一年前のあの日5
学校、公園、本屋やゲームセンター……。思い当たる場所をくまなく探すが、遥は見つからなかった。
「一体、どこにいるんだ」
気がつけば、日は傾き夜へと近づいていた。早くしないとお通夜が始まる。僕は立ち止まり、焦りながらももう一度遥が行きそうな場所を考えた。
やっと息が整いだした頃、ふと、昨日の後悔に満ちた遥の顔を思い出した。
「まさか……」
確かにあそこにはまだ探しに行ってはいない。走りすぎて痛む脇腹を少しさすると、僕はもう一度走り始めた。
15分後、僕は病院の前に立っていた。日はまだ僕達を赤く染めている。上を見上げたあと、すぐに目線を前へと戻し、屋上へと向かった。上に上がるにつれて人と出会う回数も減ってくる。それと比例するかのように、階段の駆け上がる靴の音が大きく響き渡っていった。
僕は上まで辿り着くと、一旦足を止め、一呼吸置いてから屋上へ続く扉を開けた。
そこにはやっと探し続けていた遥がいた。
遥は屋上のフェンスを越え、空を見上げ座っていた。僕がフェンスまで近づくと、遥は気配に気が付き顔だけこちらに向けた。
「透、どうして……」
「どうして、じゃないだろ。みんな心配してる」
僕はそう言いながらフェンスも越えようと足をかける。すると、
「来るな」
「えっ」
強い口調でそれを止められた。遥は顔を前へと戻し、言葉を続ける。
「もう帰れ。通夜も始まるだろ」
「!!記憶、戻ったの!?」
「……あぁ」
そう言ったっきり、遥は黙り込んでしまった。その上ここからだと表情さえ分からない。僕は1つのことを頭によぎる。
「……自殺、するの?」