表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CHANGEの仕方  作者: 桜もち
2/43

幸せの時間(とき)からどん底へ  

「透ー!!」


名前を呼びながら、病院側から1人の男の人がこちらに近づいてきた。それと同時にベンチに座っていた王子様も本を閉じ立ち上がる。


「遥。」

「ごめん。いつもより遅くなった」

「いいよ。その分読書進んだしね」


透を呼んだ男性は透とは違い、背が高く、黒髪の短髪で少し目尻が上がっているその顔は、少しきつめの印象をうける。しかし、そんな印象は今の奈津には関係なく、

透さん・・・なんて優しそうで素敵なお名前・・・!!帰ったら王子様プロフィール更新シなくちゃ!!・・・でも2人の時間はもう終わりかぁ。と透のことで頭がいっぱいであった。


「ねぇ」


でもでも、また会えるしね!!(話せないけど)


「ねぇってば」


あっ、プロフィール、今日透さんが読んでた本のタイトルも書かなくちゃ。えっとえっと、名前なんだったっけ?まだ透さん、本手に持ってるかな?

そう思い、奈津は2人のいる方向を見ようと振り返った。すると、


「おい!」


透じゃない方の人(※遥)の顔の度アップが、


「・・きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


目の前にあった。思わず叫びながら後ずさる。すると彼は手を耳に当てながら、


「でけぇ声。何も叫ぶことないだろ」

「だっ、だって、いきなり顔がっ、目の前にっ!!」

「いきなりじゃねぇよ。何度も読んだし」

「・・へっ?」


見かねた透さんが話の中に入る。


「言葉がぶっきらぼうでごめんね。君が読んでた本が落ちてたから、遥が拾って声をかけたんだ」

「あっ、そうだったんですね。すみません、ありがとうございます」


そう言って、奈津は遥から本を受け取る。

やだなぁ、私ったら恥ずかしい・・。思わず顔が赤くなる。

恥ずかしさでいっぱいになり、少し沈黙がおこる。すると、


「もしかして・・俺に一目惚れしちゃった?」

「なっ・・!!」


遥が意地悪そうに口の端を上げながら言った。


「ちっ、違います!!」

「やっぱりなぁ。俺かっこいいし。そうなっても仕方がない、うん」

「だから違いますって!!」


あああぁぁぁ~~、透さん隣にいるのに勘違いされちゃうよぉ~!!

そんなことを考えているのを知ってか知らずか、遥は一瞬奈津を上から下まで見ると、次に肩に手を置き、


「でもごめんな。もうちょっと体が成長してからもう一度告白しに来いよな」


そう言い放った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・ブチっ。



「こんのセクハラがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」


堪忍袋の緒が切れた奈津は、気がつけば遥の顔面を殴り飛ばしていた。思いっきりグーで。


ハァハァ・・。

「なんで!初めて話した!ほぼ初対面の人に!そこまで言われなくちゃいけないのよ!!」


どうしよう、泣きそう。せっかく透さんの名前が知れて、今日は良い日だって思ってたのに。・・泣き顔・・見られたくない。

そう思った奈津は、そのまま何も言わず走り去った。





少し走ったところで、奈津は透が追いかけて来ているのが分かった。


「待って!!」


そう言われ、透ということもあり渋々背を向けたまま立ち止まる。


「あの、ごめん」

「・・あなたが謝る必要ないじゃないですか」

「そうなんだけど、でもあいつの親友として、ごめん」

「・・・」

「・・・明日も公園に来てくれるよね?」

「・・分かりません」

「俺、待ってるから」

「・・・」

「じゃあ、また明日」


透はそう言うと、もと来た道へと帰って行った。

彼が歩いて行く後ろ姿を奈津はしばらく見つめ続ける。

行きたいよ。透さんに会いたいもん。でもこんなことがあったあとじゃ、


「・・・・・行けるわけ・・ないじゃん」


思わず呟いた独り言。このまま風の中に消えていく。はずだった。





なのに、





『なんで?』

「えっ?」


それに返事が返ってくるなんて、思いもしなかった。



しかもその出会いが、私達の運命をここから大きく変えていくことになろうとは、このときの私には想像もできていなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ