第39話 裏切り
「な、何バカなことを。ミリアルドは死んだよ。新聞にも書いてあったし、さっきレザンが演説でも言ってたじゃないか」
「フルスト・ロウという人物の戸籍はミリアルドが死ぬ直前に作られたものですね?」
「……!?」
「リムニという人物も、シャペールという人物も同様だ。フルストさん、僕の仮説はこうです。ミリアルドは自分が死ぬという運命を知った。そして世界そのものを騙し――生き残った。フルスト・ロウとしてね」
ラウルは立ち上がると、平然とした様子で黒服たちへ近づいていく。
「……ラウル殿!」
ラウルに気が付いた黒服たちは、一斉に敬礼をした。
「畏まる必要はないよ。それより君たち、そこにステイナー派の人間がいる」
そう言ってラウルは俺を指さした。
黒服と目が合う。
「な――ラウル!?」
「もしかするとこれも運命なのかな。僕が裏切者だということも、運命によって定められている……」
「お前、やっぱり!」
俺に気づいた黒服たちが駆け寄ってくる。
黒服に包囲されながら、俺はラウルを見た。ラウルも立ち止り俺と対峙した。
「そしてミリアルドさん。君はこの世界がどんな『運命』にあるのかを知っているんじゃないですか?」
「『運命』……!」
「メチャムさんの拉致は一週間後、ヒリュー領の行政庁へ直接潜入する方法で行われます。また会いましょう。あなたもいずれ、この世界の仕組みが分かりますよ。反ステイナー派と金鉱脈を追っていればね」
集会所の方が不意に騒がしくなる。怒号が聞こえる。
「そろそろミカさんの方もバレたかな」
「どういうことだ、ラウル!?」
「あなたたちステイナー派がこの集会に来ることは、事前にレザンさんに伝えておいたんですよ。あなた個人に興味はあるけれど、中佐たちステイナー派は目障りだったので、そろそろ潰れてもらえると良いなと思って」
「本当に――裏切るのか?」
「僕が知りたいのはこの世界の『運命』、そして『コア』ですよ。ステイナー派も反ステイナー派も関係ない。裏切るという言葉自体、正確ではないんです。どちらに属したつもりもありませんから」
黒服たちが一斉に俺へ襲い掛かった。
多分、レザンと同様に元軍属なのだろう。手慣れた動きだ――が。俺にとって、その動きは亀のように鈍く見えた。
敵の攻撃を受け流し、一撃ずつ急所に打撃を与える。決着は一瞬で着いた。気づけば俺の周囲には、気を失った黒服たちが倒れていた。
「おっとこれは予想外だ。ミリアルドさん、強かったんですね」
「どういうことか説明してもらうぞ、ラウル!」
地面を蹴りラウルへ接近する――が、それを予測していたように、ラウルは右手を俺に向けた。
「直接対決はまだ早いですよ」
次の瞬間、俺の体ごと周囲が爆発した。
倒れていた黒服たちの体が宙を舞い、激しい痛みが身体を貫いていく。
「ラウル――ッ!」
「また会いましょう、ミリアルドさん!」
集会所の壁が一部、爆発の衝撃で崩落する。それを陰にしながらラウルは走り去っていった。




