幽霊
「遥、今のは本当に失礼だよ」
そのころ透は遥の元に戻っていた。すると遥はバツが悪そうに、
「・・・分かってる。言いすぎた」
「明日も来てねとは言ったから、明日彼女が来たらちゃんと謝るんだよ?」
「・・・あぁ」
そう答えた瞬間少し苦しげな表情をした遥を、透は優しく見つめていた。
一方戻って、奈津の方はというと・・・
「誰!?」
小さく呟いた独り言。誰もいないはずなのに返事が返ってきた。奈津は慎重にまわりをぐるっと見回した。・・・が、誰もいない。
「気のせいだったのかな?」
そう思い、帰ろうとした。
すると、
『ここにいるよ。ここ、ここ』
頭上から声が聞こえた。
えっ、まさか、ありえない・・・・。そう思いながらも上を見上げる。するとそこには小学生くらいの男の子が頭を下にして宙に浮いていた。
「ゆっ、ゆっ、幽霊いいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!???」
ありえないありえないありえない!!私霊感ないし、見たくないし、これから美人霊感少女なんて呼ばれちゃって有名人になっちゃったりして、えへへ・・でもそしたら透さんが気味悪がって遠のいちゃうかも!?それはいやだぁぁぁぁ!!
そんなことを瞬時に考えながら、奈津は叫びながら後ずさりした。
『お姉ちゃん、ご名答。でもそんなに後ろまで後ずさらなくてもいいじゃん』
そんな様子に苦笑いしながら男の子は体を反転させ、しかし宙に浮いたままこちらに近づいてきた。
「こっ、来ないでよぅ!!」
思わず目をつぶる。
『そんなに怖がらないでよ。何もしないし』
「・・・本当?」
『本当、本当』
そう言われ、そっと目を開けた。男の子は両手をパアにして顔の高さぐらいまで上げ、
『ねっ?何もしてないでしょ?』
とニコッと笑いながら答えた。
「う・・・うん」
なんとかちょっとずつ気持ちも落ち着いてきた。・・・でもそうなると色々疑問が浮かんできたぞ?なんで今まで幽霊が見えなかった私がいきなり見えるようになったの?しかもどうしてこの時点?呪われたりしない?
もんもんと考えていると、その間の沈黙が耐えられなかったのか、男の子が話を切り出した。
『あのさ、さっそくなんだけど、お姉ちゃんにお願いがあるんだ』
「お願い?」
『うん。僕のお兄ちゃんに僕の言葉を伝えてほしいんだ』