第78話 ボール遊び
「リリィ様、もっと自信もってくださいっ! きっとプール中の人がリリィ様に目を奪われますよっ!」
「あ、ありがとうございます、リムニさん。でも私、生まれてから人前でこんな風に肌を晒したことなんてなくって」
「あっ、そうですよねっ! えっと、あっちの方は人も少ないですし――あの辺りで水遊びしましょうっ!」
「水遊び?」
「ええ。とっても楽しいですよっ! さあ行きましょう、リリィ様!」
「は、はい!」
リムニに手を引かれ、リリィが歩き出す。
平和だなあ。
俺が再びビーチチェアに寝転がろうとしていると、リムニが立ち止った。
「あれ、どうして来ないんですかぁ、フルスト様?」
「え、だってリムニとリリィで遊びに行くんだろ」
「何言ってるんですか、フルスト様も一緒に決まってるじゃないですかぁ!」
「そうだったのか……」
でも、確かにリリィを守るという意味では俺も一緒にいた方が良いだろう。リムニを信用していないわけじゃないが、万が一のことがあっては遅い。
俺はビーチチェアから立ち上がった。
「……あれ?」
「どうした、リムニ?」
「フルスト様、首のところどうしたんですかぁ? 赤い点みたいなのが付いてますよぉ?」
「あ……えーと、虫に刺されたんだよ。昨夜、部屋にいたんだ」
「ええっ!? それは大変ですっ! お薬を持ってきますっ!」
「い、いや、大丈夫だ。別に痛みとかは無いから」
「そうですかぁ? だったら良いんですけど……あれ、リリィ様も大丈夫ですか? お顔が真っ赤ですっ! 熱中症でしょうか?」
「い、いえいえ! 私も大丈夫です! 日焼けだと思います!」
「そうなんですかぁ?」
「り、リムニ! 早く水遊びをしようじゃないか! 俺、わくわくしてきたぞ!」
「あっ、そうでした! 二人とも行きましょうっ!」
そう言ってリムニはプールの空いている場所へ駆けていく。
リリィの方を見ると、一瞬だけ目を合わせた後ですぐ恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。
……やれやれ。
◇◆◇◆
「そっち行きましたよぉ、リリィ様!」
「は、はい、えっと、こうでしょうか、リムニさん!?」
「上手です上手ですっ!」
プールの中でボール遊びをするリリィとリムニを眺めながら、俺はやはりビーチチェアに腰かけていた。
「……疲れるはずはないんだけどな」
さっきまでリムニたちと一緒にボールで遊んでいたのだが、リムニのハイテンションについていけずにリタイアしたのだった。
肉体的な疲労は自動で回復するはずだから、これは単純に気疲れというやつだろう。
そして、心地よい日差しと涼しい風に当たっているとだんだん眠たくなってきた。
昨日の夜もあまり眠れなかったし、少し昼寝してもいいだろうか。いや、領主の補佐としてはせめて、飲み物を取りに行ったシャペールが戻ってくるまではリリィたちを見ておかなければ……!




