レベル
「それにしても、アカツキさんてお強いんですね。」
『イマル』について、食堂で席に座り、注文を終えるとレイラがそんなことを言ってきた。ちなみに、ここまでの道中で2人がこの街出身であることを聞いた。
「そうよね。もしかして戦士?相当強いわよ。」
ミリアも同調する。
「いいや。俺は魔法使いだよ。」
「「ええっ!」」
俺の答えに2人は声を揃えて大声をあげる。
「な、なんだよ?素っ頓狂な声出して?」
「そりゃ驚くわよ!だって、魔法使いが、近接戦闘もあそこまで綺麗に出来るの!?」
「ミ、ミリア、声大きいよ……。」
ミリアの大音量にいち早く冷静になったレイラが窘める。周りの視線が痛い。俺はひたすら目礼をして詫びる。
「わ、悪かったわ……。」
ミリアも冷静になったのか、そういうと椅子に静かに腰かける。
「でも、ミリアが騒ぐ気持ちも分かりますよ。なんであそこまで?身体強化の魔法とか使ってるんですか?」
落ち着いた声でレイラが俺に質問をしてくる。小首を傾げる動作が小動物チックだ。
「いいや、使ってないよ。まあ、使えないことも無きにしも非ずだけどね。」
俺の回答にミリアがはぁ~、と深いため息を漏らす。
「なんかもう、凄いわね。それってもはや異常よ。」
その言葉に俺は違和感を覚える。
「ん?そうかな?だってそうなったら近接戦が出来なくなるし、運動能力と体力がないと仕事なんか出来ないけど。」
俺の言葉に、どうやら今度は向こうが違和感を覚えたようだ。
「魔法使いが接近戦?何よそれ?」
「き、聞いたことないですね。」
え?なんでだろう。まあ、とりあえず、
「ほら、オーダーした料理がきたぜ。飯でも食いながらゆっくり話そうぜ。」
俺はそういうと手を合わせ、それからスプーンをとって目の前の食事にとりかかった。2人もスプーンを取ると、各々の料理に手を運び始めた。
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食事をしながら、2人からは色々な話をきいた。
魔法使いは、あくまで遠距離攻撃や索敵の役目であって、戦闘では後方から攻撃して、接近戦は全く行わないということ。戦闘は複数人でやるのが普通ということ。2人はこの町の出身で、2人で冒険者をやっていること。レイラが弓使いでミリアが戦士ということ。この町の周辺は比較的弱いモンスターが多く、ギルドにもランクがC以上は滅多にいないこと。さきほどのマッチョ男は4人の仲間全員Bランクで、この町ではかなり強くて、乱暴ばかりしていること。2人はCランクのため、あの2人とまともにやり合うのが難しいということを聞いた。
なるほど、この世界の戦闘は集団でやるのか。考えてみればそうだよな。集団の方がリスクはぐっと減るし、個人の負担や役割もぐっと減ってくる。俺たち魔術師は、あくまで隠密活動なので、目立たないように単独での仕事がほとんどだった。だから自分だけでなんでもやらなくちゃいけなかった。だが、こっちはあまり隠密する必要がないから集団なのだ。ちなみに、俺が近接も魔法も(正確には魔術だが)出来る理由としてさっきの説明を若干濁しながら説明すると、2人はため息をついていた。
それと、2人はCランクなのか。どれくらいなのか、よく分からないな。あのマッチョ男がBだとすると、正直微妙だな。
そして、もう一つ興味深いことが聞けた。
「レベル?」
ぽろっとレイラが漏らした単語が非常に気になった。レベルってあの?俺の反応を見てミリアが驚いた顔をしながら説明してくれる。
「それも知らなかったんだ……。レベルってのはね、どれだけの戦闘勝利経験があるかで、決まる数値のようなものよ。倒した相手が強いほど経験値というものがたくさんもらえて、レベルが上がるほど、基礎体力とか魔力の能力も上がるの。どのくらいのレベルかはギルドで計ってもらえるけど、どれくらい戦えばレベルがあがるとかは全く分からないわ。どうやら個人差があるみたいね。ちなみに、あたしが60レベルで、レイラが62レベルよ。」
「そうなんだ……。」
俺はつい、曖昧な返事をしてしまう。レベル、か……。まるでゲームそのまんまだ。魔物やギルド、冒険者、それに、町に入った時からちょいちょい見かける『亜人』という種族。頭に猫耳や犬耳などがついていて、尻尾もついている。それぞれに特徴があり、卓越している分、他の能力はちょっと低いらしい。ちなみに、人間はそれらの平均みたいな能力だ。いや、ちょっと話がそれたな。
(この世界は、いったいどうなっているんだ……?)
俺は、この世界に俺を送り込んだ神様のことを、改めて疑問に思った。
(いや、いいや。今は楽しい食事タイムだ。どうせこの後”胸糞悪い後始末”をしなくちゃいけないしな。)
俺はそう考えを断ち切って、食事と談笑を楽しむことにした。
話しが……進まない!前半は解説ばかりで停滞してしまいますよね。




