第63話 王都マークニル
「リリィ・ステイナーを次期国王候補として正式に承認する」
王都・マークニル。
その中心にそびえたつ宮殿の中で、リリィが正式に国王候補として認められる儀式が行われていた。
国王の側近であるシューマ大臣がリリィに証書を渡し、華やかなドレス姿のリリィは恭しくそれを受け取った。
俺は宮殿の大広間に集められた聴衆の一人としてその様子を見学し、それから惜しみない拍手を送った。
「これでリリィ様も領主としての箔が付くというもの。ステイナー領の平穏をもたらす大きな一歩となるだろう。リリィ様を支持する者が増え、反ステイナー派のような連中も大人しくなる」
俺の隣でカタヨル中佐が言った。
「そうなれば、反ステイナー派専門の中佐はお役御免だな」
俺の言葉に、中佐は珍しく愉快そうに笑った。
「私は一日も早くそうなって欲しいと願っているよ。我々軍人が活躍せずに済む世界こそ、本当に平和な世界なのだ」
「…………」
冗談を言ったつもりが、なんだかカッコいい台詞が返ってきた。
拍子抜けというか、俺がちょっとダサいというか……。
「どうして不服そうな顔をしているんだ、フルスト殿」
「いや、なんでもないさ」
俺は気持ちを誤魔化すように周囲へ視線を巡らせた。誰もがリリィに注目している。この中に、俺がミリアルドだと気づくような人間は居なさそうだ。
そもそもミリアルドってヒリュー領の中でパーティを開くばかりで、全然王都の方に顔を出したりしていなかったみたいだし。おかげでミリアルドと親しい貴族とかもいないわけで、正体もバレずに済んでいるというわけだ。
それにしてもミリアルドって、パリピなのかコミュ障なのかよく分からない人間だ。まあ、チュートリアルで殺されるようなキャラだから、そこまでキャラ設定が深く考えられていないというのが実際のところだろうとは思うけど。
「リリィ様をお迎えに上がるぞ、フルスト殿」
「お、ああ、そうだな」
気づけば儀式は終わっていて、リリィは自席に戻り周りの貴族たちと談笑していた。そのすぐ近くにはマークニル国王と王妃の姿もあった。そしてその背後には、国王の警護としてブレスが控えている。
「…………」
ブレスは一瞬だけ俺の方を見たが、すぐに視線を逸らした。俺の正体がミリアルドだとは、まだ誰にも言わずにいてくれているらしい。
「リリィ様」
中佐の声にリリィがこちらを振り向く。
「カタヨル中佐、それにフルスト様。私、立派にやれていましたか?」
「ああ、堂々としていたよ」
「そうですか。フルスト様に言っていただけると嬉しいです」
リリィは、はにかんだように微笑んだ。
「馬車の用意が出来ております。リリィ様、こちらへ」
「ええ、ありがとう、中佐」
「フルスト殿、済まないが貴公の馬車は別に用意してある。少し待っていてくれ。ロメロに案内するよう伝えてある」
「ああ、分かったよ。リリィのエスコートはよろしくな」
「安心してくれ。たとえ暗殺者から襲撃されても守って見せよう」
「ではまた後程お会いしましょう、フルスト様」
「ああ」
中佐とリリィは貴族や上流階級の役人たちの中へ消えていった。




