今に戻って透から
その後、どれぐらいたったのか分からないくらい二人で泣いた。太陽はそんな悲しみを抱きしめるようにして沈んでいった。
―――――ここまでが、一年前にあった出来事。その日から、遥は毎日この病院の屋上で、彰に懺悔をし続けている。僕は、遥が自殺をするなよっていう監視の意味も込めて、毎日あの公園で待っているんだ」
「……そんな、ことがあったんですね……」
奈津はそれ以上の言葉が出て来なかった。二人の苦しみが伝わり、のどが詰まった。と同時に、本当にこんな話を私が聞いてよかったんだろうかと疑問にも思った。
すると、再び透が声を出した。
「なっちゃんにね、このことを話したのは、お願いがあるからなんだ」
「お願い…ですか?」
透は真っ直ぐ奈津を見つめると、真剣な顔つきで言葉を続けた。
「遥に彰がいることを言わないでほしいんだ」
思わぬ言葉に奈津は思わず動揺する。
「えっ、どういう……」
「そのままの意味だよ」
表情を変えずに言葉を重ねられる。
「なぜですか?彰がいるってことが分かったら、遥さんはもう一度彰と話せるんですよ?」
納得がいかない奈津は急いで思考を働かせ反論する。
「だからだよ」
「えっ?」
「知ったらきっと遥は話したがる。けれど、彰は死んでいるんだ。もし彰が遥を責めたらどうなる?今度は間違いなく自殺する…そんなのはもういやなんだ」
透の悲痛な痛みが伝わってくる。しかし彰の痛みも奈津は知っている。
「彰は……彰はそんな子じゃないです」
両方の痛みを知り、涙がこぼれそうになる。
「分かってる。けれど幽霊が必ずしも同じ性格のままとは限らない」
「けど、それじゃあ……」
彰が辛いまま……その言葉が続かず、涙と共に消えた。
「なっちゃんが遥と仲良くなるのは歓迎する。けれど、彰のことは言わないで」
透が口調を強めた。しかし、奈津は声を振り絞りながら答えた。
「……いや、です。それでもやっぱり私は…私は今ここに彰がいることは意味があると思うんです!」