そして今日
放課後。
『さぁ、奈津。元気よく行くぞぉ!!』
彰はそう言うと言葉の通り、元気よく歩き・・ではなく飛び出した。
それを後ろに奈津はため息をつく。
「やっぱり会いたくないなぁ・・」
憂鬱だ。
そう思いながらも足は進み、とうとういつもの公園まで着いてしまった。するとそこにはいつも道理あの人が・・。
「!?来てくれたんだね。ありがとう」
透は奈津に気づくと立ち上がり、こちらに近づいてきた。
とっとっ、透さんが私に、しかもキラキラの笑顔で!!やばい、鼻血出るかも・・。
そう思いながらもなるべく平静を保って奈津は答える。
「いっ、いえ。あの、透さんにお礼を言われることじゃありませんし・・」
「・・・あれっ?僕、自分の名前言ったっけ?」
透は身に覚えのないことにきょとんとした顔をした。
かっ、かわいい。・・って見惚れるんじゃなくて!!
「あの、二人の会話を、近くでたまたま聞いて!」
慌ててそう答えると、透は納得したように
「そっか。それなら納得だ」
そう笑顔で返してくれた。その言葉にホッとする。
「あっ、ベンチに座ろうか」
二人は移動してベンチに座った。
「じゃあ、もう名前知ってはいるだろうけど、改めて自己紹介。僕は雪村 透。大学二年生」
やばいっ、いやいや来たものの・・こんな特典がついてるなんて!!
そう興奮しながらも奈津も自己紹介する。
「あっ、私は片桐 奈津です。よっ、よろしくお願いします!!あっ、高校二年です!!」
とっ、透さんとしゃべってるー!!
そう思うと緊張で心臓がばくばくしてくる。そのため、本人は平静を完璧に装っていると思っているが、さっきから力んだ言い方で返していた。それを知ってか知らずか、透も少し可笑しそうな顔で話を続けた。
「よろしくね。あっ、ちなみにいつも僕が待っているあの人は一枝 遥。同じ大学二年で、僕の幼馴染なんだ」
幼馴染・・。
「幼馴染なのに性格はこんなにも正反対なんだぁ…」
思わず聞こえないようにそう小さくつぶやく。
「うん、よく言われる。似てる部分もあるんだけどねぇ」
聞こえないようにつぶやいたはずが、彼にとっては丸聞声だったらしい。いつものこととでも言うように普通に答えた。
「わわわ、すみません。初対面なのに失礼なこと」
「ううん。いつも言われることだから」
そう答えてもらえてホッとし、思わず笑顔を返す。それから少しの間たわいのない会話をする。
そうして会話をし始めて、ちょっと慣れてきたなと奈津が思い出したとき、透は時計をふと見ると、突然とんでもないことを言い出した。
「奈津ちゃん、そろそろ時間だから行くね」
「・・へっ?」
奈津の頭の上に?が思わず浮かぶ。
「本当は二人の仲直り見たかったんだけど、今日どうしてもはずせない用事が出来てしまって。遥、もうすぐ来ると思うから。ごめんね」
そう言いながら立ち上がり、
「じゃあ頑張って。バイバイ」
眩しい笑顔を奈津に見せながら帰って行ってしまった。
ちょっと待って!!うっ、うっ・・
「ウソでしょーーー!!!!????」