火龍
俺たちは言葉も出ない。頭上に浮かぶのは、火山の火口から出てきた30mはある巨体。それは、紛れもなく『火龍』だ。俺たちはそう確信した。
『早く答えよ!』
火龍は何も答えれない俺たちに業を煮やしたのか、声を荒げる。その声で地鳴りがするほどだ。
「お、俺です。申し訳ございません!悪気はなかったんです!それとなく触ってみたら勝手に開いたんです!ごめんなさい!」
俺は情けなく騒いで許しを請う。正直に話せばきっと!必殺ワシントン作戦!
『いるなら早く言えばよかろうに……。』
土下座までしている俺に対して火龍は呆れた目で俺を見る。
『その魔力……確かに、そこの少年が開けたようだな。』
そして、今度は品定めをするような目で俺を見始めた。
『面白い!そこの少年!我と戦え!』
火龍は突然声を上げたかと思うとそんなことを言ってきた。
「へ?」
「「え?」」
俺たちは思わずぼけた反応を返してしまう。
『あの門は我が対等に戦えるようなものが触れたら開くようになっていた!今か今かと楽しみにしておったのに、作ってこの方数十万年だれも開けられぬ!そこの少年が初めてだ!』
え、えーと。つまり……?
『我々龍は戦いが好きだ!しかし、対等に戦えなければ意味などない!そこの少年!我と1対1で戦おうではないか!さすれば許してやろう。』
「あ、あのう……どうしても?」
『どうしてもだ!命の保証はないが。』
「「なっ!」」
それを聞いた瞬間、後ろの2人が前に出てくる。
「ちょっと!アカツキを殺そうっていうの!?」
「そんなの、ダメです!」
『ちっ、邪魔が入るのか……ならば。』
火龍はそれを見て機嫌を損ねる。そして、思い切り息を吸うと、
グオオオオオオオオン!
超大音量で咆哮した!そして、その少しあと、バサッ、バサッっといろいろな方向から羽ばたく音が聞こえてきた。空を見ると、
10体ほどの成体のサラマンダーがこっちに向かってくる!
『そこの女たちにはこいつらを相手にしてもらう。』
火龍がそんなことを言う。
「2人とも、これはやるしかない。俺は火龍を、2人はサラマンダーをよろしく頼む!」
「もう!なんでこんなことに!」
「集団で囲まれるのに縁があるんでしょうか……。」
2人はもうやけっぱち状態。文句を言いながらも武器を取り出し、目には光が満ち溢れている。
「そのまえにこれを食べろ。」
俺はそう言うと、ストレージで、ある果物を3つ取り出す。
「これは何?」
俺はそれにかぶりつきながら説明する。
「これは桃だ。知っているだろう?市場で買ったもんだよ。ちょっとした細工がしてあるから食えよ。」
そういって俺はもう一口。うん、水分がたっぷりで瑞々しい。
「アカツキが言うなら大丈夫ね!はむっ!」
「いただきます!はむっ!」
2人も勢いよくかぶりつく。時間がないのは分かっているのだろう。
そして、俺たちは食べ終える。
「何?これ……体が、軽いし、力が漲ってくるみたい……。」
「それと、なんだか魔力のようなもので私たちが覆われています。」
「ちょっとした魔法だ。じゃ、頑張るぞ。」
本当は魔術だけどな。
桃は、『桃太郎』からわかるように、『仙果』、つまり神聖な果物とされた。本来の物語だとおじいさんとおばあさんはこれを食べて若返ったからな。若返る、つまり『死から遠ざかった』。俺は今回は回復力に当てる。そして、川から流れてきたりと水と縁が深い。水分も多く含むし。
よって、俺は市場で買った桃に仙果としての意思、それと水の魔術をかけた。仙果としての効果で身体能力や、回復力の向上。水の効果で、体に水のベールを張り、火に対する耐性を飛躍的に向上させた。
『ふむ、少年、変わったことをするな。この世界のとは違う。』
「余計なこと言うなよ。じゃ、始めるか。」
魔術は秘密だ!
『うむ。お主、名はなんという?』
「アカツキジンノだ!しがねぇ魔法使いだよ!」
『そうか!では、アカツキ!参るぞ!』
この世界の神様のようなものとの戦いが始まった。
短いです。




