一年前のあの日6
「……俺は、とりかえしのつかないことをした」
遥は空を見つめたまま答え、ゆっくりと立ち上がった。
「そんなのずるいよ」
僕はとっさに言い返す。
「分かってる」
「じゃあ、どうして―――」
「分かってるけど、逃げたいんだ!!」
遥は叫んだ瞬間こちらを振り返った。ゆっくりと涙が頬を撫で、地面へと落ちていく。悔しくて、後悔に満ちた顔が、僕の胸に突き刺さる。
「俺は……俺は彰を死なせた。生きる資格なんてない。生きて一生かけて償うのなら、死んで、死の世界の中で永遠に償い続けたい……俺は、俺はもう」
「ダメだ!!!」
力のある限り、僕は叫んだ。
「そんなのダメだ!!……遥が死ぬなら、僕も死ぬ!!!」
僕はそう叫ぶと遥が止める声も聞かず、フェンスを飛び越えた。そのまま遥の隣まで歩く。下を向けば、花壇の花が風で揺れているのが小さく見えた。思わず身震いをするが、今はそんなことを感じている暇ではない。
「いい?遥が死ぬことで、一気にもう一人増えるんだ。遥のせいでね」
「そんなこと出来るわけ―――」
「出来るよ。覚悟を決めたから、今隣に立っているんだ」
遥を死なすわけにはいかない。これ以上、おばさん達を悲しませるわけにはいかない。これ以上、大切な仲間を失いたくない。
「だから、僕のために死ぬな!!」
遥は、その場で泣き崩れた。声が出続けるかぎりずっと。






