俺に向かって跪いているサラマンダーに声をかける。サラマンダーは頷いたので、俺はさらに言葉を紡ぐ。

「その、今のその姿勢は俺が火龍の主になったから、その眷属である貴方達も俺に従うと、そういう感じですか?」

 というとさらに頷く。……気が引ける。基本人を使うことが無いからな……。

「と、とりあえずっと。」

 俺はレイラとミリアに対して戦った2匹に近づく。俺は短剣で自分の指を切ると、そこから出てきた血をサラマンダーに塗る。サラマンダーの傷は、たちまち回復した。

「驚かない驚かない驚かない……。」

 ミリアがそれを見てぶつぶつ呟いてる。

「アカツキさんて本当に色々出来るんですね。回復魔法は聖職者が使うもので魔法使いは基本攻撃魔法ばかりですよ。」

 レイラが目を丸くしている。あ、あの登録の時の用紙の聖職者ってそういう仕事なんだ。

「いっただろ?俺の場合は仕事が1人のことが多かったから1人でなんでもやらなくちゃいけなかったって。」

 俺はそういいながらもう1匹にも血を塗る。ちなみにこれは『不死鳥の涙』の応用。不死鳥の涙は傷を癒すと言われている。この場合、涙でなくともそういうものの『体液』に触れることが重要なのだ。他の物語でも、こういった神様や妖怪の類の体液は様々な効果を持つ。それに加えて、これには生物学の知識も加えた。『涙』は、『血』を濾したものだ。

「あんまりかしこまらなくていいですよ。もうそれぞれの住処に帰ってください。」

 俺がそういうと、サラマンダー達は四方八方に飛んで行った。俺が回復させた2匹は一礼をしてから飛んで行った。礼儀正しいな。

「おーい!何があったんだ!?」

「訳が分からんぞい!」

 その少し後に聞き覚えのある声が聞こえた。その方向を振り向くと、ライナーさんとルドルフさんが疲労困憊の様子で昇ってくるのが見えた。

「あ、ライナーさんにルドルフさん。どうですか?試験は順調でしたか?」

 俺は呑気にそんなことを尋ねるが、2人は凄い剣幕で俺に詰め寄る。

「順調でしたか?じゃねえよ!一体何があった!いきなり火口から赤いのが出てきて噴火か!?と思ったらとんでもなくでかくて強そうなサラマンダーだし!それが吠えた瞬間頂上に向かって成体が何匹も頂上に飛んでくし!とんでもない規模の魔法が連発されていたと思ったらいきなり大雨が降りだすし!しかもその雨が急に全部でかいサラマンダーに向かっていくし!そこからでかいサラマンダーの近くに何かが飛んで行ったと思ったらでかいサラマンダーが落ちて地震が凄いし!そのちょっとあとには成体が全部飛び去ってくし!訳が分からん!」

「しかも途中で本当に噴火までしたし!さらに今見たら明らかに大きいサラマンダーは居ないし!しかも『焔帝の門』が開いとるし!説明せい!」

 やべえ、この2人。キャラが崩壊しかけてる。

「と、とりあえず落ち着いてください!説明しますから!」

 俺はそういって火山についてから頂上までを簡潔に、頂上から今までを細かく説明した。

             __________________

「えっと、なんだ?つまりアカツキがうっかり『焔帝の門』を開けてしまった結果、でかいサラマンダー……火龍が火口から出てきてバトル勃発。ついでにそこの2人もサラマンダーの成体を2匹同時に相手にする羽目に。しまいにはアカツキは火龍を倒して、2人もアカツキの援護があったとはいえサラマンダーの成体2匹相手に善戦。お互いに致命傷は避けられたものの、サラマンダーの全身に傷を残したと?」

「さらにアカツキ殿は火龍と契約して眷属にした。で、アカツキ殿の所有している杖に宿したから火龍の身体は無い、と……?」

「そ、そういうことです。」

 俺の必死の説明を2人は最後に簡潔にまとめる。レイラとミリアは疲れたと言っていたため、ムリさせないように寝かせてある。

「アホかっ!?」

「アホかい!?」

 さらに罵倒までされる。この後も、2人はなかなか信じてくれなかったが、終いには杖の中で寝ている火龍を叩き起こし、召喚して実物を見せ、さらに本人(人?)に証言してもらってやっと信じてもらえた。

 ちなみにその後、2人は結晶を取り出してギルドと連絡を取っている。連絡用結晶もあるのか。

「ふい~疲れた。」

 俺は一人ごちる。あの2人、結構アクが強いな。

「お疲れ様。」

「お疲れ様です。」

 レイラとミリアが起きて、こっちに歩いてくる。

「本当にお疲れだよ……。」

 そういって俺はため息を一つ。

「アカツキ、ギルドから呼出し命令だ。」

「ギルドは色々てんやわんやらしいぞい。」

 ライナーさんとルドルフさんがこっちに戻ってくる。

「あ~やっぱりそうなりますよね……。」

「儂らも証人として呼ばれるんじゃ。おあいこじゃよ。」

 俺の文句にルドルフさんが反応する。

「はぁ……じゃあ行きますかね。」

 俺がそういうと、皆転移結晶を取り出し、ギルドに帰還した。

             __________________

 予想を超える大混乱だった。戦時中の軍の中枢基地かと思った。緊急でギルドのトップクラスのお偉いさん、この国の上流貴族のトップ、しまいにはパーカシス国王まで来ている大惨事。俺たち5人は散々の尋問、事情聴取、質問、疑問のオンパレードを過ごした。しかも全員混乱していて論点が定まらないしでこっちも疲れた。同じ内容を何回も聞くなと。全員がやっと納得したのは試験が時間制限で終了したころ。俺たちの試験はどうなったか質問すると、元々の結果に色を付けて審査するそうだ。

「おう……おふう……はひい……。」

「zzz……ううう……zzz……。」

「zzz……嘘じゃないですよぉ……zzz……。」

「あひ、あひい。」

「老体には堪えるわい……。」

 俺たち5人はこんな有様。食事や休憩もそこそこに寝かせてもらえずもみくちゃにされた。しかもお偉いさん相手だから無駄に緊張したし敬語も疲れた。結果がこれだ。ちなみに上から順に俺、ミリア、レイラ、ライナーさん、ルドルフさんだ。女の子2人は寝てしまっている(しかも悪い夢を見てそう、唸ってるし)し、俺とライナーさんはかろうじて起きてるがただの危ない人、ルドルフさんは年の功というか、唯一まともだったが今は100歳くらいまで老けて見える。

 廃人5人の出来上がりだ。俺はレイラとミリアの修行デスマーチのときに使った疲労回復の魔術を使っていたが、心の疲労と眠気は取れない。

 でも、あの人たちの気持ちも良くわかる。内容から察するに、火龍の姿はいろんなところから見えたのだろう。終いにはそれを倒して契約までしたのが16歳のガキ1人。国中が混乱の渦に巻き込まれた。最終的に、全員分の記録結晶と杖の火龍(今回は召喚はしなかった。ギルドが崩壊するから。)の証言で信じてもらえた。火龍の威圧感は凄まじいようで、半分以上の人が失神してたけど。ライナーさんとルドルフさんも、あの時は動けなかったもんな。レイラとミリアは慣れたらしいけど。

 俺たちは、この後ギルドの仮眠室で5人並んで死んだように熟睡した。あとから聞いた話だが、ギルドの職員は『死体安置所』と思ったらしい。

             __________________

 結局この後、全員が人間としてまともに活動できたのがさらに翌日。なんとか結果発表には間に合った。火龍の事については箝口令が敷かれていて、真実を知るのは1部の人間のみだ。それでも、集まっている冒険者たちは、

「おい、昨日の火山のほうみたか!?」

「ああ、みたさ!あの姿を見た瞬間、あまりの威圧感に気絶したからな!」

「俺もだ!あの迫力は伝説の火龍だ!」

「本当にいたんだ!」

『そうだそうだ!!!』

 と大騒ぎ。結果発表用紙を受け取る列に並ぶ俺たち5人は冷や汗をかきながらもなんとか耐えきる。

 この結果発表は、高校受験の個人面接のように奥の個室に通され、1対1で行われる。その時に評価基準なんかも聞く。

「お、俺の番だな。」

 俺は一番前に並んでいたため、初めに奥に呼ばれた。

中途半端ですが、1回切ります。

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