第35話 膝枕オプションサービス
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「た、ただいま……」
リムニたちが待つ部屋に帰ってきた俺は疲労困憊だった。
なんか、会議とか久しぶりにやった気がする。
知らない人たちに会うのも疲れるし、妙な仕事も任されちゃったし。
ヒリュー領を守るためとはいえ、疲れるものは疲れる。
「お帰りなさいませ、フルスト様ぁ……フルスト様、どうされたんですかぁ!? 顔が青白いを超えて緑色になってますよ!?」
「ナメック星人か、俺は……」
「はい? なめっくぅ……?」
「いや何でもない、こっちの話」
「でも本当に顔色悪いですよぉ? 鏡見てくださいっ!」
確かに疲れ果ててはいるけれど顔色が緑はさすがに嘘だろと思いつつリビング脇の姿見を覗くと、まるで生ける屍のような表情をした男が映った。
パサパサの黒髪と濃すぎる目の隈。そして充血した白目。
「うわあ、化け物だ……!」
「大丈夫ですかフルスト様ぁ? 今日のお夕食は牛肉のソテーと、フルスト様が好きなカボチャのポタージュですよ。もう少しでできますからっ!」
「ああ、ありがとう……。それまで休んでおくとするよ」
俺はそのまま自室に戻ろうとした。
疲れ切った自分の姿を見たせいで余計に疲れたような気がした。
この感じ、社畜だった頃を思い出すなあ。二度と社会人にはならないつもりだったのに。働かざるもの食うべからずという言葉があるように、人間は働かなければ生きていけないように出来ているのだろうか。俺が今いるのはゲームの中の世界だろうに、なんて世知辛い。
「お休みになるんですかぁ? それなら、私が癒して差し上げますぉ?」
「……え?」
「ほら、こっちに来てください」
見るとソファのところにリムニが座っていて、自分の膝の辺りをぽんぽんと叩いていた。まるで俺を誘っているかのように――!
「い、一体どういうつもりなんだ、リムニ」
「疲れたときはこれですよぉ、膝枕」
「何ィ!?」
俺は思わず周囲を確認した。当たり前だが誰にも見られていなかった。
「さあどうぞ、フルスト様っ」
「い、良いのか?」
「当たり前じゃないですかぁ。私はフルスト様専属のメイドなんですからぁ」
確か――膝枕甘やかしプレイの相場は大体5000~7000円(俺調べ)。いや別に追加料金を払う必要はないだろうし何よりリムニ本人が良いと言ってるんだから遠慮する必要もないんだろうけど、咄嗟に具体的な金額が俺の脳裏を過った。元サラリーマンの悲しい習性だ。
シャペールが帰ってくるような気配はない。俺を止めるものは何もない。むしろ疲れに後押しされているような感覚さえあった。
というわけで。
俺は欲求に流されるままリムニの太ももに頭を載せ、ソファに寝転がったのだった。
「……!?」
「どうしたんですかぁ、フルスト様?」
や――柔らかい!
リムニの太もも、超柔らかい! スカートの生地越しに太ももの感触がダイレクトに伝わってくる。
ユートピアは新宿や池袋じゃなくてここにあったんだ!
感動で言葉を失っていると、リムニは心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
―――そう、覗き込まなければ顔が見えない。なぜならリムニのツインインパクトが俺の顔を完全に隠してしまっているからだ。
視界が覆われているのに絶景だなんて、言葉にしてみると訳が分からないが実際のところそうなのだからそうだとしか言いようがない。




