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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
1章 異世界への旅立ち(ラプソディー・オーバーチュア)
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初クエスト

 朝飯を食べながらの談笑の中で、今日は何をする予定なのか、という話題になった。

「私たちは適当なクエストを受けて、それをやるつもりです。」

「アカツキはどうすんの?」

 2人はトーストを齧りながら聞いてくる。そうか、それを考えてなかったな。

「ん~、俺も適当にクエスト受けようかな。でも、昨日登録したばっかで今一つ勝手が分からんな。」

 困った。俺はハムエッグの白身を崩しながら曖昧な答えを返す。

「あ、それだったら折角だしあたしたちとパーティー組もうよ!魔法使いと戦士と弓使いでバランスもいいし!」

「あ、それいいね。アカツキさん、私達はもうなってから1年たっていて、ある程度勝手がわかるので悪い話ではないと思いますよ。」

「おお!そいつは嬉しい提案だ!是非仲間に入れてくれ!」

「ん、おっけ~。」

 これで俺たちがパーティーを組むのが決定した。

「ランクによってクエストが違いますが、アカツキさんはランクは何ですか?」

 レイラがそんなことを聞いてくる。

「俺?昨日の試験でAランクって言われた。」

「「Aランク!?」」

「ちょっ、声が大きいって。」

 2人は驚くと大きな声を出す癖があるようだ。今回はレイラも我慢できなかったようだな。周りは俺たちの会話を聞いてひそひそ言い合っている。

「おい、きいたか?あの男、Aランクだってよ。」

「まじか。そういえばあの男って確か昨日、今朝殺された4人組のうち2人を相手に余裕であしらってたな。」

「ああ!あの話か。俺も見たかったな~。」

 迷惑にはなってないようだからまだマシだが、

「あまり目立ちたくないんだ。勘弁してくれよ……。」

 俺は2人に手を合わせてお願いする。

「す、すみません……。」

「ご、ごめん……。」

 2人は冷静になったようだ。

             __________________

 朝飯を終えると、いったん2人の部屋にて作戦会議があった。という名の仕事前の雑談だが。

「Aランクっていったらこの街だとライナーさんとルドルフさんしかいないわよ。」

 ふっとミリアがそう漏らす。

「あ~、登録の試験の時だよね。ライナーさんとしか試験の種類の都合で戦えなかったけど強かったね。今でもものの数秒でやられちゃうかも。」

 レイラもそれに賛同する。マジかよ、あの2人ってそんなに凄かったんだ。手ごたえがあまりなかったけど。

「アカツキも、やっぱり苦戦した?」

 ミリアが俺に振ってくる。やばいどうしよう。手加減して余裕でした、なんて言えない。

「あ、ああ、そ、そうだったな。いやぁ~あれは何というか速かったよな。」

 俺はしどろもどろになりながらもなんとか答える。

「やっぱそうですよね。あの人はとても強いですが、その中でも速さはぴか一なんですよ。」

 そ、そうなんだ。知らなかった。うん。

 ちなみに、レイラは俺には敬語、ミリアとは幼馴染の様で、普通の言葉で話す。うんうん、仲がいいっていいな。俺もこっちでたくさん仲間を作らなきゃな。とりあえず、この2人は初めての仲間だ。大事にしなければ。

「さ、そろそろ出かけようぜ。何かいいクエストがあるといいけどな。」

 俺は腰を上げながら2人を促した。

             __________________

 ギルドへの道程で、受けられるクエストについての講義を2人からうけた。

 どうやら、パーティーの場合は、パーティーメンバーの中で多数のランクまでが受けられる。例えば、C2人、D1人、B1人だったらCランクまで。最多数が同数だった場合は、高い方に合わせられる。

 つまり、Sランク1人とEランク1人だったらSランクの依頼が受けられるのだ。これについては歪な制度だとは思うが、まぁ、『自己責任』というやつだろう。

 ちなみに、ランクはクエストの成果などによっては上がる場合があるらしい。他にも特殊クエストという、全てのランクの人が受けられるのもあるという。

 Cランクのクエストでは、こんなのがあった。

・『オーガ』の討伐10体

・荒野の山の方の『生態調査』

・『ビッグスライム』の討伐20体

 と言った感じ。オーガとは鬼の西洋版で、ビッグスライムは、Eランクでも倒せる下級モンスターの『スライム』が合体しすぎたものらしい。ちなみに某国民的RPGのようでなく、緑色で本物のスライムのようらしい。

「どれにしよっか?個人的に俺はオーガにいきたい。」

「あ、じゃあそれでいいのでは?」

「はい、けって~い。」

 俺たちの適当な相談の締めにミリアがぴっ、と掲示板から依頼書を取り、窓口に持っていく。なにやら話した後、こっちに戻ってくる。

「行けるってさ。じゃあ出発!」

「「おー!」」

 俺のクエスト初挑戦が始まった。

             __________________

 といってもどこにオーガがいるのか。それはというと、街から歩いて2時間ほどのところに木がうっそうと茂っている山があり、そこに生息しているそうだ。この場所は知らなかったな。俺が送られた場所からは丁度街を挟んで反対側だ。ちなみに、あるいていくのは時間がかかりすぎるので、山のふもとにあるベースキャンプまで行くという商人の馬車に乗せてもらっている。途中まで護衛するという条件で。

 結果的に途中で問題もなく、1時間ほどで山のふもとに着いた。

「さて、初めての実戦か。市場で買ったあれの効果も試したいしな。」

 俺は何気なく呟く。

「市場で買ったってあの青色のカード100枚のこと?」

 その言葉にミリアが耳ざとく反応する。

「ああ、そうだ。」

「そんなの、何に使うんですか?」

 レイラも不思議そうだ。

「何、見てろって。面白いものを見せてやろう。」

 俺はそう言い放つと、にやりと笑った。

             __________________

 山に入って10分ほど。オーガ3体の集団と合流した。肌の色は灰色で、全員3mはある。筋骨隆々で全身いかめしく、1・3mはある太い棘付きの金棒を全員持っている。身に着けているのは腰に襤褸布1枚を風呂の中のタオルのように巻いているだけ。

「いたよ!オーガは強いから各個撃破ね!」

 物陰に潜みながらミリアが指示を飛ばす。レイラも異存がないようで頷いた。てことはそれが正攻法なのだろう。しかし俺は、

「いや、ちょっと試したいことがある。」

 といって止めて、ストレージで手のひらに100枚のうち10枚くらいを取り出す。

「な、何をするの?まさかさっきの面白いもの?」

 勢いをそがれたミリアが口をとがらせながら問いかけてくる。

「ま、そんなところ。」

 俺はそういいながら、カードを3枚投げる。狙うのはオーガの1番近くにある3本の木。そこにシュカッ、と上手く刺さる。俺は、そのあとちょっと念じる。すると、カードが刺さった木の枝がするするするとありえない速度で成長する。向かう先は3体のオーガ。1本につき1体だ。

「うがっ!うががっ!」

「ウグエ!ウゴゴゴ!」

「ガガガガ!」

 伸びた枝はそれとともに太さも増しながら進んでいき、オーガの首に強く巻きつく。そのまま枝は上に成長し、オーガをなすすべもなく締め上げる。オーガは悲鳴を上げながら一生懸命抵抗するが、2分後くらいには、だらりと全身の力が抜けたようになった。

 今のは、五行思想の利用だ。木を象徴する青いカードを木に接触させ、成長と移動を操る。まあ基本だが、周りに木が沢山あって、奇襲が仕掛けられるこの状況ならこんな風に使える。

「う、うわぁ……。」

「……。」

 今の光景は2人には刺激が強すぎたみたいで、レイラなんかは言葉も出ないくらいだ。

「確か、素材は傷がないほどよく売れるんだよな?」

 俺は2人の様子に気づかないふりをして確認する。討伐クエストは証拠として、どこかの部位を切り取って持っていく。その部位は、武器の素材や道具、場合によっては薬なんかにもなる。よって、それらを持って帰れば報酬に加え臨時収入もある。

 俺が今回選択した方法は、なるべく外傷をつけずに殺す方法だった。

 俺はオーガの死体を解体すべく、3体のオーガがぶら下がっているところに向かう。

「まったく、よくあんな方法思いつくわね。」

「ちょ、ちょっと怖かったです……。」

 2人はそういいながらも俺についてきた。

「どこの部分を証拠として持って帰る?」

 目の前にぶら下がるものを見ながら2人に質問をする。

「角とかがポピュラーですね。武器や装飾品に転用できます。」

 レイラが即座に答えてくれる。へぇ、これがねぇ。

「じゃ、証拠品は角で決定だな。この金棒とか役に立ちそうだけど持って帰るか?」

 俺は転がっている3つの金棒を指さす。素材は余計にもって帰ればそれも売れる。

「そんなの、どうやって運ぶのよ?言っとくけど角だけでも10体分持って帰ると骨が折れるわよ?」

 ミリアがそんなことを聞いてくる。あ、忘れてた。この魔術はこっちでは他の人は使えないんだよな。

「こうやってさ。」

 俺はストレージを発動して金棒3つを消して見せる。そして、その後にまた出現させる。

「え!?ちょ、どうやってるんですか!?」

 レイラが驚きながら質問してくれる。ちなみにミリアは驚きで顎が落ちそうなくらい口を開いて固まっている。

「まじゅ……魔法だよ。自分のものなら多少の制限はあれど消滅と出現が自由にできるんだ。俺しか使える人は見たことないけど。」

 2人に嘘を交えながら説明する。魔術じゃなくて魔法と言う事にしておけばいいや。

「も、もうアカツキの事については驚くのをやめるわ……。」

 復活したミリアがそんなことをいう。む、失礼な。

「それなら、もしかして全部持って帰れるのでは?」

 レイラはいち早く冷静になり、そんな提案をしてくる。

「そういうこと。といっても1つのものなら大きさの制限があるから、解体してやらなきゃな。」

 俺はそういってストレージでカードと一緒に買った解体用ナイフを取り出す。

「それもそうね。」

「では、始めましょうか。」

 2人も懐からナイフを取り出した。

 その後、俺たちは魔術を解いて下したオーガを解体し、俺はそれらをストレージに収めた。

             __________________

 解体しながらの相談で、このままだと俺だけで全部終わってしまう、とのことなので、残りは2人に任せることにした。俺は後方支援。

 2人は、それなりに強かった。Cランクというのが信じられないくらいだ。Bはいってるだろうと俺は思った。

 ミリアは、とても戦況の見極めがうまく、オーガの攻撃を右に左に躱しながら華麗に攻撃していく。数回切れば致命傷にもってけるくらいの威力と腕力もある。剣もそれなりにいいものだ。

 レイラは、俺の右からミリアを支援するように弓で矢を放っている。威力もそこそこだが、何よりもコントロールがいい。上手いタイミングでオーガに攻撃をあて、隙を作り出している。

  ちなみにオーガを多く倒せているのは、なんとレイラだ。矢の一発で目や心臓と言った急所を貫く。これは、2人とも絶対Cじゃない。昨日のライナーさんほどではないけど、Bランク相当はありそうだな。基準は昨日のマッチョ。

 ちなみに俺はさっき使ったカードを回収して再利用しながらの援助。根っこを伸ばして転ばせたり、枝から延びる葉っぱで視界を隠したり。

 結果的に俺たちは、今日1日で20体のオーガを狩った。当然、素材は全部回収済み。

今回もちょっと長めです。

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