第34話 会合
「では諸君、席についてくれ。彼――フルスト・ロウ殿は、反ステイナー派が狙っているヒリュー領に詳しい人物だ。リリィ様からは、ヒリュー領に関することは彼の指揮で動くように言われている。……というところで、だ。反ステイナー派はヒリュー領の重要人物であるメチャム氏を拉致しようとしている。彼のことは知っているという話だったな、フルスト殿」
「ああ。ヒリュー領は行政庁という組織が政治の中心だが、その行政庁を取り仕切っているのがメチャムだ。彼はミリアルド・ヒリューが生きていた頃から政治の中心人物として活躍していた」
「ロメロ、資料を」
「はいっス」
中佐の号令でロメロが立ち上がり、手元に持っていた紙を配る。そこにはメチャムの写真と簡単なプロフィールが書かれていた。
「フルスト殿。我々はメチャム氏の拉致計画を逆手に取れないかと考えている」
「逆手に?」
「反ステイナー派はメチャム氏を狙って行動を起こす。それを利用し、敵の中枢を突き止める」
「メチャムを餌に反ステイナー派の本体をおびき出すということか」
「もちろんメチャム氏を拉致から守るという前提の元で、だ」
「そんなことが出来るのか?」
「詳しい話はラウル君に任せたい。頼めるか?」
ラウルが自信ありげに笑う。
「もちろんです。反ステイナー派はメチャム氏拉致計画のために動きを活発化させています。彼らは近日中に大規模な集会を行うという情報も、商人たちの情報網から得ています」
「あたしの方で裏は取っておいたわ。確かな情報よ。詳しい日付と場所も分かってる」
ミカはラウルの発言を補足するように言った。
「――というわけです。後はその会合に潜入し、より具体的な情報を掴むことが出来れば奴らの正体に近づくことができるでしょう」
「以上が現在、我々が考えている計画だ。意見を聞きたい、フルスト殿」
意見と言われても、俺は諜報作戦のプロでも何でもない。しかし、反ステイナー派の会合とやらに潜入するつもりなのは分かった。ヒリュー領を守るにはそれが有効な手だということも。
「敵地に潜入し情報を得たいという考えは分かった。肝心なのは誰が潜入するかだと思うが、そこは決まっているのか?」
「あたしが行くわ。こういうのは慣れてるし。あとはサポートに二人くらい欲しいかな。顔が割れてない人間が良いんだけど」
「僕が行きましょう。変装すれば問題ないはずです。もう一人は――フルストさんならどうでしょうか」
え、俺!?
素人だけど大丈夫!?
敵地に潜入ってかなり重大なミッションだと思うけど!?
「確かに、素性が知られていないという意味ではフルスト殿が適任だな。私などは軍人が身についてしまってどうもイカンのだ」
「何かあっても僕とミカさんが居ますから大丈夫です。どうですか、フルストさん」
「……分かった。俺も同行しよう」
断り切れないんだよな、俺。こういうとき。
前の職場でも断り切れずに仕事がどんどん増えていったのを思い出した。
辛く悲しい思い出だ。まさか異世界に転生しても同じようなことが起こるなんて。やれやれ。
「話は決まったな。では、ラウル君、ミカ、そしてフルスト殿。よろしく頼む。残りのメンバーはバックアップだ」
「計画の詳細は僕の方で考えておきます。次回の会合でお伝えしますよ」
「では近況の報告に移ろうか。今、私の方で追っている案件だが――」
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