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早く会いたい
放課後のチャイムがなる。
その音が始まると同時に奈津は鞄を手に持ち、すぐさま教室を飛び出した。
「こらっ、片桐!まだホームルーム終わってないぞ!」
その瞬間、先生の声が飛ぶ。
「すみません、先生!今日だけ見逃してくださーい!」
早く。早く会いたい。きっと、ううん、絶対あそこにいるはずだから。
一刻も早く行きたかった奈津は先生に向って叫びながら走り、次に先生が叫ぼうとした瞬間にはすでに姿はなかった。
「はぁ、全く」
すでに誰もいなくなった廊下を少し見つめた後、軽くため息をつき教室に向き直る。
「ほら、ホームルーム始めるぞー」
そのまま何事もなかったのように先生はホームルームを始めた。
その話を頭の上で聞きながら、理紗は心の中で笑顔で『頑張れ!』と祈っていた。グラウンドを走る奈津を見つめながら。