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転生したらチュートリアルで殺される悪役貴族だった件 ~元ニートの俺は引きこもるために努力する~  作者: 抑止旗ベル
第二章「美少女領主と仲良くなれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)」

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第41話 信頼の価値は

「フルスト様、皆さんの怪我はもう治りましたよぉ」


 リムニの両手から放たれていた回復魔法の光が消えていく。同時に、倒れていた黒服の体からも傷跡が消えて行った。


「ありがとう、リムニ。俺たちも脱出しよう。シャペール、中佐との合流地点に案内してくれ」

「御意。こちらへ、フルスト様」


 シャペールが動き出す。ちょうどそのとき、レザンらしき男が大勢の護衛に囲まれ裏口に姿を現した。


「リムニ、行くぞ」

「はい!」

「……ま、待ってくれ!」


 先ほどまで俺たちと話していた黒服だ。彼は集会所の薄汚れた壁を支えにして立ち上がった。


「なんだ?」

「そっちの通りは人目に付きやすい。逃げるなら北の通りがいい。反ステイナー派の見張りも手薄だ」

「……信じて良いのか?」

「命の恩人を裏切るようなことはしない」

「……分かった。シャペール、リムニ、北側を通ろう」

「承知いたしました、フルスト様」


 黒服は力が抜けたように再び地面へ座り込んだ。


 俺たちはその脇を通り抜け、北の通りへと脱出した。


 途中で追手が現れることもなく、俺たちはカタヨル中佐との合流ポイントに到着したのだった。



◇◆◇◆



「ラウル君が裏切者だったとは……」


 カタヨル中佐が歯を食いしばる音が部屋中に聞こえた。


 ステイナー領郊外から更に領地の境界線寄りのとある農村で合流した俺たちは、そのままいつも会合で使っているホテルまで移動してきた。


「あの男を心の底から信用してたわけじゃないけど、まさか裏切るとは思わなかったわね」


 窓際のソファに座ったミカがうんざりしたような表情で言う。


「おかげでひどい目にあったわ。反ステイナー派の連中に追い回される経験はこれで最後にしたいわね。もう他に裏切者は居ないのよね、中佐」

「当たり前だ。ここにいる全員、身元ははっきりしている。ミカ、お前もな」

「……調査済みってわけね。でも、フルストやそのお友達は? あの人たちの素性は何も聞かされていないわよ、私たち」

「フルスト殿たちについてはリリィ様から保証されている。それで十分だろう」

「どうかしら。ラウルのことも調べていたんでしょう? その結果としてあなたたちはラウルをシロだと判断した。だから味方として扱っていた。いくらリリィ・ステイナーや中佐が信用した人物だからといってそれを鵜呑みにするわけにはいかないわ」


 ミカが睨むように俺を見る。


 確かに俺の身元が怪しいのは認める。実際のところフルスト・ロウの戸籍は偽造したものだし、リムニやシャペールも同じだ。


 しかし――だからと言って俺がミリアルド・ヒリューだと明らかにするわけにもいかない。


「ミカ、俺が信用できないのは分かる。だけど、俺は俺で反ステイナー派からヒリュー領を守りたいと思っている。そのためにあんたたちに協力しているんだ。……反ステイナー派のメチャム拉致計画は一週間後に予定されている。奴らは直接ヒリュー領に乗り込むつもりだ」

「フルスト殿、その情報をどこで?」


 中佐が顔を上げる。


「……ラウルが言っていた」


 俺の言葉に、ミカは鼻を鳴らして笑った。


「そんなの信じられるわけないじゃない。絶対に罠よ。今日やったみたいにあたしたちをヒリュー領におびき寄せて一網打尽にするつもりだわ」

「もしあんたたちが行かないなら、俺一人でも行くつもりだ」

「フルスト殿……しかし、それは危険だ」

「危険でも行くしかない。ヒリュー領をステイナー派と反ステイナー派の戦いに巻き込ませるわけにはいかないんだ」

「フルスト、あんた……」


 ミカは何かを言いかけてやめた。それに被せるように、落ち着いた声音が部屋に響いた。


「私はフルストさんの意見に賛成ですね」


 部屋にいた全員が一斉に声のした方を見た。


 ゾップさんだった。



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