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転生したらチュートリアルで殺される悪役貴族だった件 ~元ニートの俺は引きこもるために努力する~  作者: 抑止旗ベル
第三章「異世界のんびりバカンス」

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第99話 転生者

「直接会うのは初めてだろう、フルスト・ロウ。いや、ミリアルド・ヒリューか?」

「どうしてここにいるんだ……!? お前はメル姫の城でクーデターの指揮を執ってるはずじゃ」

「私にとってクーデターなどどうでもいい。もちろんロザワル領もな。大切なのはこの『コア』だけだ」

「……ラウルは、あんたの目的は『コア』を使って運命を操ることだと言っていたが」

「あの男、余計なことを喋るものだな」

「そんなことが可能なのか? 『コア』なんてものは――本来、この世界には存在しないはずだ」


 レザンは『コア』から俺の方へ向き直り、言った。


「そうだな。この『ブレス・オブ・ファンタジー』の世界に『コア』などいうものは存在しない」

「……!?」


 な――なんで?


 どうしてレザンが『ブレス・オブ・ファンタジー』のことを!?


「その反応、貴様も知っていたか。いや、もしくは私と同じなのかもしれんな」

「同じ……!?」

「そうだろう。貴様も現実の世界からこの『ブレス・オブ・ファンタジー』の世界にやってきたのだろう?」

「一体何を言ってるんだ、お前は?」

「私も現実の世界からこの『ブレス・オブ・ファンタジー』の世界へやってきた。貴様はよく健闘した。ミリアルド・ヒリューという人物からフルスト・ロウという別人へと成り代わり、命を長らえた。まるで未来が見えているようにな。だからこそ、貴様も私と同じように現実から来た――『ブレス・オブ・ファンタジー』のプレイヤーではないかと考えたのだ」

「お前は一体何者なんだ、レザン」

「私は開発者だよ。『ブレス・オブ・ファンタジー』の」

「な……!?」


 確かにそうだ。


 レザンなんて人物は『ブレス・オブ・ファンタジー』には登場しなかった。


「私は一度現実で死亡した。そして気が付けばこの世界にいたのだよ。そしてこの『コア』は――そうだな、現実世界でいうデータベースにあたる役割だ」

「データベース?」

「ゲームのソースコードと言ってもいい。ゲーム内で起こるイベントすべてを管理しているのがこの『コア』だ。そして、私はそのコードにアクセスすることが出来る」


 レザンはそう言って、コアへと手を伸ばした。そしてレザンの手と『コア』の漆黒の表面が触れ合ったとき、プログラムのコードのようなものが浮かび上がった。


「どういうことなんだ……!?」

「原理の解明はこれからだ。しかし、このようにコードを書き換えることでこの世界の運命そのものを支配することが出来る。この仕組みを解明するまでにずいぶん長い時間を要した。ようやくこの段階までたどり着いたのだ。現に、貴様もコードに導かれ、この博物館へ来たのだよ」

「!」


 博物館の外で感じた圧迫感。あれはやはり『コア』が発したものだったということか。


「さて、貴様は私の計画をずいぶん阻害してくれたな」

「俺はただ、自分がやるべきと思ったことをやっただけだ」

「しかしこのコードを書き換えれば、すべてが私の思い通りに行く。貴様が助け出したメル姫を再び処刑台に送ることも可能だ」

「そうまでしてクーデターを成功させたいのか?」


 俺が言うと、レザンは俺を軽んじるように笑った。


「どうでもいいことだ、クーデターなど。私はこの世界でそうした役割を演じてみただけのこと。所詮はゲームなのだからな」

「だとしても――この世界で生きている人間は本当に生きているんだ。それを弄ぶようなことは許されないはずだ」

「どうかな? 『コア』によって世界を書き換えることができるという事実が、この世界がフィクションである証明だ。何を必死になる必要がある、フルスト・ロウ。なぜフィクションの人物たちのために命を懸けるような真似をしているのだ?」

「……たとえフィクションだとしても、みんなは俺を必要としてくれているからだ。そのために俺は戦っている」

「虚しい男だな、フルスト・ロウ。貴様の言う『みんな』というのは、実在していないのだぞ」

「それでも構わない。たとえゲームの中だろうと、みんなは俺にとって大切な存在なんだ」

「そうか。開発者冥利に尽きるよ、その言葉は。現実と区別がつかなくなるほど『ブレス・オブ・ファンタジー』にのめりこんでくれるユーザーがいるということだからな。しかし、貴様が邪魔な存在であるということもまた事実だ。手始めに貴様から消すとしよう」


 『コア』表面に浮かび上がった文字に触れるレザン。何が起こるのか予想は出来なかったが、レザンの好きにさせておくとヤバイということだけは分かった。


 俺は剣を抜いてレザンに斬りかかった――が、次の瞬間、博物館の壁に叩きつけられていた。


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