第91話 メル姫救出へ
「……………」
「どうかしたの、フルスト」
「メル姫が処刑されるらしい。ミカの予想通りだったな」
「誰からの連絡?」
「ディシズム卿だ」
「……え? ちょっと待って!? どうして? 彼はクーデター側の人間のはずでしょ?」
「どうやらメル姫を巡っての認識が違ったらしいんだ。ディシズム卿は俺にメル姫の救出を依頼してきた」
「どうする気?」
「メル姫の処刑は明日だそうだ。やるとしたら今夜か。……ミカ、メル姫の居城についての情報を教えてくれ」
「行くの?」
「それしかないだろ。あんな小さい子が処刑される姿なんて、誰も見たくないはずだ」
「メル姫の処刑をきっかけに、ロザワル領民がクーデターに対する反抗活動を起こすかもよ。クーデターを潰すならそれを扇動する方が良いわ」
「本気か? メル姫は死んだら生き返らないんだぞ」
俺が言うと、ミカはため息をついた。
「前から思ってたけど、あんたって結構お人よしなのね」
「俺もそう思うよ」
ミカはやれやれと言わんばかりに首を振り、仕方ないか、と呟いた。
「あたしも、メル姫みたいな可愛い女の子が処刑台にあげられるのは胸糞悪いしね。いいわ、協力してあげる。そもそもこのクーデターが起こったこと自体、情報を掴めなかったあたしの落ち度みたいなところもあるわけだし」
「助かるよ」
「少し時間を頂戴。夜が明けるまでにすべての情報をまとめておくわ」
◇◆◇◆
「……というわけだ。シャペール、リムニ。リリィを頼む」
俺は二人に状況を説明した。二人は同様に渋い顔をした。
「またお一人で行かれるつもりですかな、フルスト様」
シャペールが言う。
「そうですよぉ、一緒に行きますよぉ!」
「いや、中佐が到着するまでリリィを守っていてもらわなきゃならない。レザンは一度俺たちに敗れている。リリィがここにいると知れば、何か報復をしてこないとも限らない」
「でもぉ、フルスト様のことも心配ですぅ……」
「俺は大丈夫だ。リムニが教えてくれた回復魔法と、シャペールから教わった体術があるから。それに今回は一人の方がやりやすい。心配しないでくれ、無事に戻ってくるよ」
「分かりました。仕方ありませんな。フルスト様がそうおっしゃるなら。我々は全力でリリィ様をお守りいたしましょう」
「頼むよ、シャペール」
「……道案内はあたしが請け負うわ」
俺の隣にはミカが立っていた。目立たないように地味な服装に着替えている。
「ここからメル姫の城までは遠くないよな?」
「夜が明けるまでには着くわ。で、これが城の見取り図。メル姫やディシズム卿が監禁されていると予想される場所に印をつけておいたわ」
「ありがとう」
俺はミカから一枚の紙を受け取った。そこには、メル姫の居城の詳細な図が記されていた。




