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転生したらチュートリアルで殺される悪役貴族だった件 ~元ニートの俺は引きこもるために努力する~  作者: 抑止旗ベル
第二章「美少女領主と仲良くなれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)」

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第61話 新たな国王候

 リビングへ行くと、テーブルの上にお茶の準備がしてあった。コーヒーとケーキが、シャペールが選んだ品の良い食器に並べられている。


「お勤めご苦労様でした、フルスト様」


 シャペールに上着を預け、俺は椅子に座った。


「俺の方こそ、金鉱脈では無理を言って済まなかった。リムニも、助かったよ。おかげで反ステイナー派の件はカタが付いたみたいだ。……そうだろ、リリィ」


 椅子に座り、リムニがコーヒーを注いでいる様子を見つめていたリリィが顔を上げる。


「はい。エールン卿が捕えられたことで反ステイナー派の資金源は断たれたと考えられます。反ステイナー派の活動規模は縮小しています。リーダーであるレザンが行方を眩ませたのだけが気がかりですが」

「どちらにせよ俺はもうお役御免だろ。これで引きこもり生活が送れるわけだ」


 リムニが俺のカップにコーヒーを注いでくれる。独特な香りが辺りに立ち込めた。


「コーヒー、お召し上がりくださいっ。今日の豆は特に良いものが手に入ったんですよぉ」

「ありがとう、いただくよ。リリィも」

「ええ、ありがとうございます」


 コーヒーを一口飲むと、ようやく家に帰ってきたという実感が湧いて来た。ヒリュー領から金鉱脈、そして王都――この数日、かなりの距離を移動したもんな。


「お味はどうですか、フルスト様っ?」

「ああ、美味いよ。さすがだな、リムニ」

「えへへ」


 照れて笑うリムニ。その隣で、リリィは緊張したような顔を浮かべていた。


「……どうしたリリィ? コーヒー、苦手だったか?」

「い、いえ。違うんです。実は――」


 リリィが何かを言いかけたとき、玄関のドアが開く音がした。


「……鍵、閉め忘れてたな」

「お気になさらず、フルスト様。私が見てまいりましょう」


 シャペールがリビングから出て、来客の様子を見に行く。いきなりドアを開けるような客だからロクでもない人間だろう――そう思っているとリビングのドアが開き、カタヨル中佐が入って来た。


「すまないフルスト殿、失礼する」

「中佐? さっき別れたばかりじゃないか」


 王都から中佐と同じ馬車で帰ってきた俺は、ちょうどこの集合住宅の前で中佐と別れたばかりだった。


「おお、リリィ様もこちらにいらっしゃったのですね。探しておりました」


 中佐は部屋の中を見渡し、リリィを見つけるとそう言った。


「中佐……」

「あのことは、フルスト殿には?」

「いえ、ちょうど今」

「ちょっと待てよ、一体どうしたんだ?」


 俺が割って入ると、中佐は改まったように俺に向き直った。


「私も今しがた耳にしたのだが――ご報告がある。フルスト殿にも伝えねばと思い引き返して来たのだ」

「報告だって?」

「我々がエールン卿を捕えたことが、王都への反乱を未然に防いだ功績として認められることになった」

「おお、それは良かったな」

「その結果―――リリィ様が次期国王の候補者として選挙に参加されることになったのだ」

「……え!? な、なんだって!? リリィ、それ、知ってたのか!?」

「は、はい……。私もここへ来る前に話を聞いたのです」

「王都に滞在していたタイミングでそのような可能性があるということは聞いたが、まさか本当にそうなるとは私も思ってはいなかった。リリィ様の努力が王都に認められたということだ。大変にめでたいことです、リリィ様」

「ええ。身に余る光栄です」

「そうか……おめでとう、リリィ。がんばれよ」


 『ブレス・オブ・ファンタジー』本編をプレイした身としては、次期国王の候補に選ばれることがどれほど凄いかよく分かっている。言うまでもなく、リリィは『ブレス・オブ・ファンタジー』本編では落ちぶれてしまっているから、次期国王選挙に名乗りを上げるなんてことは夢のまた夢だったはずだ。少しのきっかけで体制というものは変わるものだなあ。




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