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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
9章 三つの大地(ワーム・ゴーレム・ナイト)
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褒美

 やっと体調が回復した。3日間、ほぼ寝たきり生活なのは本当につらかったよ。

 俺が体調を回復したことで、今日はパーカシス王国でもやった感謝の儀をやるらしい。あらかじめ欲しい物を聞かれていたので、それらが用意されていることだろう。

 そんなわけで、今から城へとお出かけである。一部の武具はある事情により装備していかず、こ綺麗な私服だ。

「しっかしまぁ……大げさなお出迎えですこと」

 俺は宿を出て早々に外の光景を見てため息をついた。

『お待ちしておりました!それでは王城へご案内いたします!』

 騎士が10人ぐらい待ち構えていやがった。後ろのレイラたちもドン引きである。

「「「……」」」

 ポカーンと口を開けて固まってしまっている。

「ささ、目だっているからとっとと行こうぜ」

 俺は3人を促して騎士たちの後ろに着いた。

             __________________

 長い長い前口上とセレモニーを終え、やっとご褒美タイムへと移った。もうね、『感謝する』とか『あなたは英雄だ云々』とか聞きたくもないね。何ってここ数日ずっと言われ続けてきたからだ。初めは嬉しかったけど後半は疲れてくる。

 パーカシス王国での反省を活かし、事前に『詮索無用。好奇心は猫をも殺す。あと勧誘もダメ』と言っておいたので、余計な質問などはなかった。

「まずは大量の特別製砥石だったな」

 王様が言ったのは、ミリアとクロロの剣を調整するための砥石だ。騎士4人が全員、大きな袋を持ってきて、俺たちに手渡した。この中身だけで一生のうちに使いきれるかどうかの量だ。高級砥石をここまで用意できるとは、さすが国家だな。

「次に、特別パス4人分か」

 これは国境での面倒を避けるために貰ったものだ。見せるだけでなんの詮索等々をされずにスルー出来るものだ。これはこの国に来た時の反省を活かした形だ。これって王族や騎士団長クラスじゃないと貰えないんだよね。

「次に各々の装備か」

 王様はリストを見て、そう呟いた。

 そう、俺たちは今一部の武具を装備していないのは、国に預けていたからだ。出来る限りの効果付与や強化を無料でやって貰おうと言うことである。自分で言うのも何だが、俺たちは救国の英雄だ。これぐらいのわがままは許してほしい。というか許せ。

 まず、俺の闇夜ノワールについて。これには付与できるかぎりは付与してあったのだが、どうも使っているうちに新しい効果を付与できるようになっていた。効果は『メタモルフォーゼ』。某プリティでキュアキュアな少女たちとは違う。簡単に言うと、人狼どもの劣化版能力だ。この服を着てから殺した相手に化けることが出来る能力だ。人狼どもは攫うだけでも化けれたが、こっちは殺さないといけないそうだ。しかも、この効果が付く前に殺していた場合は無効だそうだ。

 次にレイラの『ラピッド』だ。これのかかと部分に、タクト川に住むAランクの中でも上級に値する凶悪な魚の魔物、『ジェットソード』の背びれを2枚ずつ、羽のようにつけたのだ。ジェットソードは口の先端が槍のようになっていて、それで獲物を突き刺す魔物だ。その際に、背びれから大量の水を出してジェットのように加速して刺すのだ。鋼鉄の板をやすやすと貫通するレベルだ。そんな魔物の背びれをあのようにつけることで、魔力を流せば水が噴き出してより加速するそうだ。

 次にミリアの双剣だ。これにもまだ進化の余地があったのである。『ライトニング』ついては、技術が漏れるから渡すのを心配していたが、ウェントスが『あの仕組みを理解できる奴はおらへんやろ』と言っていたので素直に渡した。雷の能力を俺が『ライトニング』に付与した際に、実はウェントスがこっそりあの中にある結晶をいじっていたそうだ。あの時はその場のノリで雷を落としてみたが、普通に考えたらあれで能力が付くわけがない。曰く、『結晶の中にある風の魔力を限りなくアカツキと近くしたんやで』だそうな。

 つまり、あれを理解できる者はいないだろう、ということで素直に渡したのだ。予め渡す時にたっぷり脅しておいたので、余計な転用もされないだろう。

 さて、どんな効果が付いたのかというと、それは『リターン』だ。その装備が、使用者にそれはそれはもう深く馴染むと、この効果を付与できるようになる。手から離れても念じれば戻ってくる、という効果だ。ミリア曰く「剣は戦士の魂」だそうで、この効果が付くのはとても自慢できることらしい。

 最後にクロロの剣。これにはよりミスリルを多くコーティングして、大きくしてもらった。効果こそ付与できなかったものの、クロロにとってこの剣は軽すぎるのだ。よって、ミスリルの中でも、騎士団長クラスの装備に使われるような最高級のミスリルをコーティングして貰った。この注文をした時にきた騎士が、俺とアキレウスさんを説教したあの魔法使いだったのだが、この注文を聞いて涙目になっていた。

 装備を受け取り終わると、最後に人狼数万匹分の硬貨を受け取った。当然聖金貨で、数は数えるのがめんどくさかったので分からない。

 これでやっと感謝の儀が終わり、解散となった。パーカシス王国の時と比べてやけに淡白だが、これは俺たちが堅苦しいのが嫌いだからである。パーカシス王国の王様は割と気さくな人だったが、この人は中々堅い人だったので息がつまりそうだったのだ。

 この後、俺たちはすぐにこの街を出る。目的地は『ブラース帝国』だ。凱旋や見送りもすべて断って、俺たちは城を出た。しかし、

「ちょっと待て。君達に渡すものがある。」

 城門のところでアキレウスさんに止められたのだ。渡されたものは風をかたどった王家の紋章がかたどられている4枚のミスリル硬貨。俺たち4人の名前がそれぞれ書いてある。

「パーカシス王国のも持っているだろうから意味は分かるだろう?きっと、これは君たちの役に立つだろう」

「ありがとうございます」

 多くの言葉は不要だ。俺はそう簡単にお礼をして、また進んでいく。

「また会おう、SSランクの英雄、アカツキよ。」

「……ええ、また」

 俺たちは、それだけ言葉を交わして別れた。

つらつら描写しても仕方ないのでばっさり細かい部分を省きました。

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