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CHANGEの仕方  作者: 桜もち
27/43

今に戻って

「……ッ」


透が言い返そうと口を開いたとき、


「あれっ、二人ともどうしてこんな場所にいるんだ?」


と後ろから声が飛んできた。


「遥!?」


奈津が振り向くと、そこにはキョトンとした顔の遥が立っていた。


「……遥、今来たところ?」


透は平静を保つように装いながら、遥に聞いた。


「えっ、そうだけど?」


その言葉に透は心の中でホッと肩をなでおろした。透は奈津の方へと向いていたので、近づいてくればすぐに気付くはずであった。しかし、遥は並木道の真ん中の道からではなく、木と木の間から突然出てきたのだ。


「…遥さん、頭に葉っぱついています」


少し強引に出てきたせいか、頭や服に葉がいくつもついていて、奈津は思わずツッコんだ。その光景に、奈津の重たい気持ちが少し和む。


「えっ、本当だ」


遥は服についた部分を払い落すと、そのまま奈津の前まで歩き、頭を下げた。


「取って」

「えっ、あっ……はい」


予期せぬ行動に戸惑いながらも、奈津は遥の髪についた葉を取っていった。一枚ずつ取るたび、動揺がなくなり、同時になぜか照れくさくなっていくのを感じた。


「とっ、取れましたよ……?」


奈津がそう言うと、遥は顔を上げ笑顔で礼を言った。


「で、どうして二人とも公園じゃなくこんなところにいるの?」

「「えっ」」


思わず黙り込む。

まさかあなたの過去のことを聞いていましたー……なんて本当のこと言いづらい。彼の一番辛い過去、触れられたくない深い傷。透さんにも口止めをされた。……けれどやっぱり私は―――


「あの「ひまわりを見せたくて」

「えっ」

「なっちゃんにここのひまわりを見せたかったんだ」


透により見事に声を遮られた。


「さっ、遥も来たことだし、もう帰ろうか」

「えっ、おいっ」


透は遥の後ろに廻り、背中を押した。遥はどんどん公園へと進んで行く。奈津はしばらく立ち止まったまま二人を見ていた。そんななかで、透の強引さに対し奈津は敗北感を感じていた。


くっ、くそぅ……。


そのまま公園へと消えて行くのだろう。奈津は悔しさを持ちながらそう考えていた。しかし突然、遥がクルッと回転し、奈津の方へと走ってきた。


「えっ、どうして」


思わず驚く。すると走ってきた遥は目の前で立ち止まり、


「奈津」


と初めて名前を口にする。その言葉に奈津はドキッとした。遥はそのまま言葉を続け、


「明後日の日曜、朝10時。ノコノコ遊園地前にお弁当持参で集合」

「……は?」



トキメキが一気に疑問へと変わる。


「分かったな」

「いや、意味がわからな」

「分かったな?」


遥は有無を言わすまいと、奈津に顔を近づけていく。抵抗しようにも両手首を抑えられ逃げることができない。あまりに顔が近いため、奈津の体温は一気に上昇していった。


「なっ?」


念押しをされ、奈津はとうとう


「……はい」


と答えてしまった。すると遥はすぐに両手首を外し、透の元へと歩いていく。

奈津はというと思わずその場にへたり込んでしまった。


「じゃあな」


そのまま二人は帰って行ってしまった。


それなのに奈津はいまだに体の熱が取れず、動けずにいる。そして見逃していたのだ。後姿の彼の耳が、とても赤かったことを。


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