第57話 運命の支配
「だとしても……『運命』なんて簡単に変えられるものじゃないだろ」
「だから『コア』なんですよ」
「どういう意味だ?」
「この世界のシナリオ、筋書き、『運命』――それが決められているのなら、それを強制しているものがあるはずでしょう? それこそが『コア』だ。僕らの『運命』を決めているのが、この巨大な長方形なんですよ」
再びラウルが漆黒の立体物を――『コア』を見上げる。
「だとしたらどうするつもりなんだ……それを」
俺の言葉に、ラウルは微笑みを返した。
「今はまだ何もしませんよ」
「え……?」
「こいつが世界の『運命』を握っている。だからって破壊してしまえば良いとも思えないし、もしかしたら利用価値があるかもしれない。それに、この金鉱脈以外の場所にも『コア』があるかもしれない。偉そうなことばかり言ってしまいましたが、僕自身、まだこの物体のことはよく分かっていないんです」
「だったらなぜ、俺たちをここへおびき寄せるような真似を?」
「おっと、それは言いがかりですよ。僕は何もあなたたちをここへ招待したわけじゃない。勝手に来たんじゃないですか」
ラウルが肩を竦める。
「何が――目的なんだ」
「さっきから言っている通り、世界の『運命』を変えることです。僕もあなたと同じですよ。こんな訳の分からない物体に自分の生き方を支配されるなんて嫌なんです。協力しませんか、ミリアルドさん。僕と一緒にこの世界の謎を解き明かしましょう」
「信頼できるわけないだろ。お前は一度俺たちを裏切ってるんだから」
「ま、そうですよね。でも、良いんです。対抗相手がいないと面白くありませんからね」
ラウルは『コア』から離れ、歩き出した。そのまま俺たちの横を通り抜け、坑道を引き返していく。
「どこへ行くんだ、ラウル!」
立ち止り、両手をズボンのポケットに突っ込んだまま、ラウルはこちらを振り返った。
「帰ります。『コア』の存在は確認できた。これ以上のことは、今は出来ない。――ああそうだ、次のヒントを上げますよ。王国騎士団のブレスたちをここへ派遣した貴族を追ってみてください。反ステイナー派のスポンサーに近づけるかもしれませんよ」
「何……?」
「ステイナー領での目的は達しましたから。平和な方が良いでしょ、世の中。おっと、その代わりにここは見逃してくださいよ。あなたたちと一戦交える気はないんだから」
「ラウル……!」
「では、そういうことで」
ラウルは片手を振って、坑道の明かりの中へ消えて行った。
「フルスト様、いかがなさいますか」
シャペールが訊く。俺は首を横に振った。
「ラウルの情報を確かめる方が先だ。中佐たちと合流して、ブレスを派遣した貴族の正体を探ろう」
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