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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
8章 死をもたらす牙(バイト・シザーズ)
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騎士団長

『ええええええっ!?』

 俺の言葉にいきなり魔法使いたちは目を見開いて驚きを露わにした。

「き、き、き、騎士団長様とですか!?正気ですか!?」

 魔法使いは正気を疑っているようだ。

「正気ですよ。せっかくいらっしゃるんですし、手合せしてみたいじゃないですか。」

 俺はにこやかにそう言った。

「で、で、でも……そんなことを騎士団長様にさせるわけには……。」

 明らかに狼狽している。確かに、『普通なら』そんなことさせるわけにはいかないだろうな。

「では、俺が本気を出したとして、他の方で相手出来ますか?」

 俺はそう問いかけてみる。すると、

『……。』

 全員沈黙してしまった。

「どうせ手合せするなら、騎士団長とやってみたいんですよ。他だと楽勝すぎますんで。」

 俺はあえて、不遜に言い放つ。先ほどのあれを見ればこの、本来は笑われそうな言葉も効果覿面だろう。

「で、でも!やはりそんなことをするわけには……!」

 なおも食い下がってくる。しかし、

「やめないか、見苦しい。」

 その言葉を、横から遮る声が響いた。腹の底に響くような、威厳のある低音。そしてこの威圧感、間違いなく……

「私は構わんぞ。……先ほどの膨大な魔力は君かな?」

 騎士団長、アキレウス・パガニーニさんだ。その登場に、魔法使いたちは顔が真っ青だ。対する俺は、

「ええ、そうです。……お手合わせ願えますか?」

 と強気の笑みでそう言った。

「ふふ、面白いことになりそうだ。」

 アキレウスさんは、そういって笑った。

             __________________

 その頃、見学席では。

「相変わらず無茶しますね、アカツキさん。」

「とかいって心配はこれっぽっちもしてないでしょ?」

「まぁ、そうなるよね。」

 3人は苦笑しながらそんな会話を交わしていた。

「SSランク同士の対決かぁ……どっちが勝つと思う?」

 クロロが2人にそう問いかける。といっても、ルールは知らないのでまだ何とも言えないのはお互いの承知だ。

「アカツキさんです。」

「団長の勝ち、かしらね。アカツキは無茶やらかして反則負けよ。」

 だが、2人はあえて答える。ちなみに、クロロを含めた3人とも、暁が普通に負けることがないのは分かっている。ただ、

「ミリア、それ結構あり得るかも……。」

「ああ……確かにそうだね。」

「でしょ?」

 3人とも、暁が無茶をして反則負けになる可能性は考えていた。

             __________________

 俺はアキレウスさんに先導されて実戦訓練のステージへと向かっている。

 さて、ここで何故俺があそこまでしてアキレウスさんと勝負をしたかったのか。普段の俺なら、戦ってみたいとは思う事はあるだろうが、実行には移さないだろう。

 その理由は、この魔法使い隊の訓練所に来るまでの会話にあった。

「アカツキさんと団長様の戦い、楽しみですね。」

「そうよね。アカツキ、期待しているわよ!」

「僕も応援するよ!」

 と3人が言っていたのだ。こりゃあもう、やって見せるしかないだろう。あの3人は基本的に俺に何かを頼むことは少ない。そんな中、こうして言ってくれたのだ。そんな願いくらい、叶えてやりたい。

 とまあ、傍から見れば割としょうもない理由だ。

「君が話に聞くSSランクか。火龍を従え、『ディスペル』を筆頭に様々な魔法を開発し、パーカシス王国を救った立役者。その年にしてとんでもない功績だ。」

 向かっている途中でアキレウスさんが話しかけてきた。あの会議では正式な場だったため、敬語だったが、普段の話し方はこれらしい。

「お褒めにあずかり光栄です。仲間に助けられた部分もかなり多いですがね。」

 俺はすべてを否定しなかった。騎士団長レベルになると他国の国家機密も入ってくるのだろう。SSランクであることと、その過程を知られているのはちょっとびっくりしたが、まぁいいだろう。

「さすがに詳しいことは知らないが、私も油断してられんかもな。」

 俺の返答に、アキレウスさんは真剣な口調でそう漏らした。

 とかなんとかやっているうちに、ステージに着いた。体育館ほどの広さだ。そこには、とんでもない数の魔法使いが一生懸命ある魔法を使っていた。

「私たちが戦うと規模が洒落にならぬからな。今から魔法使いが総出だよ。」

 そう、そのステージを囲むように、城の魔法使いが総出で『防御魔法』をかけている。見た目は透明な『プロテクト』や無属性上級魔法『ウォール』、それと風属性上級魔法『ハイパーウィンドウォール』を使って一生懸命『内側から』の干渉を防いでいる。

「確かに、俺たちが魔法を打ち合うと危険極まりないですね。」

 俺は苦笑しながらその光景を見る。あ、『サークレッド』の効果の一部である『不干渉領域』まで使ってる。あれは、サークレッドの領域の中なら内側からも外側からも結構なレベルまでの干渉を防げる効果だ。城や高等貴族の屋敷、その他重要な施設に使われているが、べらぼうに魔力を消費するため、あくまで拠点防衛のみにしか上手く使えない。

 俺とアキレウスさんは中に入り、それぞれ両端に着く。あ、レイラたちが最前列まで来て手を振ってくれてる。俺は笑顔でそれに手を振りかえす。

「さてさて、お楽しみと行こうか。」

 俺は準備運動をしながら呟く。ところで……アキレウスさんのあのローブ、もしかして訓練用じゃなくて実戦用じゃないか?いつのまに着替えたのだろう。あれにも尋常じゃない魔法効果が色々つきまくっている。使っている糸がそれぞれの竜の成体の髭や鬣や筋肉繊維や血管。色々なものを織り込んだ逸品にして一品だ。白金貨では到底買えず、俺たちが持っている聖金貨を総出にしても買えないだろうというレベルだ。

「……アキレウスさん、さすがにそれは反則では?」

 俺はジト目でアキレウスさんを見る。

「君ならこれくらい貫けるだろう?」

 対するアキレウスさんは飄々としている。

 そんなやりとりをしているうちに審判役の人が入ってきてルールを説明してくれた。

 内容は簡単。このフィールド内でひたすら戦う。フィールドを覆う何重もの壁を貫いてしまった方が負け、相手を殺してしまっても負け、それ以外は何をしてもいい。なんというか、破天荒なルールだ。

「そ、それでは外側から合図を出しますので、それから始めてくださいね。」

 ビビり気味の審判役はそう言い残すと、一目散に外側に走っていった。

「……これは再教育が必要だな。」

 アキレウスさんがそれを見て恐ろしいことを言ったが、俺には関係のないことだ。

 審判役が旗を降ろした瞬間がスタートだ。

 お互いににらみ合う。そんな緊張感は、

「「っ!」」


 旗が振り下ろされた瞬間に弾けとんだ。

ひっぱってすみません。長くなりそうだったもので。

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