遊園地(入口)
「いっ、いよいよね……」
奈津と彰は電車に乗り、とうとうノコノコ遊園地まで近づいてきていた。
今日は実質私と遥さんの二人……透さんがいないってことは、彰のこと、伝えられるってことよね。
歩きながら奈津はそう考えていた。返ってチャンスなんだと。
そうして入口が見える場所まで近づいてきた。同時に向こうから手を振っている人も見えてきた。
『兄ちゃんだ!』
「あっ、彰ちょっと待ってよ!これ重いんだから!」
彰は遥の姿を見つけると、一目散に飛んで行ってしまった。奈津も急いで追いかけようとしたが弁当が重いのと崩れてはいけないのとでそんなに早くは走れない。それでも気をつけながら走っていると、突然弁当を抱えていた左手が軽くなった。
「えっ?」
驚いて立ち止まり左を見ると、遥が軽々と弁当を持って立っていた。
「遥さん!?」
「本当に作ってくれたんだな、弁当」
遥は嬉しそうに言った。それに続けて、
「それに服も、お前にしてはかわいいんじゃねーの?」
とまた背中を向けながら言葉を続けた。
その言葉に奈津は一気に体中が暑くなった。
今日の奈津の服装は袖口がふんわり、裾はレース遣いの薄いオレンジ色のシャツに、グレーのバルーンショートパンツという組み合わせだ。今回一応デートみたいな形なので、奈津なりに昨日の夜から鏡とにらめっこをして決めた結果だ。
そのため、恥ずかしさと、嬉しさと混ざったような感覚になった。
しばらくお互い沈黙になりながらも、再び入口へと歩き始めた。
すると、ようやく気持ちに落ち着いてきた奈津があることに気づく。
そういえば、彰って遥の姿を見て飛んで行かなかったっけ?
疑問に思っていると、彰が飛んで帰って来た。
『兄ちゃんはこっちにいたのか!』
「遥さんだって確信して行ったんじゃなかったの?」
戻ってきた彰にヒソヒソ声で話しかける。
『だってこっちに手を振ってたから』
「そういえば確かに振ってたような……」
「透!?」
突然遥の驚いた様子の声が響いた。奈津と彰も思わず声のする方へと視線を向ける。
「二人とも遅かったね」
そう、そこには爽やかな笑顔をした透がいた。