表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CHANGEの仕方  作者: 桜もち
21/43

一年前のあの日2


「あああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


雄叫びに似た悲痛な声が広がる。おばさんの声だ。隣に座っているおじさんも声を声を押し殺し泣いていた。僕は今の状況が信じられず、そのため涙も出なかった。その場をテレビ画面から見ているような、そんな感覚だ。

ふと、後ろにいたはずの遥がいないことに気がついた。廊下の奥へと視線を移動させると、遥が足元をふらつかせながら歩いている姿が見える。僕はその様子が気にになり、遥の後を追った。


遥の後を着いて行くと、屋上に着く。遥は真っ暗な空を、ただ静かに眺めていた。


「遥……」


僕が声をかけると、遥は一瞬肩を震わせた後こちらにゆっくりと顔を向ける。


「あれっ、透なんでこんなところにいるの?」

「えっ……」


言葉に詰まった。あまりにも今の状況には不釣り合いな遥の明るい声。なんと答えたら良いのか分からなかった。すると、


「まぁいいや。なんかさ、彰と遊んでたんだけど、あいつ居なくなっちゃってさぁ。迷子にでもなったのか?透知らない?」


と話を続ける。


「遥、何冗談……言ってるの?」


僕は様子の可笑しい遥に問いかけた。少し声が震えているのに自分で気づく。


「冗談?俺は大まじめだけど?」


遥はそう言うと、普段と変わらない声で笑い出した。下でどうしようもなく泣いている遥と彰のおじさん・おばさん。上で、今ここで起きたことが何もなかったような顔で笑う遥。この不思議な状況。

ようやく僕は理解した。

彰は『死んだ』んだ。

頭が理解したと同時に、僕の方に涙が頬につたいはじめた。


「透!?どうしたんだ!?」


遥は僕がいきなり泣き出したことに驚いている様子だ。しかし僕は、こんな遥が許せないのと、そんな遥を見てやっと『死』を理解した自分が腹正しく、


「……バ……カ……やろ………」


と声を洩らすのが精一杯であった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ