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転生したらチュートリアルで殺される悪役貴族だった件 ~元ニートの俺は引きこもるために努力する~  作者: 抑止旗ベル
第三章「異世界のんびりバカンス」

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第87話 異変

「これが『コア』ですか……」


 リリィが呟く。


「ステイナー領の地下にも、これと全く同じものがあるんだ」

「そうなんですね。どうやって作られたものなのでしょう?」

「分からないんだ。それも中佐やゾップさんが調べていることなんだろうけど……」


 俺もリリィに並んで『コア』を見上げた。


 その時だった。


 不意に、俺たちの背後で足音がした。


「やはりここへ来ましたね、ミリアルドさん。そしてリリィ様」


 聞く者すべての精神を安定させるような落ち着いた声。


 聞き覚えのあるその声に振り返ると、金髪の青年――ラウルがにこやかな笑みを浮かべて立っていた。


「ラウル……やはりお前もここに!」

「まあまあ、そう殺気立つのはやめてください。ここは博物館です。歴史や文化を保管し、多くの人々と共有するための場所ですよ。そもそも僕は荒事を好みません」

「俺はお前から爆発魔法を受けた覚えがあるけど」

「あれは仕方なくやったことです。本意じゃない」


 そう言ってラウルは喉を鳴らして笑った。


「……どういうつもりなのですか、ラウルさん。あなたは中佐や私たちを裏切り、レザンに手を貸した」

「リリィ様、誤解ですよ。僕はレザンさんや反ステイナー派に協力したつもりはありません。もちろん、中佐に協力していたつもりもありませんが。ミリアルドさんには説明しましたけど、僕は僕の目的を達成するために必要な行動をとっているだけなんです」

「『コア』を使って運命を変える――そう言っていたな」

「そうです。ミリアルドさんがやったように、僕も運命を変える。僕が運命を支配する――この世界は『コア』によって支配されているんです。誰もが定められた筋書きをなぞるように生きている。いや、生かされている」


 ラウルはゆっくりと『コア』の天辺から床に接している面までを眺めた。


「どうするつもりなんだ?」

「まだ答えは出ていません。ですが、もうすぐ分かります。少し散歩しましょう」


 ラウルは気負わない様子で博物館を出た。俺たちもそれに続いた。


 外はもう薄暗くなっていて、小高い丘に位置する博物館からは、色とりどりの明かりに照らされるロザワル領の中心街の風景を眺めることが出来た。


「レザンの狙いは何だ? 反ステイナー派が勢力を失った今、お前がレザンと共にいる理由もないだろう」

「彼もまた『コア』を利用しようとしています。『コア』の持つ運命を制する力を自分の物にしようとしている」

「そんなことが可能なのか?」

「レザンさんはその方法を知っているんでしょうね。僕は知りません」

「……そもそも、どこで『コア』のことを知ったんだ?」

「このマークニル王国のことを調べたんです。どの地方にも同じような伝承が残っていました。黒い塊と接触したことで文明が生まれた――そんな伝承がね。それから、僕ら商人の間にも似たような話がある。それらを全て照らし合わせると、どうやらあの物体には運命を操る力があるらしい。そんな結論に至ったわけです。話だけ聞くと、ただの迷信みたいでしょう?」

「そうだな」

「ですが、ミリアルドさんも分かるでしょう? この世界は変だ。妙な力が働いている。僕はその力に抗っているんですよ」

「そのためにステイナー領をめちゃくちゃにしたのですか?」


 リリィの問いに、ラウルは困った顔をした。


「そう言われると辛いですね。ええ、本当に辛い。でも、仕方ないじゃないですか。人生は一度きりですよ。死んでしまえば、運命の謎も『コア』の秘密も解き明かせない。僕は僕のために命を尽くしている。その結果、一時的にステイナー領は安定を欠いて反ステイナー派が台頭した。それは事実です。でも、原因は僕だけじゃないでしょう? 厳しいことを言うようですが、あなたがもっと力を持った領主であればあそこまでの混乱にはならなかった。……ま、終わった話じゃないですか。蒸し返すのはやめましょうよ」

「ラウル……!」


 まるで他人事のように言うラウルにいら立ちを感じた瞬間、あっ、とラウルが声を上げ街の方を指さした。


「ほら、見ていてください。そろそろ始まりますよ」

「……え」


 ラウルの言葉に合わせるように、街の明かりが消えた。それもひとつふたつじゃない。いくつかの地区で分けられているのか、数十の明かりが一斉に消え、それは波紋のように次々と広がっていった。


 やがて明かりは完全に消え、一帯は暗闇に包まれた。


 リリィが不安そうに俺の上着を握る。



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