第95話 対峙
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ディシズム卿の言う通り、城の最上階にあるメル姫の部屋に近づくにつれ警備の人数が増えた。
最上階に続く階段の前には兵士が二人待ち構えていて、それに加えて見回りの兵士たちも徘徊している。これじゃ突破できない。
廊下の陰に身をかがめディシズム卿が動くのを待っていた時、背後から突然声を掛けられた。
「そこのお前、何者だ?」
剣で武装した男だ。腕にはクーデター軍の証である赤いスカーフを巻いている。恐らくはレザンの私兵だろう。
俺は咄嗟に男に詰め寄り、その腹部に蹴りを入れた。男は呻きながら崩れ落ち、そのまま気絶した。
危ないところだった。ディシズム卿が動く前に騒ぎを起こされちゃ困―――
「おい、お前! 何をしているんだ!」
「あ」
振り返ると、複数の兵士たちと目が合った。男を気絶させた瞬間を見られてしまったらしい。
最悪だ。こうなったら仕方ない、全員気絶させて――!
俺が覚悟を決めた瞬間、城内の照明が一斉に消えた。同時に城の外で一斉にイルミネーションが灯り、幾重にも放たれたスポットライトが夜空を照らした。
「な……なんだ!?」
兵士たちがそちらへ視線を奪われた瞬間を狙い、俺は彼らに肉薄しそれぞれの首に手刀を振り下ろして、一瞬で気絶させた。
同時に館内放送が流れ出し、ディシズム卿の声が聞こえた。
『私はヒーノ・ディシズム。メル・エムクー・ロザワル姫に仕える者だ。このクーデターに協力しているロザワル領の兵士やメル姫に仕える者、聞いて欲しい。私は間違っていた。諸君らも知っての通り、レザンはメル姫を処刑するつもりだ。だが、メル姫に死を持って償うべき罪などあるだろうか? いや、無いはずだ。メル姫の命を奪うなどという横暴を許すわけにはいかない。メル姫に仕える皆の者、目を覚まして欲しい――』
兵士たちがざわめく声が聞こえる。
見れば、最上階へ続く階段の前から見張りの姿は消えていた。チャンスだ。
ディシズム卿の放送が流れる中、俺は階段を上り最上階――メル姫の部屋へと向かった。
最上階でも同様に、兵士たちは混乱していた。城外を照らすスポットライトの明かりでなんとか室内の様子がぼんやり分かるといった程度で、俺が兵士のすぐ隣を通っても気づかれなかった。
ミカから預かった地図の詳細を思い出し、見張りが二人ついている隅の部屋がメル姫の部屋だと分かった。
見張りたちはロザワル領の兵士ではなく、レザンの私兵のようだった。二人は俺に気づくと躊躇なく剣を抜いた。
「貴様、ロザワル領の人間じゃないな!?」
俺めがけて見張りたちが一斉に切りかかる。俺は紙一重で斬撃を躱し、一人目の顎を砕いて昏倒させ、もう一人の喉元を殴って気絶させた。
あとはメル姫を連れて脱出するだけだ。俺は見張りが落とした剣を拾い、メル姫の部屋のドアを蹴破った。
「メル姫、ディシズム卿からの依頼でお迎えに―――」
言いかけて口を閉じた。
部屋の中には椅子に縛られたメル姫と、その傍らに――
「やあ、待っていましたよ。と言っても昨日ぶりですけどね」
「ラウル!」
窓からスポットライトが差し込み、ラウルの柔和な笑みを浮かび上がらせる。




