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転生したらチュートリアルで殺される悪役貴族だった件 ~元ニートの俺は引きこもるために努力する~  作者: 抑止旗ベル
第三章「異世界のんびりバカンス」

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第98話 黒幕

「ラウル!」


 俺の剣がラウルの腹部から胸元にかけてを切り裂いた。が、浅い。


「ミリアルドさん――決着は預けますよ」


 ラウルは身を翻し、メル姫の部屋から飛び出していった。


 あとには俺とメル姫、そして半身だけのディシズム卿が残った。


「ディシズム卿、すぐに治します!」


 出力を最大にしてディシズム卿に回復魔法をかける。緑色の閃光に包まれたディシズム卿の体は徐々にその形を取り戻していったが、ある程度まで治った段階でそれ以上は治癒が進まなくなった。

 床に倒れこんだディシズム卿は俺を見て、呟いた。


「……姫を、頼みます」

「ダメだ、ディシズム卿! 諦めるな!」

「さ、最期に……姫のお声を……」


 ディシズム卿は僅かに顔を動かし、メル姫を見た。俺は慌ててメル姫の拘束を解いた。自由になったメル姫はディシズム卿に駆け寄り、縋りつくようにその頬をディシズム卿の胸元に当てた。


「ヒーノ! 死なないで、ヒーノ!」

「お許しください、メル姫……どうかお幸せに……」


 ディシズム卿は目を閉じ、動かなくなった。


「ヒーノ……! ヒーノ!」


 メル姫が声を上げて泣き始める。


「……姫、お辛いでしょうが、脱出しましょう。ここは敵の巣窟です」

「でも、ヒーノが」


 真っ赤にした目で俺を見上げたメル姫だったが、すぐに両目の涙を拭い、歯を食いしばるようにして言葉を続けた。


「分かりました。あなたに任せるのです、フルストさん」



◇◆◇◆



 博物館に辿り着くと、ミカだけでなく中佐も俺を待っていた。


「大変な目に遭ったな、フルスト殿」


 中佐の目には濃い隈が残っていた。


「少し痩せたんじゃないか、中佐」

「色々あったからな。そちらのお方がメル姫様だな」

「ああ。メル姫、ここまでくればもう安全です」


 俺は片手で抱えていたメル姫を地面に下した。


 姫は凛とした態度で立つと、気品ある仕草で中佐やミカに礼をした。


「この度はわたくしをお救いいただきありがとうございます。ステイナー領の方々ですね?」

「ええ、私はステイナー軍の中佐、カタヨルと申します。こちらは私の協力者であるミカ・シャーリー」


 名前を呼ばれ、ミカが頭を下げる。


「……カタヨル中佐、わたくしにはロザワル領を正常な状態に戻す責務があるのです。しかし側近であるディシズム卿を失くした今、わたくしにはそれをする力が無い。ステイナー領の皆様にお力を貸していただけませんか?」

「もちろんです。我々の領地も反体制派によって一時は混乱に陥りました。その時も他の領地の力を借りて立ち直ったのです。我々で良ければ協力しましょう。ではまず、リリィ様と会談いただき今後の方針を――」


 ふと俺は慣れない気配を感じ、周囲を伺った。


 そんな俺の様子に気づいたのか、中佐が俺に言った。


「どうした、フルスト殿? 我々はホテルへ戻るが」

「ああ……先に戻っていてくれ」

「大丈夫か? フルスト殿には一刻も早い休息が必要だと思うのだが……」

「追手が来ていないか、周囲を探ってから戻るよ。気にしないでくれ」

「分かった。ではメル姫、こちらへ」


 中佐の案内でメル姫たちは博物館から立ち去って行った。


 しかしこの感覚は……なんだろう。何かを強制されているような圧迫感は……。


 不思議な感覚に導かれるまま、俺は博物館の中へと足を踏み入れた。入り口のドアは空いていて、中には非常用なのか仄暗い照明が点々と灯っていた。


 圧迫感は博物館の奥に進むにつれて強くなっていった。


 そしてついに俺は、『コア』の前に辿り着いた。


「…………」


 ライトアップされた『コア』の正面に、一人の影があった。


 顔中に深く刻まれた皴と筋肉質な体。その男こそ、クーデターの首謀者であるレザンだった。


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