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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
9章 三つの大地(ワーム・ゴーレム・ナイト)
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ラペットへ

「ううん、湖を横断できないとやっぱ時間がかかるな。」

 俺は御者台の上で地図とにらめっこしながらぼやいた。

「コンドゥクト湖はとても大きいので、橋を架けようにも架けられないんですよね。」

 レイラが馬車の中から、俺のぼやきに対してそう言った。

「川沿いと湖の北側に魔族の進行を防ぐための砦を作るので精いっぱいだものね。」

 ミリアが馬車の横を歩きながら、湖の向こう、北側を見る。その視線の先には、うっすらと、見えるか見えないかぐらいに大きな壁のようなものが長く続いているのが見えた。

 この大陸の北側にあるストリーグスは魔族の住処だ。虎視眈々と人間の領土を狙い、滅ぼそうとする魔族。それに抵抗すべく、ああして砦を作ったのだ。なんでも、何千年も前にいた勇者の発案だそうで、魔王を封印し、魔族の力が弱まった隙にすべての国が総力をあげて作ったらしい。それでも、ドラミの時みたいに潜入や侵入をされたり、ついこの間のサクソーフのように忍び込まれていたりするのだから、魔族の恐ろしさが分かるだろう。

「やれやれ、ブラース帝国まで数日、当面の目的地までようやく半分、と言ったところかな。」

 俺は北側の砦をぼんやりと見ながら呟いた。

 俺たちは今、再びパーカシス王国に帰ってきていた。といっても湖沿いに通過するだけで、これと言って目的があるわけではない。

「……。」

 ふと、クロロが何かを考えているようにぼーっとしているのに気付いた。

「どうした、クロロ。何か考え事か?」

 俺は後ろを振り返ってクロロに話しかける。

「ん?ああ、ごめん。ちょっとね。ブラース帝国には、ちょっと嫌な思い出があってね。」

 クロロははっとしたあと、苦笑いを作りながらそう言ってきた。

「あら?クロロってブラース帝国に行ったことがあるの?」

 ミリアはクロロの方を向いてそう問いかけた。

「……あれ?言ってなかったっけ?」

 クロロはそれを聞いて、ミリアを目を丸くしながら見た。

「僕はブラース帝国出身だよ。」

「「「……。」」」

 クロロがきょとんとそう言うと、俺たちはクロロを見て沈黙してしまった。

 ……考えてみれば、クロロの出身地は聞いたことがなかった。なんというか、勝手にパーカシス王国のどこかだと思い込んでいたのだろう。出会った場所もそうだし、レイラとミリアがそうだっただけに、そう言った刷り込みが強かったのだろう。

「うーん、そう言えば言ってなかったっけな?あれ?……まぁいいや。とにかく、そういう事。」

 クロロはのほほんとしながら独り言を言ったのち、そういって俺たちに説明をした。

「……そうだったんですか。あ、それじゃあ、何かお話してくださいませんか?」

 真っ先に復活したのはレイラだった。

「あー、僕があの国を出たのは10歳ぐらいだったかな。ずっと同じ村に住んでいたから、正直あまり思い出と言える思い出はないかな。他の国に比べてみると、パンが美味しかったかな」

 クロロは少し悩んだそぶりを見せたのち、そう言った。確かに、あの国はパン作りが盛んだった気がする。

「んー、後は幼馴染との思い出が印象深いけど……いやぁ、あれは怖かったなぁ。」

 クロロはそう言ったのち、何か嫌な事を思い出したのか、自分の身体を抱いて1回身震いをした。若干顔色が悪い。

「……イフリートの炎に対して勇敢に躍り出たクロロがビビる思い出って……。」

 俺はその様子を見ながらぼそりと呟いた。

「いやぁ、身の危険的な意味では当然イフリートの方が怖かったよ。でもね、幼馴染みは、初めはまともだったけど……関わっていくうちにおかしくなっちゃってね。」

 クロロは、明らかに顔色を悪くしながら、作り笑顔でそう言った。何だか、明らかに動揺しているし、かなり嫌な思い出だったのだろう。

「「……。」」

 レイラとミリアは触れてはいけないと思ったのか、神妙な顔で口をつぐんでいる。

「そうなのか。あ、そう言えばさ……」

 俺はその様子を見てこの話はやめようと考え、多少わざとらしくはあるが話題を変えた。

             __________________

 数日後、特別パスを使って悠々とブラース帝国に入った。

 この国は、他の2つと違って帝国であり、元首は皇帝だ。また、国の戦力は、他では騎士と呼ぶが、この国では『軍団』と呼ぶ。他の国も大概だが、この国はさらに実力主義の面が強く、また、ストリーグスに面しているせいか軍団の質がとても高い。ウドウィンもストリーグスに面しているが、この国はウドウィンの騎士よりも強い軍団を持っている。

 その軍団の頂点に位置するのが、軍団長だ。現在の軍団長は、SSランク持ちの英雄である。アキレウスさん同様、数百の魔族を単身で撃退したのだ。

「さて、ここから1週間ほどのところにある『ラペット』を目指すとするか。」

 当然、1週間というのはクリム換算だ。普通ならその何倍かかるだろうか。

 ラペットは、この大陸の西端にある『砂漠』に行くのにぴったりな場所だ。渓谷から見たエフルテみたいなものである。当然栄えていて、街並みはエフルテのようなものを想像すれば大体あっているだろうとは思う。この目で見てないから何とも言えないけどな。

短い上に中途半端ですみません。時間が取れなかったんです。主に読書で。

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