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転生したらチュートリアルで殺される悪役貴族だった件 ~元ニートの俺は引きこもるために努力する~  作者: 抑止旗ベル
第二章「美少女領主と仲良くなれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)」

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第58話 幕引き

◇◆◇◆


「エールン卿、お会いできて光栄です」


 王都の郊外にあたる場所に、貴族であるエールン卿の屋敷はあった。


 俺とカタヨル中佐はステイナー家の人脈を使って、エールン卿と面会をしていた。


 中佐が頭を下げるのにあわせて俺も礼をする。


 不健康に痩せたエールン卿は、神経質そうな表情を不機嫌に歪ませた。


「私は忙しいのだ。用件は手短に頼む」

「ええ、もちろんです。資金援助の件ですが……」


 応接室には大きなテーブルがあって、エールン卿が座る席とは反対の席に、俺たち二人は腰かけた。


「……最初に言っておく。私はステイナー家のためになど微塵も資金を提供するつもりはないぞ。あの下劣なミリアルド・ヒリューくらいなものだ、お前たちに手を貸すような真似をするのは」

「……そうおっしゃる意味が分かりませんね。我々はステイナー領の正当な統治者ですが?」

「それだけ私に利点がないということだ、お前たちへの援助は。ミリアルド・ヒリューほど錯乱してない限り、資金援助などは行わん」


 いや別に俺は錯乱していたわけじゃないが……まあ、そう思われても仕方ない。あの時は確かに反ステイナー派の方が優勢で、ステイナー派は資金も尽きた絶体絶命の状態だったのだから(メチャム調べ)。


「なるほど。では本題に戻りましょう。資金援助の件です」


 何事も無かったように続ける中佐の言葉に、エールン卿の表情は更に歪んでいく。


「話が通じておらんようだな。貴様らへの資金援助など行わんと言っているが?」

「いえ、我々への援助の話ではありません。――ステイナー領内で反乱を目論む、反ステイナー派と呼ばれる組織への資金援助です」

「……な、何を? 何が言いたい?」

「ロメロ、資料を」

「ハイっス!」


 中佐の背後に控えていたロメロ君が、用意していた資料を机上に並べる。


「な――なんだ、これは!?」

「エールン卿、僭越ながら貴公の資産について調べさせてもらった。ここ数年、かなりの額が不自然な動きをしている。そしてその時期はちょうど、反ステイナー派の動きが活発化したタイミングと重なっている」

「な――い、言いがかりだ。そもそも私の資産に不正などない!」

「どうかな? 仮に不正がなかったとしても、貴公がステイナー領の統治組織を転覆させようと目論んだことに変わりはない。こちらには貴公と反ステイナー派のレザンの間で交わされた書簡の写しも入手している」

「そんなものは、いくらでも偽造が……!」

「他にも証拠は残っているぞ。反ステイナー派の計画立案に関する書面、レザンとの間で交わされた金鉱脈に関する密約、貴族でしか知りえないステイナー領内の情報を反ステイナー派に流出させた文書―――そして金鉱脈から得られた資金を利用し、次期国王選挙を操作しようとする計画書さえもな」

「うっ……」


 エールン卿の顔が青ざめる。


 これらの証拠はすべてミカが反ステイナー派と接触し集めたものだった。


 カタヨル中佐が俺に目くばせをする。


 俺は頷き、口を開いた。


「先日、ステイナー領内の金鉱脈で王国騎士団の団員と接触した。彼らを派遣したのもあなたですね? 自分が手にするはずの金鉱脈――その内部を調査するために」

「あ、あれは……金鉱脈に謎の空間があるというから、安全面での調査を行わせたのだ。ステイナー領のために……」

「いいえ、あなたは金鉱脈を担保に資金の融資を受けるつもりだったんだ。反ステイナー派に対する出費の穴埋めをするために。そのために、金鉱脈の資産価値に関して調査が必要だった。あなたが王都銀行と交わした、金鉱脈に関する利権の密約文書も手に入っている」

「……な、何から何まで! クソッ!」


 エールン卿は吐き捨てるようにそう言って立ち上がると、窓に向かって走り出した。逃げ出す気だ。


 それを分かっていたように中佐が合図をして、応接室にステイナー領と王都の兵士たちが入って来た。


「エールン卿。国家反逆罪およびその他の罪状で身柄を確保する。ご同行願いたい」


 中佐の言葉に噛みつくように、エールン卿は怒鳴り散らした。


「き、貴様っ! たかが辺境の領地の将校に過ぎぬくせに! 何の権限が合ってこの私を拘束するつもりだ!?」

「既に王都軍にも同様の内容は伝えてある。貴公が無実なら王都裁判所で潔白を証明すればいい」

「ふ、ふざけるなっ! は、放せ! 私は貴族だぞ!?」


 王都の兵士たちに包囲されながら、エールン卿が部屋の外へと連れ出される。


 それに合わせて部屋の中の兵士たちも室外へ出て行って、応接室には俺と中佐だけが残された。



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