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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
1章 異世界への旅立ち(ラプソディー・オーバーチュア)
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交渉

 俺たちは狩りを終え、スーネアへと馬車に乗って帰っている。

「いやあ、今日は大漁だね。」

 ミリアがうきうきと楽しそうに話す。

「そういえば、2人ともとてもCランクには見えない強さだぞ。一体何故?」

 俺はさっき気になったことを尋ねてみる。

「ああ、それですか。私たちは、安全のためにランクが低めのを基本的に受けているんです。だから、ランクがなかなか上がらないんですよ。」

 レイラはさっと答えてくれる。なるほど、確かに2人だけだと危険だもんな。

「そうそう。今日はアカツキがいるから大丈夫と思って冒険しちゃった。Cランクなんてこれで受けるのは3回目だもん。」

 ミリアはそういいながら指を3本立ててみせる。

「あんまり頼られたらプレッシャーじゃないか。よしてくれよ。」

 俺はそう返す。

「とかいって、あんだけ余裕じゃあねぇ。」

 ミリアは楽しそうに俺の目を見る。

「そういえば、ここ半年くらいレベルも計ってませんね。どれくらい成長してるんでしょうか?」

 レイラがさらっとそんなことを言う。俺はその中のワードに反応する。

「そういえば俺のレベルはどれくらいなんだろうな?」

「久しぶりに帰ったら計ってみますかね。」

 ミリアがそういって俺の方を見た。

             __________________

 ギルドの窓口で帰ってきたことを伝えると、カウンターの奥の前に通った通路に案内された。そこから、前とは違う場所にいき、その中の1つの部屋でしばらく待機させられる。部屋の広さは教室ほどだ。中にはなんにも家具がない。

「ここで品物を整理するんだよ。鑑定士をあの人がつれてくるから、それまでに品物を並べなきゃね。」

 ミリアが俺の方をちらっと見る。

「はいよ~。」

 俺はそういいながら部屋の隅から順に、取ってきた素材を種類順に並べる。

右腕20本、左腕20本、右足20本、左足20本、胴体20体、生首20個、角を40本、金棒を20本。

「さすがに、並べると壮観だな。」

 俺がその並び終えた光景をみて漏らす。

「これだけあるといくらになりますかね?」

 レイラがふっと漏らす。

             __________________

 しばらくすると、鑑定士さんがやってきた。鑑定士さんは、ドアを開けた瞬間、

「なんじゃこりゃあ!」

 と大声を上げた。その後は独壇場。

「素晴らしい!これだけのオーガの素材があるなんて!両腕両足が20本ずつ!胴体も頭も20個ずつ!しかもそのうちの3つなんか傷一つない!おお!これは、これは!まさかオーガの金棒ではありませんか!しかも20本!凄い!凄すぎるううううう!」

 俺、ドン引き。レイラとミリアは慣れているようで、あまり動じていないが、いつもより激しいみたいでちょっと顔がこわばっている。

「しかし、何でこれだけの量を運び込めたのですか?」

 鑑定士さんが冷静になり、俺たちに質問をしてくる。

「ああ、それですか?俺の魔法ですよ。ちょいと見てて下さいね。」

 俺はそういって皆を下がらせると、目の前に並ぶ大量の素材に手を向けて、

「それっ!」

 掛け声一つで全部を目の前から消し去った。

「おおうっ!」

 鑑定士さんがのけ反る。

「よいしょっ!」

 俺はまた掛け声一つで今度はもとの状態に戻す。

「わあああっ!」

 鑑定士さんは腰を抜かす。窓口のお姉さん(試験の時とは違う人)も目を真ん丸にして固まっている。

「こんな風にしてきました。これは自分の所有物なら消滅と出現をそれなりに自由にできる魔法です。」

 俺は鑑定士さんに笑顔を向けて説明する。

「イメージとしては、この部屋みたいに魔法の部屋みたいな空間があって、そこにものを出し入れする感じですかね。」

 猫型ロボットのポケットのようなイメージを思い浮かべてほしいが、こっちの世界にそんなアニメは無いので、ちょっと説明が分かりにくいかも。

「魔法の事は分かりませんが、とにかく査定金額を発表します。」

 鑑定士さんがやっとそれっぽくなる。

「では、これらの買い取りで、金貨50枚など、どうでしょうか?」

「「金貨50枚!?」」

 鑑定士さんの告げた結果に二人は大声を上げて驚く。俺はそれを聞いて、ああ、あの2人は怒っているんだなと思った。だってこれだけあって金貨50枚、つまり50万何て馬鹿げてる。

「ちょっと安すぎませんかね?」

 俺は鑑定士さんに文句を言う。鑑定士さんは驚きに目を丸くしている。

「この角なんかはいい薬にも装飾品にもなるんでしょう?無傷のもそれなりにあるし、何よりもこの大きな金棒が20本ですよ?このまま使っても棘があって充分強いし、溶かせば他の素材にもなる、しかも量も多い。それに、これって重すぎてほとんど持って帰れないそうじゃないですか。貴重なものがこんなにあるのにそれは安いですね。」

 鑑定士さんは言葉に詰まるが、何とか立て直した。

「む、むう、分かった。では60枚でどうかね?」

 おお、一気に1・2倍か。それなりに良心的だが、それだけの量を儲けようとしたと逆に考えられる。そう考えるともうちょっとふんだくろう。

「もう一声。」

 突き放すように。

「う、ううっ、わ、分かった!65枚!」

「よし、いいでしょう。」

 俺はそう頷いてこの場を終わらせる。2人とお姉さんはポカーンとしている。ギルドでの交渉ってあまりいないのだろうか?

             __________________

 金貨65枚が入った袋を貰い、ストレージでしまってから宿に向かう。2人の部屋に着くと、ミリアが深い深いため息を吐く。

「アカツキ、あんたって存外鬼ね。」

「ん?俺がなんかしたっけ?」

「さっきの交渉よ。」

「ああ、あれか。お前らだってあの安さに怒って驚いてたじゃんか。」

「……?へ?」

「何言ってんの?」

 2人がきょとんと俺を見る。

「だ、だって50枚って言われたとき2人とも大声出してたよな?」

「違いますよ。あれはむしろ多いと思って驚いたんです。」

 レイラがきょとんと説明する。

「「「えーと……。」」」


 その後、俺たちは何とか結論にたどり着いた。結果は、俺が間違ってた。金貨は1枚で10万円ほどの価値らしい。金貨1枚は銀貨100枚分だそうだ。つまり、神様は俺に1ケタ間違えて教えてた。金貨に限って。ちなみに、銅貨と銀貨の説明は合ってた。つまり、俺が貰ったのは65万でなく650万。気まずい話し合いの結果、貰ったもんはしかたない、ということでありがたく頂戴することにした。

「あ、レベル計り忘れた。」

 ミリアがそう呟いた時、空はもう夕焼けに染まってた。

話しが進まない……。

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