第46話 反撃
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行政庁の執政官室。
広い机の上に丁寧に分類分けされ整頓された書類を見ると、メチャムの丁寧さが伝わってくる。
本来ならば人の出入りが多いのだろうこの部屋も、今日は静かだった。
「……本当に来るんでしょうかぁ、反ステイナー派のみなさん」
「来るさ。ミカが情報の裏を取ってくれている。今日メチャム拉致が決行されるのは間違いないよ」
いつもならメチャムが座っている席に座っているのは顔色の悪い黒髪の男――すなわち俺だった。その背後にはリムニが立っている。
俺もリムニも口を閉じて、再び室内に静寂が訪れたとき、不意にドアの外が騒がしくなった。
複数人の足音が近づいてきて、勢いよくドアが開く。
「執政官メチャム! 我々とご同行願おうか!」
そんな言葉とともに統一感のない鎧で武装した男たちが執政官室へなだれ込んできた。
俺は木刀を片手に立ち上がる。俺が鍛錬の時に使っていた木刀だ。
「……残念だったな。ここにメチャムは居ないよ」
「な――何!?」
先頭に立っていた男が驚愕の表情を浮かべる。
「筒抜けだったんだよ、あんたたちの計画は。メチャムは今頃安全な場所に避難している」
メチャムの護衛には、中佐の部下であるロメロとヒリュー領の数人の兵士がついている。限りなく安全と言えるだろう。
「どこにいるんだ、メチャムは!?」
「教えるわけないだろ」
「ならば力ずくでも吐いてもらおう!」
男たちが剣や斧を振りかざし俺へと襲い掛かる。
「リムニ、下がってろ」
「はい、フルスト様っ」
反ステイナー派の中には軍人崩れのような男もいたが、シャペール程の使い手はいなかった。俺は男たちの攻撃の合間を縫って、彼らの空いたボディに木刀を叩きこんだ。
急所を突かれた男たちは次々と倒れていき、執政官室には無法者たちの屍の山が出来た。
「……呆気ないものだな。この程度でヒリュー領を襲うなんて甘く見られたもんだ。さて、次はどうする?」
残った反ステイナー派へ向けて木刀を構えると、リーダー格らしき男の一人は顔に脂汗を浮かべながら叫んだ。
「て、撤退だ! 撤退しろ!」
「そう簡単に行くと思うのか?」
「!?」
男たちの背後から現れたのはカタヨル中佐と、ステイナー派の兵士たちだった。
複数の兵士が反ステイナー派を取り囲んでいく。
「他の領地へ攻め入るなどふざけた真似を。これ以上貴様らの狼藉を見逃すわけにはいかん。全員捕え、反ステイナー派の情報を搾り取ってやろう」
「くっ……!」
大勢は決した。
反ステイナー派はこのまま捕らえられ、メチャムは守られる。
めでたしめでたしというわけだ。
問題は――反ステイナー派の中核であるレザン、そしてラウルの姿がないということだ。
彼らを捕らえない限り、反ステイナー派にとどめを刺したとは言えないだろう。




