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戻って今日
そして今に至る。
『なっ?昨日ちゃんと約束してるじゃん』
「うーん・・・」
奈津は昨日の約束を思い出しつつも、微妙な返事をする。
だってなぁ、昨日の今日であいつに会わなくちゃいけないなんて。
『だからちゃーんと今日も行ってよね』
でも「いいよ」って言ったあとから彰君、うれしさでかずっとそわそわしてるんだよね。
それを見ていると、こっちまで笑顔になって、ついつい自分の意思が揺らいでいく。生意気なのがたまに傷だけど。
『おい、奈津。聞いてるのかよ?』
ハッと彰の方を見ると、ふくれっ面で奈津を見ていた。
「聞いてる、聞いてる。ちゃんと行くって」
そう言うと彰はホッとした顔をした。
「そういえば聞いてなかったんだけど、あの人に会って何を言うの?」
『それは・・・そのときに奈津に直接言う』
奈津はその言葉にまた疑問を感じ、
「どうして?」
と聞いてみた。すると、
『どうしても』
と背中を向けて、そのまま黙ってしまった。それに対して言葉をかけようとした瞬間、チャイムの音がなった。その音を聞いて、渋々話しかけるのを止め、教室に戻ることにした。