やっと再会
ハァ、ハァ。。。
学校を飛び出してから15分。その間も奈津はずっと走り続けた。
この1ヵ月間、王子様こと透に会いたくて毎日この道を走っていた。なのに今日はなんだか長く感じる。
もうちょっとで着く!というところまで差し掛かった。
そうすると奈津はラストスパートをかけた。
辿り着く前にある林の中に入った途端、周りの空気も変わる。空気が澄みわたり、涼しくもなる。それを感じたことに奈津が気付いた時にはすでに公園に着いたあとだった。
「奈津ちゃん!?」
全速力で走ってきた奈津に驚いて、いつものようにこの公園で読書をしていた透は慌てて近づいてきた。
「そんなに全力で走ってきてどうしたの!?」
「ハァ、ハァ。。。透、さん。ごめ・・なさい。・・耳・・・塞いで・・!」
「えっ?」
奈津は途切れ途切れに答えるとそのまま、息を整え、そのまま大きく息を吐いて、吸って、
叫んだ。
「彰ーーーー!!!!!!いるんでしょ!!!早く出てきなさーーーーーーーい!!!!!!!」
この公園と林内には確実に響きわたっただろう。現に隣にいる透は目を白黒させていた。しかし、奈津の叫びはまだ続く。
「あんたねぇ、なんのためにこの世界に留まってるのよ!!伝えたいことがあるからなんでしょ!?その覚悟があるのに今更逃げてるんじゃないわよ!!」
「奈津・・ちゃん!?」
「それに私まで巻き込んどいて、突然放置ってどういうことよ!!巻き込むなら最後まで責任とって巻き込んでよ!!私……私、あんたを助けたいんだからぁ!!!!」
最後の方は少し涙目になっていた。
けれど、どうしても伝えたかった。どこにいるのか姿も見えない彼に。
すると、空からすすり泣く声が聞こえてきた。奈津は思わず声のする方を見渡す。そうすると、ある一点だけ空の色が見えなくなり、何かの形に変わっていく部分があった。その形は透けているが、しっかりと男の子の形に変わっていく。
そう、彰だった。
視線が合い、しばらく見つめあう形になる。お互い涙目だ。
すると、彰が声を発した。
『何、でっかい声で叫んでるんだよ』
「あんたが…彰が出て来ないからでしょ」
『何…泣いてるんだよ……』
「彰こそ…泣いてるじゃない」
二人はお互いの涙を拭おうと手を伸ばした。しかし、奈津は生きている人間。彰は死んでしまった人間。気持ちとは裏腹に、お互いの手は体をすり抜けていく。
「『……』」
彰はそのことを再確認して、少し顔が歪んだ。
その様子に気づいたのか気付いてないのか分からないが、奈津は言った。
「小学生のお子様が、女性の涙を拭うなんてまだ早いって証拠よ」
彰はハッと奈津を見る。
奈津はおどけた顔を見せていた。
すると彰は、
『……フッ。もうおばさんのクセしてよく言う』
「なっ、失礼な!?私はまだ花の女子高生よ!」
『花のとか言うあたりおばさんなんだよ』
思わず笑ってしまっていた。
やっと、顔を見せて、笑ってくれたね。
奈津は心の中でホッと胸をなでおろした。