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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
8章 死をもたらす牙(バイト・シザーズ)
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首都へ

 親子3人を無事エフルテに送り届け、ギルドに依頼の終了と顛末を報告し、報酬を貰いに行った。その後、また親子3人と合流した。別にいらないのだが、お礼がしたいそうだ。貰えるものは嫌なもの以外は貰っておくタイプなので、何を貰えるかわからないが会いに行ったのだ。

「これは僕たちからのお礼です。助けていただき本当にありがとうございました。」

 と渡されたのは首都でそこそこ高級な宿への紹介状だ。何でも、商人仲間が経営しているようである。結構仲が良いようで、紹介状を見せれば宿泊費やサービスなどが全部タダになるらしい。他にも、彼らが商人として取り扱っている高級肉の塊を貰った。どうやら、結構儲けている商人らしい。だから思い立ったらすぐに引っ越しが出来るのかもな。だったら個人的に護衛を雇えと突っ込みたかったが、そこはいろいろ事情があるのだろう。

 また、彼らはもうここに移住することが決定したようだ。街の雰囲気が気に入ったらしい。何日か滞在したらまた首都に戻って引っ越しの準備を始めるのだろう。

 その後、彼らの奢りで晩飯をご馳走して貰い(お礼の一環だ)、その後明日からの旅に備えてすぐに宿に戻り寝た。明日はクロロが頼んだ装備を引き取ってからの出発だ。

             __________________

 翌朝、俺たちは朝飯を食べるとすぐにスキンブルに向かった。とはいっても道中でクロロが代用品として買っていた玉鋼の装備一式は売り払った。

「おう、お前らか。鎧と脛当ては出来てるぞ。」

 店主はそう言って奥に行き、しばらくして神秘的に輝く銀色の鎧と脛当てを持ってきた。クロロから聞いたが、どうやら白金貨150枚だったらしい。何でも、鎧にも脛当てにも全部の『属性耐性』と『軽量化』、それと『防御アップ大』を付与し、さらに鎧には『魔力アップ』というとても珍しい効果を付与したそうだ。超高純度かつ魔力を多く含むミスリルでないと付与できない効果らしく、俺たちが付けている魔法手袋マギア・グローブやレイラの『インフロウ』と同じように、これに魔力を通すとより魔力が強くなるそうだ。ミリアやクロロの剣にも使われており、中の超高純度の結晶と相まってとてつもない効果を発揮する。

「で、結局首都には行くことにしたのか?」

 店主が俺に問いかけてきた。

「ええ、多少危険そうですけど行こうと思います。」

 俺はそう返事をした。

「そうか。まぁお前らなら大丈夫だろ。楽しんでこいよ!」

「ありがとうございました。」

 俺たちはそんな会話を交わして店から出た。

             __________________

 その後、俺たちはクリムを迎えに行き、首都サキソーフへと出発した。普通の馬車なら西に向かって2週間弱ほどで着くそうだ。クリムだと何日で着くだろうか。ちょっと楽しみだ。

「うーん、それにしてもエフルテには大分長い間いましたね。」

 レイラが何かを思い出すように空中をぼーっと見つめながら呟いた。

「結構居心地良かったからよね。思えば結構お世話になっったわね。」

 ミリアがレイラの言葉に反応する。

「冒険者もランクが高い人が集まるからいい人ばかりだったし、街も活気があったからね。」

 クロロもゆったりと座って話に加わる。

「思えばいろんなことがあったな。」

 俺はそう呟いて色々なことを思い出す。街についてからのことを思い出す。渓谷に行く前日のニコラスさんたちとの出会い、渓谷でのウェントスとの出会い、ニコラスさんたちと協力しての調査。そして一番大きな出来事であったイフリートを筆頭にした魔物と魔族の大規模な襲撃。ここで俺たちの絆はより深まり、ミリアも吹っ切れ、より強くなった。さらに、ミリアには『疾風迅雷グラディウスデュオ』という称号が与えられた。その後の争奪戦でのあれこれや、スキンブルでの会話。全部数日前の事だが、もう思い出となってしまっている。

「つい、長居してしまったな……。」

 俺はエフルテの方向を見て感慨深く呟く。

「そういえば今更だけど、アカツキって生物を殺すのに躊躇しないよね。アカツキの故郷でそういった仕事をしていたとは聞いているけど、どうしてそこまで吹っ切れたんだい?」

 クロロがいきなりそんな質問をしてきた。これはまた随分と踏み込んだ質問だ。3人とも俺の現状を知ってから踏み込んだ質問はしてこなくなった。気を遣ってくれてたのだろう。こうして踏み込んだ質問をしてくるってことはそれだけ深い間柄になったってことかもな。つーか、

「その話って前にしなかったっけ?」

 俺はそんな疑問を口にする。

「それはまだクロロさんが仲間になっていないころに聞いたお話ですよ。」

「クロロはまだ聞いていないわね。考えてみればあのころのあたしたちのなんと未熟なことか。」

 レイラとミリアが懐かしむようにそう俺に言ってきた。確かに、ミリアの言うとおりあのときの2人は未熟だっただろう。冒険者でCランクになっていたなら色々な生物を殺してきただろうに、ああして目の前で自分が何もできない状態で虐殺を見て怯えるなんて矛盾もいいところだ。まぁ、おかげであの後俺もいろいろ吹っ切れたりしたからいいけど。異世界に来て初めて仲良くなった相手にあんな態度取られちゃあ俺もまだ未熟者だったから堪えたなぁ。

 俺はそんなことを思い出しながら、あの鬼退治の帰りの馬車でレイラとミリアに話したことをクロロにも話す。 

 こうして話しながら、もう1つ実感することがある。それは、今の俺の状態。すっかり、この3人とは仲良くなってしまっている。恐らく、3人を失ったら俺は『暴走』する。すっかり『依存』してしまった。

「それはまた……大変だったんだね。」

 クロロが神妙な顔で俺の話にそう感想を述べた。確かに、クロロが聞いていた俺の故郷である日本の話を聞くと、とても暗殺なんかが必要ないように思えるだろう。しかし、平和だったら平和だったでまた別の問題が発生するのだ。それは、もはや人間の性だ。

(だからこそ、俺は信頼できる人に依存してしまうのかもな。)

 いつか身を滅ぼす。そう親父を筆頭に一族に言われてきたが、何となく、それが現実味を帯びてきた気がする。


 俺は、大切なものを失うのは許せない。仮に、何を失ってでも『大切なもの』だけは守る。当然、自分は守るが、それは『大切なもの』の次だ。


 例え『他のもの』が、例え『自分』が壊れようとも、俺は『大切なもの』を守る。

今になって1章の伏線を回収しました。

ちょっと小説のネタが思いついたので、それを試しに書くために更新は遅れるかもしれないです。

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