始まり
あの日はとても暑い日だった。
暑くてイライラしていた。
そんな時、最悪な出来事が起きた。
「兄ちゃんなんか嫌いだぁ」
「俺もお前なんか嫌いだ。いなくなっちまえよ!」
「・・・・兄ちゃんのばかぁ!!」
キィィィィィィ!!!!!ドン!!!!!
「ぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
高校2年の夏、奈津は恋をしていた。
「奈津ー!!今日も一目惚れの王子様に会いに行くのー!?」
「うん!!早く行かないと会えないかもしれないから行くね。バイバーイ!」
その頃の彼女は学校が終わるとすぐに荷物をまとめ、とある公園に走り通っていた。
その公園は大学病院の比較的近くにあり、普段はそこで入院している患者がよく利用している。だが、病院近くと言っても少し歩かないといけないその場所は、夕方に近づいてくるとだんだんと人が減ってくる所だった。
そんな人の少なくなってくる時間の中で、
「ハァ、ハァ。。。まだいるかなぁ。・・・・・居たぁ!」
いつもこの時間にベンチに座って本を読んでいる人がいた。
それが奈津の「一目惚れの王子様」だった。
公園の中にはブランコとすべり台が一つずつ、あとはベンチが二つ一定の距離で離れて設置されている。
奈津は入口で息を整えると、少し緊張しながら足を進める。そのまま彼の座っているベンチの端っこに座り、かばんの中から本を取り出した。言葉を交わしたことはないけれど、本を読むふりをしながら過ごす。この少しの時間は、奈津にとって憩いの時間であった。
あっ、ふりって言っても彼を見習ってちゃんと読もうとはしてるんだよ?でもね、どうしても隣が気になって気になってページが進まないという・・・しょうがないよね!!うん!!と心の中で言い訳をしながら、今日も時間は過ぎていく。
さっきも言ったとおり、一目惚れのうえ、声をかける勇気もなく、そのため彼のことは何も知らない。
ただ容姿が、色白で、瞳が茶色がかっているのに合わせてか、髪は少し長めのシックなブラウン。整った顔立ちだがとても優しい雰囲気を持っている。まさに私の理想の王子様!!っていうのは確かなのよ、うん。と思わず心の中でガッツポーズをとった。
そんなひとときの幸せに浸っていると、その時間を終わらせる人物がやってきた。