第82話 経過報告
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「――というわけだ、中佐」
夜になり、俺は中佐に電話した。
中佐には既にミカからレザンについての報告があったようで、中佐もあらかたの事情は分かっていた。
『レザンがどれほどの戦力を持っているのか分からないな。こちらから仕掛けて良いか判断がつかない』
「同意見だ。ラウルも一緒だって話なら、余計にな」
『その部分も気になっている。ラウルが同行しているということは……』
「既に反ステイナー派は半壊していて、ラウルもステイナー領をひっくり返すことに興味はないだろう。やっぱり『コア』関係か?」
『そうだな。恐らくは……』
「でも、『コア』ってステイナー領にあるあの黒いやつのことじゃないのか?」
『ゾップさんに探ってもらったが、『コア』によく似た物体はマークニル王国に点在しているらしい』
「まさか、7つ集めると願いが叶うとか言わないよな?」
『? どういう意味だ?』
「あ、いや、何でもないよ」
通じるわけの無いネタだった。
『そのうちのひとつがロザワル領にあるそうだ』
「つまり、ラウルの狙いは『コア』というわけだな」
『お察しの通りだ』
「……だとしたら、どうする?」
『居場所を掴んだ時点でレザンの件は大方決着がついている。奴が持つ戦力さえ把握できれば、それに見合うだけの兵を送り奴を確保するだけだ。私の個人的なルートを使ってディシズム卿と話をしてみる予定だ。ミカには引き続きレザンの調査を行わせる。問題はラウルだな』
「ロザワル領の『コア』か。俺はそっちを探ってみるよ」
『頼む、フルスト殿』
「ああ。そっちも進展があったら連絡してくれ」
『もちろんだ。……リリィ様は?』
「ああ、プールで遊び疲れて寝てるよ」
さっき部屋へ送ったとき、リリィはベッドに直行していた。俺がリリィの部屋を出るころには寝息が聞こえていた。あれだけ遊んだのだから、疲れるのも当たり前だ。
『そうか。リリィ様にも良い息抜きになったな。レザンの件、荒事になると決まればリリィ様はすぐステイナー領へ戻っていただく予定だ』
「いつまでも領主が不在にしているわけにもいかないからな。リリィも分かっているはずだ」
『……しかし、これでレザンの件にカタがつけばステイナー領はさらに安定した領地になる。リリィ様も心配事がひとつ減るだろう』
「これが終われば国王選挙だろ? 心配事っていうのは、減った分だけ増えるんだよな」
前の仕事がそうだったし。終わらせても終わらせても次から次へとやってくるタスク。思い出すだけで具合が悪くなりそうだ。
『――レザンの件、早急に対応する。明日には連絡できるだろう』
「仕事が早いな」
『今、ロザワル領の上層部と会談する段取りがついたと報告があった。私もそちらへ行くことになるかもしれない。そのときはフルスト殿にも同行してもらうぞ』
「分かった。ホテルを手配してもらった分の埋め合わせはするつもりだよ」
『期待している』
中佐との電話が切れた。
俺は受話器を元の位置に戻した。
ホテルのロビーは夜だというのに、魔力を動力としたランプで照らされ明るかった。ロビーから見える外の景色も、街灯や町の明かりで眩しいくらいだった。




