再び説明
二人はベンチに座り、ゆっくりと奈津は説明を始める。
どれくらい時間がたったのだろう。いや、実際にはそこまで時間は経っていないのであろう。現に遥が来ていないことが何よりの証拠である。
しかし奈津の頭の中は、透に言い忘れがないよう普段使わない頭の中をフル回転させながら、説明していった。
まぁ、学校の昼休みにも一度理紗に説明しているのだが。
「……というわけなんです」
奈津は一通り説明を終えると、それまでずっと黙って聞いていた透の方を横目で不安げに見た。
―――私が話しているのは一枝 遥の弟で、頼まれごとをされているんです―――
改めてそのことを実感すると、やはり説明されても信じづらいよなぁ。と自分でつくづく思う。
透が黙っている間、そんなことをグルグルと同じことを考える。すると、
「あのさ、」
「はっ、はい!!」
沈黙の間、マイナス思考のエンドレスに入り始めていた奈津は、突然の声に思わず驚き、立ち上がる。
そんな奈津の行動に、透も思わず驚く。しかしすぐに可笑しそうに笑い、言葉を続けた。
「明日もここに来てくれるかな?」
「えっ、はい。もちろんですけど…?」
「よかった。じゃあ、明日は僕と病院に行こう」
マイナス思考が現実化した瞬間である。
そんなときに、タイミングが良いのか悪いのか遥が病院側からやってくる。
「なに、どうしたの?」
思わずショックで固まっている奈津を横目で見ながら透に話しかける。
「ううん。なんでもないよ」
透は何事もなかったかのように笑顔で答えた。
「ふーん?」
「何、遥ヤキモチ?」
「ち、違うし!!こんなブス!!」
この言葉で固まっていた奈津が思わず反応する。
「なんですって!?」
「本当のこと言っただけだろ」
二人は顔を見合わせると火花を散らし始めた。そんな二人を少し見た後、あきれた様子で止めた。
「ほらほら、日も暮れるし帰るよ」
「あっ、あぁ」
「じゃあ、また明日ね。なっちゃん」
「「えっ」」
――なっちゃん――という言葉に思わず二人は反応する。
そんな様子を知ってか知らずか、透は遥の背中を押しながら公園を去っていった。
「……」
奈津の心は、トキメキと明日への不安で混じりあっていた。