第67話 リゾートホテル
◇◆◇◆
ビジネスクラスの航空便に乗って二時間ほどで――というわけにもいかず、荷物を抱えた俺たちはカタヨル中佐が用意してくれた馬車や陸路を活用し、数日かけてロザワル領へとやって来た。
『ブレス・オブ・ファンタジー』本編ではファストトラベル機能が実装されているから移動はそこまで苦痛ではなかったけれど、実際にこうして旅をしてみると、それなりに大変だ。
もっとマップが小さければ良かったのにと、3日目くらいの馬車の中で思ったものだ。
とにかく、ロザワル領には到着した。
途中、食料や水が不自然に減ったり荷物の中から声が聞こえたりする怪奇現象が起こったけれど、とりあえず到着した。そうした現象の原因は結局のところ分からずじまいなのが気がかりだけど。
滞在期間は二週間。この期間でレザンの居場所を突き止めるなんて、素人にはとても無理だろう。中佐はそこまで考えたうえで、レザン探しは休暇のついでだと言っていたのかもしれない。
「うわーっ! 見てくださいフルスト様っ! 海ですよぉ、海っ!」
ホテルへ向かう馬車の窓から身を乗り出し、リムニがはしゃぐ。
移動でかなり疲れているはずなのに、どこにこんな元気が残っているのだろう。
「ああ、海だな。気候もちょうどいい」
暖かい太陽の光が果てなく広がる海に反射し煌めいている。時折吹く爽やかな風が心地よい。馬車が走る道も平坦で、揺れも少なかった。
涼しい森に差し掛かり木々の間を通り抜けると、かつて俺たちが暮らしていたヒリュー領の屋敷を思わせるような豪奢なつくりのホテルが見えてきた。
「あれが我々の宿泊地ですな。ロザワル領の中でも有名な、貴族の方々御用達のホテルでございます」
「そうか……。中佐も頑張ってくれたんだな。羽を伸ばしてこいって言っていたのは嘘じゃなかったってことか」
「屋上にプールがあるらしいですよぉ! せっかくだから入りましょうよっ! 私ちゃんと水着持ってきましたっ!」
「おや、奇遇ですな。このシャペールめも同様にございます」
「そうだな。部屋に行って荷物を片付けたらまずはプールだな!」
シャペールみたいなマッスル爺の水着シーンにどの程度の需要があるかどうかはともかくとして。
馬車がホテルの前に停まる。シャペールとリムニに続いて馬車を降り、御者から荷物を受け取る。
ホテルのボーイに案内され、洗練されたデザインのロビーを通り抜け、客室へ向かった。
このホテルは、『ブレス・オブ・ファンタジー』をプレイしていたときにもゲーム中で訪れたことがある場所だけど、やっぱりゲームの画面で見るのと実際に体験するのとでは全然違うな。
案内された部屋の中は広く、高級マンションの一室みたいだった。この空間だけ微妙に現代感があるのは、恐らくグラフィックデザイン上の都合だろう。
洒落たテーブルや椅子が置かれたリビングを抜けると寝室で、巨大なベッドが用意されていた。各部屋の大きな窓からは広い海が一望できる。洗面台や風呂まで備え付けられていて、これはもはや部屋をデザインするときに使った高級ホテルのスイートルームか何かの資料をそのまま流用してるような感じだよな。若干世界観から浮いちゃってるし。ゲームしてるときは特に何も感じなかったけど。




