第94話 変えられない運命
「大丈夫ですか?」
「ええ、このくらい平気です。本来ならば私は殺されていてもおかしくない人間です。レザンなどという人間のクーデターに協力するなど……!」
「一体どうしてそんなことを?」
「メル姫のためです。あんな幼く可愛らしい子供に領主という厳しい立場を任せるなど間違っている。そのためにクーデターを起こし、このロザワル領の政治の仕組みを作り直したかったのです。そうすることでメル姫を自由にしてあげたかった。ですがそうはならなかった。レザンはメル姫を殺そうとしている」
「まだ間に合います。メル姫を助けましょう」
「ええ。メル姫のお部屋は分かりますか?」
「情報は得ています。分かります」
「そうですか……。しかし城内の警備は厳しく、部屋までたどり着くのは困難です。姫の部屋のすぐ近くに私の執務室があるのですが、レザンはその執務室からクーデターの指揮を執っているんです」
「つまり、メル姫を救出するには敵の本部を突破しないといけないと?」
「ええ。ですから私が騒ぎを起こし、敵の注意を逸らしましょう」
「ディシズム卿が?」
「……私は一刻も早くメル姫を自由にしてあげたいと思っていた。本来であれば、私の権力があれば長い時間をかけて国の制度を変えることもできたはずです。しかし、焦りからレザンのような人物を引き入れ、クーデターに協力してしまった。その償いをさせていただきたい」
ディシズム卿は声音に後悔の色を滲ませながらそう言った。
その様子からは、メル姫を裏切るようなことをしたことへの深い自責の念が伺えた。
『ブレス・オブ・ファンタジー』本編ではロザワル領を自分のものにしようと企んだディシズム卿。しかし目の前の彼がそんなことをするなんて信じられない。
もし『コア』によってそれと同様のイベントが無理やり起こされているのだとしたら――やはり、運命は変えられないということか。
「しかし、騒ぎを起こすと言っても何をするんです?」
「この城は、パレードやフェスティバルの際に魔力を用いた照明でライトアップされる仕組みがあります。それを乗っ取って滅茶苦茶にライトを操作するんです。城内の照明も連動して明滅しますから、混乱が生まれるはずです」
「分かりました。任せます」
「それと同時に、ロザワル領の兵士たちに決起を呼びかけます。メル姫を救い出す隙は必ず生まれます。フルスト卿、このようなことを言うのは我ながら情けないのですが……メル姫様をお願いします」
「ご武運を、ディシズム卿」
「お互いに」
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