帰り道(遥と透)
「いつから『なっちゃん』呼びなんだよ?」
公園を出てから少しして、遥が透に話しかけた。
その質問を聞いた透は一瞬きょとんとした表情をしたあと、すぐに少し意地悪な顔をして答える。
「やっぱりヤキモチ?」
「ち、違うし!あいつは…」
そう答えながら遥は少し足早になり、顔の表情が見えないまま言葉を続ける。
「あいつは…よく分からない」
「よく分からない?」
思わず遥の言葉を繰り返す。さらにどういうことなのか聞こうと口を開きかけると、
「それより、さっきの質問にちゃんと答えろよ」
と、透の方に顔だけ向けてもう一度聞いてきた。
「よっぽど気になるんだね」
「い、いや、そういうわけじゃ…」
どもりながら話す遥に、意地悪顔をもう一度浮かべる。しかし今度は素直に答えた。
「遥が聞いた時からだよ」
「えっ」
「『奈津ちゃん』より『なっちゃん』のが呼びやすいでしょ?本人に聞かずにいきなり呼んだから、彼女もびっくりしたみたいだけどね」
その言葉を聞いた遥は、思わず透に気づかれぬよう安堵のため息をついた。
しかしそれもお見通しだったため、すかさず透はつっこむ。
「遥ってやっぱり分かりやすいよね」
笑顔で遥を見てくる透に、遥は耐えられなくなり、
「うるせぇよ」
そう言うと全速力で走りだした。
「あっ、遥待ってよ!」
走りだした遥に、少し嬉しそうな顔をしながら透は後を追い、二人は家に帰って行った。