帰り道(奈津と彰)
「なっ、なっちゃん……!?」
透さんに『なっちゃん』って呼ばれちゃったよ!!
奈津は思わず赤面する。
しかし、それもすぐに先ほどの透の言葉を思い出す。
――明日、病院に行こう――
透は本当は奈津の言葉を信じていなかった?
思わずその言葉が頭の中によぎる。奈津はそう思うと顔を曇らせた。
「違ったのかなぁ……」
『お前ってほんっと表情コロコロ変わるなぁ』
奈津が悩んでいると、それをずっと見ていた彰が感心そうに話しかけた。
「はっ?」
考えていることと全く違うことを言われたため、思考が追い付かずキョトンとした顔をする。
その顔を見て、彰は今度笑いだした。
『やっぱり面白い』
「そ、そうかななぁ?……ってか年上のお姉さまに『お前』なんて言わないの!」
『お姉さまって柄じゃないだろ』
「いや、違うけど・・あぁ!?自分で認めちゃった!?」
さらに彰は笑う。としばらくこの言い合いが続くと思いきや、突然思い出したのか真顔になって言った。
『あっ、俺、明日病院について行かないから』
「えっ!?どうして!?」
そのままのノリで奈津はそのまま叫ぶ。
その一方で彰は冷静に答える。
『いや、なんとなく』
「なんとなくって…。まぁ良いか。じゃあもう暗くなってきたし、帰ろっか」
『うん、帰ろう帰ろう』
なぜ彰がそう言ったのかは分からないが、あえてその理由は聞かず、二人は家に向かい歩きだした。